東京パック 2022:【追記しました】写真速報(1)わおっ!なんだ、これ?

ビッグサイトで開催中の東京パックを覗いてきました。コロナ前の状況をよくは覚えていませんが、人出は多く盛況と言っていいと思います。包装機材展なので、主役は言うまでもなく包材やマテハンの装置などですが、「日付やロットナンバー、バーコードプリントが熱転写からインクジェットにシフト」「包材の小ロット・オンデマンドプリント」「ハンドヘルド IJプリンター」など、インクジェットが活躍する局面が年々増加しています。

今回はまず思わず「わお!」と声を挙げそうになった一件をご紹介します。これだけでも見に行く価値はあるかも!

【山崎産業】

追記はこちらです

私は包装業界自体には特段詳しいわけではないので、この会社が業界でどういうポジションを占めているのかはよくわかってはいないのですが、少なくともジャパンパックや東京パックの常連で、同社サイトによれば営業品目は「大型インクジェットプリンター、循環式インクジェットプリンター、サーマルインクジェットプリンター、画像処理システム、バーコード照合機、クラフト袋印刷機、ステンシルプリンター、マーキングロボット製作、RIBMARK ゴム活字、特殊インク、手動マーキング装置(スタンプ等)、マーキング用生産ラインの設計製作」とあり、Coding & Markingに特化した企業の様です。

今回「わお!」と思ったのはこれ!まずは動画をご覧ください

↑↑ 左のはこういう段ボール箱にプリントする装置の老舗である和歌山の紀州技研のもの、右はヘッド2個に異なる色のインクを入れて2色印刷をしている EDMの装置・・・このあたりは確立された世界ですが、印字幅は概ねヘッド一個分、乃至ヘッドを2つ繋ぎ合わせたくらい・・・かつモノカラーが普通です。それに対して山崎産業が出展しているのは「300mm幅でフルカラー」・・・え、どういうこと?

そもそも 300mmの長さのヘッドって何だ?富士フイルム DIMATIXの Samba?富士フイルムは最近、SambaJPCとしてユニット販売も展開しているし・・・でも、それにしては装置の大きさがかなりコンパクトだな・・・それに Sambaの 1200doiが必要な世界でもなさそうだし・・・

もうひとつ、製袋機で作った袋にオンデマンドでプリントするというコンセプトのデモもやっています。これも画期的といえば画期的!個人的にはヘッドを縦に使っていない分、心穏やかに見ていられます(笑)

しかし・・・ランプが見当たらないので UVインクでは無さそうだし、水系インクならキャッピング機構がもっと大仕掛けになりそうだし・・・溶剤系?あ!そうか、油性インクかな?オープンタイムは長いので機構はシンプルにできる。ま、それにしても装置が見事にコンパクト・・・謎だ!油性インクだとすると、色は水系インクで専用紙に撃ったような写真画質にはならないけれど、逆にこういう業務用の袋や段ボールなどには妙にフィットしている。

ありそうで無かったこういう装置、ひょっとしたらカテゴリーキラーになるかも!あ「りそう」で・・・あっ「理想」で・・・え?勝手に漢字変換(笑)え?そういうこと?おお、そういえば・・・Orphisって油性インクだな・・・

これは金曜日にもう一度見に行かなくては!

 

【・・・というわけで 14日(金曜日)に再度見てきました】

スペック表によると「オイルベースインク」とあります・・・水系のようにデキャップ問題も無く、UVのように光源を必要とせず、溶剤のように VOCの課題も無い・・・扱いやすさという点では非常に素性の良い油性インクですが、その浸透性の為、シャープな画像形成するためにはメディアに工夫する必要があり、今日では理想科学の ORPHISや VALEZUSくらいになっています。あ、リコー英国が欧州で独 OLBRICH社に供給している壁紙プリントエンジンは油性インクを採用してますね。

私がコニカミノルタのインクジェット部門に異動した当時、近所のオリンパスが米国ゼロックスに OEM供給する大判機を開発していましたが、それに採用されていたのがオイルインクだったことを懐かしく思い出します。そういえばそのオリンパスのプリンター開発部隊は、その後理想科学に移ったのです。いや、だからと言ってなんの関係もありませんが(笑)

印字速度は最大 30m/minで 300dpi…今どきのワンパスプリンターにしては非常に遅いですね。まあ、efiのシングルパスの段ボールプリンター NOZOMIは板紙に UVインクで高速にプリントしていますが、山崎産業が提示しているような使い方なら、そんな高速は不要ですけどね。

300dpiも、この用途なら十分でしょう。ここに 1,200dpiを使うものでもないでしょう。しかし 300dpi(npi)のヘッドってどこのだ?・・・そういえば、理想科学の ORPHISの初期モデルは東芝TECの 300npiのヘッドモジュール 2つを背中合わせに半ピッチ分ズラして貼り合わせて 600dpiを実現していたな・・・そのモジュール(300npi)の系統なのかな?最近の ORPHISや、東芝TECのヘッドに関しては詳しくは知らないので断定は難しいけど・・・

しかし 300dpiということは 25.4mm/300 = 85umのピクセル・・・先に出てきたオリンパスのゼロックスへの OEM機は「1パスでブロック撃ちができること」という要求仕様・・・通常は複数パスで間を埋めながら撃つのが常識の大判プリンターですが、液滴を小さくしてパス数を増やすと画質は向上しますが速度は当然遅くなります。ゼロックスのコンセプトは「1パスで selableな(ドラフトモードではなくおカネを払ってもらえる)画質を実現」というもので・・・写真画質を狙う水系インク機とは土俵を変えて勝負ということだったのでしょう。

1パスなのでノズル詰まりや欠は勿論、飛行曲がりも許されないワケで、コニカミノルタ KM512Lはその為にありとあらゆる技術が盛り込まれましたが、その時の成果は今も生きています。顧客の無茶ぶりは時として技術を大きく進化させる一例です。

その時 360dpi=71umのピクセルを埋める為に必要なオイルインク滴は 42pl・・・この時の駆動周波数は 7.6kHzなので 71 um x 7.6kHz ≒ 32m/min…一分間に約 30mということで、今回の山崎産業のと同じくらいの速度でした。山崎産業のは 85umということはインク液滴は 50plを超えていると思われますが、仮に東芝TECのヘッドだったとするとマルチドロップでそれを作らなくれはならないので、XAARタイプでは必然的に周波数は落ちます。細かい解説は省略しますが、30m/minという比較的遅い線速度は、そのあたりの制約と想像されます。

↑↑ 厚みは約 20cmくらいと非常にコンパクト(パンフレットは A4サイズ)

メディアギャップは 5mmくらいまでは大丈夫とのこと。プリントサンプルの QRコードはピシッとしたシャープさには欠けますが、問題なく読み取れます。今回は参考出品で、製品化にはまだ少し時間がかかるようですが「そりゃかかり過ぎやろ!」と、ちょっと発破をかけちゃいました(笑)

「山崎産業300mmフルカラー」のチラシはこちらからダウンロード頂けます。

東京パック 2022:写真速報 (2)に続きます

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