業界各社 2022年度 年間決算発表状況(6)大判機3社

ちょっとアップロードが遅くなりましたが、ワイドフォーマット機有力3社の決算状況を見ておきます。今回は出張中で移動が多い関係で、まずミマキエンジニアリングをアップします。

ミマキエンジニアリング

売上高も営業利益も、年間見通しを達成するために必要なQ4の数字を超過達成しています。

その結果、対前年で売上高 18.6%増で一気に 700億円超え、営業利益は 65.1%増の増で 40億円超えの好決算となっています。

2023年度の見通しは 売上高 10.5%の伸びに対し、営業利益は 3.7%とちょっと控え目ですが、堅めに予想して期を追うごとに上方修正(右上のグラフ:2022年度が正しくそれ)をしていくと期待します。あまりやり過ぎるとあざといですよ(笑)

なお、同社は3Q時点で、一部の部品などが第三国を通じた迂回輸出で、対ロシア経済制裁に抵触する可能性があると監査で指摘され、その後の調査結果も公表してきました。

私も「日本製複写機に対する欧州メーカーによるアンチダンピング訴訟」を経験しましたが、欧州というのは規則を作る際に、最初は結構アバウトに作り、その後リクエストがあれば手直ししていくという基本があります。ダンピング訴訟の結果「部品の現地調達率を 40%以上にすること」という各社が個別にアンダーテイキング(示談)したのですが、この 40%が定義も何も無かったのです。

真面目な日本メーカーは「40%とは分子が何で分母は何か?」「制御基板のように ICチップ、コンデンサー、抵抗、メモリなど多数の部品の複合体はどういうことになるのか?」「組立工賃はどういう扱いか?」・・・等と定義を明確にしてほしいと次々と質問を繰り出し、その結果非常に面倒な(日本にとって不利な)定義が出来てしまいました。まあ、訊いたらそうなりますよね(笑)

今回の対ロシア制裁も、欧州企業は(本来の意味での)適当なやり方をしています。その結果として迂回輸出などはザル状態で、ではもうちょっとザルの目を細かくするか・・・みたいな動きが各国政府などから後追いで出てきてはいます。ミマキの場合は本社指示で組織的にやっていたなどとはとても考えられず、むしろ内部監査でそういう可能性が見つかった段階で、真面目に見直したもので極めて日本企業的な動きと見えます。ウチは些細な部品の一点に至るまで迂回ルートも含めて一切ロシアには流入させていない!と豪語される企業があったらご連絡ください(笑)

それでも、姿勢を示すため、池田社長の報酬の一部を自主返納を発表するなど真面目な対応をしているのは評価に値すると思います。

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実はミマキの第3四半期の決算発表は1か月延期されました。事情はこちらに公表されています。まあ、ザックリと申せば「在オランダのミマキヨーロッパから、ロシアの代理店向けのプリンター輸出は停止したが、ウズベキスタンとカザフスタンの代理店からロシアに流れていた。この辺の事情を精査する為の時間として決算発表を1か月延期する」という理解です。公表延期の当局への手続きはちゃんとなされているようです。

大変デリケートな問題なので、この時点では予断を持って語るべきではない案件と思います。ポイントは「制裁対象品という認識の有無」「ウズベキスタン・カザフスタンがロシアとズブズブの関係という認識の有無」「そんな小国からの発注量が『妙な増え方』をしているという認識の有無」「それに対してどういうアクションをとっていたか」あたりでしょう。監査で指摘されるまで気が付かなかったというなら、あまりスマートな話ではないように思います。

しかし・・・このあたりになってくると、業界他社はパーフェクトなんでしょうかね?少なくともロシアへの国連総会制裁決議などに棄権したり反対票を投じた国への出荷量が増えていないかどうかくらいはチェックしておくべきだと思いますね。またミマキのプリンターが制裁対象なら、人道的見地からという理由で、ウクライナの病院を無差別に攻撃しているロシアとビジネスを続けている医用機器なんてどうなんですかね?

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第1四半期のコメントの最後に「え?サラッと書いてありますが・・・下期の見通しは基本のまま据え置いている?為替も 110円/$、130円/€のままで据え置いている?勿論、戦争はまだ終わらず、冬になると欧州のエネルギー事情も逼迫し、物価上昇も・・・不透明極まりない状況なのでこのくらい手堅く見ておくのは正解でしょう・・・でも、結果としてはまた為替影響分や経営努力分を吐き出して上方修正すると見ました!」・・・と書きました。随分手堅い見通しですね~・・・と。さて、どうなったのでしょうか?

