JIAM:国際アパレル機器&繊維産業見本市:インクジェット

「JIAM:国際アパレル機器&繊維産業見本市 2022.11.30 – 12.3 インテックス大阪」からの続きです

展示会が川中(裁断・縫製加工)をターゲットしていることから、染色機などの展示は無く、インクジェット機の出展も限定的です。というか、今回に関してはエプソンの独り勝ち状態!エプソンの存在感は圧倒的でした・・・なんせ、他が実質的に居ない(笑)

↓↓ レーヨン生地に顔料でプリントしてウールの風合いを出しています。

ミマキはいつもの赤い目立つロゴではなく、青色の抑えたブース。私が覗いたタイミングでは来訪者は無くちょっと残念な状況。まあ、川中の展示会なので、これは特にがっかりする状況ではないと思われ、エプソンが上出来だったということでしょう。

メーカーではありませんが、イメージマジックとパイオテックがブースを出していました。

今回、私にとって最大の収穫があったのは京都の上野山機工のブースです。日本のスクリーン捺染機は東伸工業が有名ですが、上野山機工は捺染機そのものではなく、その周辺機器を開発・生産するメーカーです。庶民感覚でいえば両社とも「鉄工所」というイメージの会社で、こういう会社が産業を支えているという点に、大企業メーカーの開発者達は敬意を払うことが必要と思います。

上野山英二さんは、そういう鉄工所企業にあってずっとデジタル機器に取り組んできた方で、あの KORNIT DIGITALの最初の代理店となり、社長の Ronen Samuelも一目置く人物です(現在は SELCAMも代理店)。

今回は 2019年の ITMAで話題となったイスラエルのベンチャー TWINEの「オンデマンド糸染め」の機器を展示していました。オンデマンド糸染めといえばインクジェット方式を採用するスエーデンの COLOREELがリコーと組んでいますが、こちらの TWINEはインクジェット方式ではありません。

観念的には、膨大な色数のある刺繍糸・縫製用の糸の在庫管理は気の遠くなるような世界・・・これを「白い糸の在庫だけでオンデマンドで任意の色の糸を生産」することができると、膨大な在庫が削減される・・・建材の世界でバルキーな在庫を持たず、白いボードにオンデマンドでプリントができればというののアナロジーで、直感的にこれは「アリ」だなとは思えます。

が、需要の規模や、糸の価格、インクの消費量と価格、本当に困っているのか?・・・私にはそのあたりの皮膚感覚が無いので、どこまでこういうアイデアに勝ち目があるのかがイマイチ理解できてはいません。

私にとっての更なる収穫は、この TWINEのチェアマンに会えたことです。デジタル印刷に少しでも関係している方なら HP Indigoを知らない人はいないでしょうし、HP Indigoを知っている人なら、その事業部長として長年君臨したこの人、Alon Bar-Shany氏をご存じのことでしょう。彼はかつての efiの CEOを 19年務めた Guy Gecht氏と同じくらい有名なイスラエル人です。

HP Indigoを退社後、人口肉の 3Dプリントに取り組んでいる企業に転職したことまではフォローしていましたが、TWINEのシェアマンもやっていたとは・・・

彼は、もう一つのベンチャーのチェアマンも務めているとのこと・・・それは生分解性のプラスチックバッグで、マイクロプラスチック問題を解決するというコンセプト。自らサンプルを持ってそれを広報しています。そういう姿・・・好きだなあ!管理職って「管理をする職」と大きな勘違いをしている大企業の「管理職」の皆さん、この人って「あの HP Indigo」の事業部長だった人ですよ!こうやって、自ら世界に出ていかないと事業の肌感覚なんて得られませんぜ!部下に報告書を書かせて、それを読んでいるだけの人は「絶対に」世の中で使い物にはなりません!それは定年が近づいてきて次の仕事をどうしようか?という時にわかりますが・・・その時ではもう手遅れです。

このベンチャーのコンセプトがどこまでホンモノかどうかはわかりません。しかし、TWINEにしても、人口肉の 3Dプリンティングにしても、そしてこの生分解性のプラスチックバッグにしても、大きな社会的課題に対してその具体的な解決策を提案し、資金を集め事業化を推進していく・・・こういうダイナミズムには感じるところがありますね。

おや、INKCUPじゃないですか!円筒形の対象物に対してインクジェットでのプリントを実現する INKCUPですが、ここでは「パッド印刷」を紹介しています。殆どの衣料品には「ケアラベル」と呼ばれる、取り扱いに関する小さなラベル(タグ)が付いていますが、最近はそれをプリントで置き換えるという動きがあるようです。パッド印刷は、いわばゴム印の一種ですが、案外いろいろな局面で使われていて、細かい文字なども再現可能とのことで、再評価されているようです。

しかし・・・英二さん、人脈が凄いですね!

で、なんと、そのケアラベルをインクジェットでプリントする事例を見つけました。

京都府の向日町にある「A-POS(エイポス)」という企業で、上の動画のようにケアラベルをインクジェットでプリントする装置を展示していました。インクは UVインクとのことですが、細かい文字情報で、インク量も少ないため、触ったり折り曲げたりしても全く UVインクの固さはありません。

この用途は、私の現役時代からよく問い合わせを頂いたもので、プリンターとしてはさほど難易度が高いものではないと思われるにも関わらず、実際にプリンターとして実現されたものを見るのは私にとっても初めてです。まあ、ヘッド屋の視点からは、インク消費量も少なく、ヘッドの販売個数も大きな数は期待できないのですが、これを従来の印刷技法でやるのは無駄が多いんだろうし、熱転写リボンでは遅くて生産性が・・・というのも想像され、インクジェットが合理的・・・ぼろ儲け出来なくてもお付き合いしたい分野でした。

大阪に来たら・・・けつねうろんと、土産は「豚まん」です(肉まん・・・そりゃ東京の呼び名ですな(笑))

ということで、今回の弾丸ツアーのきっかけとなった facebook投稿主の京都大力の山村さんと京都駅近で一杯やって・・・弾丸ツアーを終わります。

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