- 2022-8-15
- トピックス
業界各社の 2022年度第1四半期決算発表をした企業を順に取り上げています。今回は富士フイルムです。
富士フイルム
今年度も出足は好調の様です。四半期売上高はまた過去最高、営業利益は前年に届いてはいませんが、前年にコロナ関連の特需があったような記述があり、年間見通しではまた上方修正しているので特段の問題は無いでしょう。
インクジェットに関する記述は下記の部分です。ヘッド・インク材料(染料)・産業用インクジェットプリンター(JetPress・Acuityなど)がいずれも好調の様です。
【2022年度の業績見通し】
3か月前、今年度の業績見通しが発表された問いに下記のコメントを書きました。
ほらほら、また~(笑)随分控えめな見通しを(笑)まあ、無理して大風呂敷を広げて、下方修正や未達となるより、控えめな予想を提示して上方修正・超過達成する方がいいというのは分かりますが・・・う~ん(笑)下の表の様に「すべてのセグメントで売上高も営業利益も前年度を上回る」と控えめに豪語しています(笑)うん、できますよ、きっと!第1四半期から上方修正する方に賭けてもいいです(笑)
で、結果は予想通り、売上高も営業利益もちゃんと上方修正してきました。下手な予想屋でもこれは当たりますな(笑)
売上高は全セグメントで上方修正ですってさ(笑)まあ、為替の差でそのくらいは行くでしょう。営業利益に関しては、ビジネスイノベーションはドル高がネガティブに作用するそうで、ここだけは下方修正、その他は上方修正しています・・・あざとい(笑)
株式市場も、富士フイルムのこういうパターンは既に読み筋・織り込み済みとみえて、株価は全く反応していません。むしろ少し下がり気味・・・。まあ、とはいえ 10年間で眺めてみれば 2,000円が 7,500円になっているのですから立派なものです。持ち株会の方、御馳走してください(笑)
富士フイルム・ビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)
旧富士ゼロは売上高も営業利益もこの3年間目立った変化はありません。社長が交代されて3か月なので新機軸を打ち出したとしても成果が業績に表れるのはまだまだ先のことでしょう。この分野は同業他社も含めて厳しい局面に差し掛かっている事業領域であり、この先5年のスパンで現時点でのプレーヤー達が皆仲良く生き残っているようには(個人的は)思えません。グラフィック部門との事業再編や、いっそもっと大きく業界再編を考える時・・・タイムリミットではないでしょうか?
年間見通しで、売上高はそれでも微妙に上方修正しましたが(・・・無理しなくていいのに)営業利益は少し下方修正しました。これば旧富士ゼロの主戦場は日本であり、海外生産された製品が円安の影響で原価アップになった分を吸収できなかったのだろうと推察します。
富士フイルムのこの10年
上で10年間の株価推移に触れたので、10年前の決算説明資料にあるセグメント構成を拾って、現在のセグメント構成との比較を試みます。画像はクリックすると拡大します。10年前の 2012年度の為替は 83円/$、107円/€だったんですね!
富士フイルムのセグメント分類は、祖業としてのイメージングと、合弁会社だった事務機器事業はずっと独立したセグメントとし、その他は「インフォメーション」とか「マテリアルズ」といったちょっと実態不明のネーミングがなされてきました。その中身は「医用関係」「印刷関係」「光学フィルム他の材料関係」といった「互いに素」な分野が含まれています。
同社は前トップの古森さんの長期ビジョンに基づき「ヘルスケア関連を将来の事業の柱とする」ということで、大胆な M&Aを含め当該分野を大きく拡大し、現在は独立したセグメントとなっています。一方、その小森さんの出身母体の印刷関連分野は「マテリアルズ」というネーミングのセグメントに残ったままでなっています。
イメージング分野の10年前と言えば、アナログからデジタルへの遷移で業界各社とも苦労している時期で、富士フイルムといえでも例外ではなかったのですが、他社が写真フイルム事業から撤退するなかでそれも維持し、デジタルイメージング分野の強化にも成功し、セグメントとしても売上高は伸長し利益も出る体質転換に成功しています。
ディスプレイ向けフイルム分野は、液晶から有機ELに本格的なシフトが進むと見直しを余儀なくされるのは自明ですが、元々は材料化学に強い企業で他分野の事業化も進んでいるようです。その有機ELにもかなりの研究開発投資を行っていましたが、事業化となると簡単な話ではなく、それに拘って泥沼にハマる前にスッキリと売却・撤退したのは地味ながら大英断だったと思います。
ドキュメントソリューション(旧富士ゼロ)は、これも業界同業各社がその方向転換に苦労しているのと同様の結果になっています。米国ゼロックスとの「意地をかけたバトル」を、私を含む多くの業界人は冷ややかに見ていました。すべてのセグメントで素晴らしい長期ビジョンを10年かけて実現したなかで、この分野をどう持っていくのか?そこは注目点だろうと思います。
あと・・・株価を 10,000円台に戻してくださいよね(笑)