売上高は四半期の記録更新です。営業利益も順調に出ています。ただ、昨年(グレー)の売上高・営業利益と比べれば、目分量ですが営業利益率は低下しているように見えます。昨年と比べるとかなりの円安レートなのに営業利益率が低下している・・・何故?このあたりは詳しく掘り下げないとなんとも言えません。後日、時間を見つけて掘り下げましょう。

ほらね、予想通り、売上高も営業利益も年間見通しを上方修正しています(笑)そういえば、セイコーエプソンもこのパターンでしたね・・・「小さくコミット、大きく達成」(笑)長野県の気風なのか?(笑)・・・でも、余裕があればこそ出来る話です。前向きな経費や投資まで抑えて、とにかく利益を絞り出せ!・・・というような状況では、こういうことは出来ません。結構なことだと思います。多分、昨日発表した富士フイルムもそうなんだろうなあ・・・まだ見ていませんが、賭けてもいいです(笑)・・・あ、長野県だけではないということですね(笑)まあ、これだけ円安なんだから、本来は日本全国で同じようなものでしょう・・・

例によって{年間見通しー(Q1+Q2実績)}=下半期に必要な数値・・・という単純な数式で、同社が下期の売上高・営業利益をどう読んでいるかというのを求めグラフ化しておきます。売上高はまあ妥当に伸ばしているように見えます。

が・・・営業利益は上期を下回ると言っています!え、なんで?グラフなので細かい数字は出ていませんが、元データで見ると、上期の営業利益率 5.6%が下期には 4.1%に下がる・・・って言ってるんですよ、このグラフ・・・池田社長、ホンマでっか?(笑)

見通しの前提を見てみると「下期の為替前提は USD:135円 / EUR:135円・・・」とあります。ほらね、ここでもう 10円分違うでしょ?まあ、でも私はこれはいいと思うんです。今、恰好をつけて下期はすごい利益がでますよと言わざるを得ないような苦しい局面ではないわけだし、為替はそもそも水モノだし・・・このくらい手堅く計算しておいて、結果として上方修正する方が、その逆よりは余程いいですし、余裕があっての話です。

その下の項目に「地政学的なリスクへの対応に万全を期す」・・・これは何を言っているんだろう?まさか台湾有事?いやいや、それが真面目に織り込んだらこんなもんじゃないでしょうし、ミマキだけの問題でもないでしょう。よくある政府発表とか NHKニュースみたいに「日米韓の緊密な連携を確認した」・・・みたいな、毎度毎度結局ナニを言ってるのかよくわからん表現がありますが。ここでいう「地政学的リスク」ってナニを想定しているのか?もうちょっと具体的だといいですねえ・・・

いずれにしても、次回はまた上方修正すると見ました、池田社長、賭けてもいいです(笑)

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↓↓ 今年度も好調な滑り出しのようです。売上高はコロナ前の 2019年度はもちろん、これまでの記録である前四半期(2021年度 Q4)もクリアして過去最高の数字を挙げています。営業利益もしっかり出しています。

同社の決算説明資料には下記のような説明があります。

↑↑ そうなんですよ!為替前提と実態がポジティブな方向にズレたなら、上振れ分をこういう素直な説明をしてくれるとスッキリしますね~!対前年増収分の 1,883百万円の内 1,081百万円は為替影響(残りは事業実態としての伸び)、営業利益増益分 80百万円の内、為替影響は 264百万円・・・ということは為替影響分を財源に前向きな販管費を投入したと考えられます。
↓↓ ミマキの今年度の為替前提はコニカミノルタとほぼ同じで、業界内では最も円高で設定していた(予算策定時としては極めて妥当なレート)ので、そこからズレるとこういう「素直な上振れ」が期待できるわけですね。

【2022年度の業績見通し】

同じくミマキの決算説明資料に下記の説明があります

え?サラッと書いてありますが・・・下期の見通しは基本のまま据え置いている?為替も 110円/$、130円/€のままで据え置いている?勿論、戦争はまだ終わらず、冬になると欧州のエネルギー事情も逼迫し、物価上昇も・・・不透明極まりない状況なのでこのくらい手堅く見ておくのは正解でしょう・・・でも、結果としてはまた為替影響分や経営努力分を吐き出しで上方修正すると見ました!

ローランドDG

ローランドDGの場合は暦年決算なので、今回が年間本決算となります。グラフを見る限り特段コメントすべきことは無いように見えます・・・が、第3四半期のコメントをクリックしてお読みください。例の「単純引き算」でこの最終第4四半期に必要な営業利益を求めた時、どう見ても無理があるように見えたので「ホントに出来るんでしょうか?まあ、2月初の年間決算を待ちましょう」・・・とコメントし、果せるかな未達となりました。ちょっと管理レベルには疑問符を付けざるを得ませんね。

売上高の年間実績は第3四半期時点の見通しにホンの少し未達だったように思います。営業利益は第3四半期で下方修正したものに届かなかったようです。最初にチェックしたキヤノンもそういう傾向がありましたが、昨年の 10~12月というのは、これだけ見通しを外すほどの減益要因があったということなのでしょうか?

来年度の見通しは、売上高・営業利益とも約 15%の伸びを見込んでいます。

✙✙ 第3四半期時点のコメントはこちらをクリック下さい

同社は暦年決算なので、今回は 第3四半期決算発表となります。もう、この段階に来れば、発表の段階で残りは2か月足らず・・・3ヵ月リードタイムとしても今年度分の確定オーダーは受領済みで、生産計画・出荷計画も固まっているハズなので、見通しなどでに誤魔化しは利かなくなります。(他の大方の4月~3月決算の日本企業も、今日(12月9日)段階で、向こう3月末までの確定オーダーやクリティカルなパーツの在庫は確定しているので、今年度に関してはもうジタバタする余地は実質的に無いのです・・・このあたり、おわかりでしょうか?

売上高は前年同期をクリアして一見順調に見えます。が、営業利益は第3四半期も前年同期を下回り、ここまでの累計では前年に届いていません。増収減益という形です。

年間の見通しは(上述のように)ここまでくるとかなり正確に見通せているハズで、売上高・営業利益とも下方修正しました。第2四半期ではその両方とも上方修正したというのに、たった3ヵ月で下方修正・・・ちょっと、いかがなものでしょうか?同社は年間の為替前提を「113円/ドル・128円/ユーロ」としていたのでかなりの恩恵はあってしかるべきとは思うのですが・・・決算説明資料では数量要因(思ったほど売れなかった)との説明があります。

では、例によって「年間見通し-Q3までの累計実績=Q4に必要な数字」という単純な算式で、Q4に必要な売上高・営業利益を求めてみましょう。上のグラフです。年間見通し(目標)を下げたのだから、Q4は確実に達成できるような数字となっているハズ・・・と考えるのが普通ですが・・・

売上高は、またまた四半期の記録的な数字、営業利益も同じく四半期としては記録的な元気な数字となっています・・・というか、これを達成しないと、下方修正までした売上高・営業利益に届かないということです・・・ホントに出来るんでしょうか?まあ、2月初の年間決算を待ちましょう。

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同社は暦年決算なので、今回は 第2四半期(上期)決算発表となります。

↓↓ 第1四半期(1~3月)は売上高・営業利益とも対前年・対コロナ前をクリアしていましたが、第2四半期だけで見れば調整局面なのか対前年で観れば増収減益となっています。上半期としての売上高は過去最高とのことです。

同社の決算説明資料には下記のような説明があります。為替影響が少なすぎるようにも見えますが、急激な円安が進んだのはロシアによるウクライナ侵攻が始まって暫くしてからのことなので、暦年決算では反映される分が薄まるということでしょうか・・・

【2022年度の業績見通し】

年間見通しは今回、売上高・営業利益とも上方修正しています。


武藤工業(武藤ホールディングス)

まあ、下のグラフを見れば、私がどういうコメントを書くかはもうバレバレかもしれませんね(笑)特段の無理は感じません。また、同社は営業利益ではないですが、経常利益・当期純利益のレベルで微妙に上方修正を発表しています。

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売上高は前年をクリアし、コロナ前の水準まで戻り、営業利益も前年をクリアして黒字基調が安定しているように見えます。まあ、あまりドラマチックなグラフではありませんが、まずは同慶の至りです。

年間見通しは売上高・営業利益ともに上方修正しています。営業利益は上期(Q1+Q2)で年間分を達成してしまったので、期初の見通しの倍に上方修正しています。まあ、期初の見通しが低過ぎたとも考えられるので、こういうのがいいのか、そうでないのかは別の話ですけどね。

同社の場合はまだQ2決算(上期決算)なので「年間見通しー上期実績=下期に必要な数字」ということで売上高と営業利益をグラフ化しました。上で書いたローランドDGとは逆に、下期の数字を無理しているフシはありません。売上高に過度の期待をしている様子もなく、営業利益については上期の6割程度でいいという数字に見えます。まあ、締めてみれば十分達成可能のように見えます。

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武藤工業もコロナ前をクリアしたという点ではまずまずの滑り出しというところでしょうか。

通年見通しは据え置いています。

 


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