業界各社 2022年度 第1四半期決算発表状況(1):エプソン・キヤノン

各社の 2022年度(23年 3月期)第1四半期決算発表が始まりました。キヤノンやローランド DGなどは暦年決算なので、2022年度第2四半期決算の発表ということになります。例によって決算数値そのものよりも、この先をどう読んでいるか?それが四半期ごとにどう変わっていくのか?に重点を決算状況を見ていくことにします。今回は 2022年度の年間見通しをどう立てていたのか?予算策定時期と実勢レートが大きくズレた(大幅に円安にシフト)のどのように業績に凡例されたのかが関心の焦点です。

セイコーエプソン

四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。今年度も順調な滑り出しで、第1四半期の売上高は 3,000億円にもう少しで届くレベル、営業利益も 310億円を超え、いずれも同社の史上最高を記録しています。

↓↓ 下のグラフはそれぞれ売上高と営業利益のここ3年間の実績と、2022年度の見通しです。2021年度の決算短信に 2022年度の業績見通しを公表し、その後四半期決算ごとにそれをアップデートするのがルールです。黄色の棒グラフが今年度ですが、売上高・営業利益とも上方修正されています(事業利益は据え置き)。エプソンはこのパターンが多い・・・余裕のなせる業か(笑)次回の上期決算発表でもまた上方修正しそうだな(笑)
(なお営業利益・事業利益の違いについてはこちらなどを参照ください。詳しいのはここです。事業利益は制度的に定められたものではないので定義はいくつかありますが、一般に企業としての収益をより明確に反映するとされています。ここでは過去からの継続性を重視して営業利益で統一します)

エプソンの第1四半期決算説明資料はこちらにありますが、下記に総括が書かれています。「価格対応」って・・・円安は外貨建てでは「価格が安くなる」効果があるので、その分外貨建ての価格を据え置く(円建てでは値上げ)をした=コストアップ分を価格転嫁したということでしょう。

前回は 121円/$、132円/€でしたが「直近のレートで見直して見通しに反映させた」ということです。事業利益は据え置き・・・為替の分が他の要因で相殺されて影響なしとのことの様です。まあ、ウクライナの戦争も長期化しそうだし、中国のゼロコロナ政策も続きそうだし・・・万事不透明な状況は続きそうなので、据え置いたのは妥当な判断に思えます。でも、多分また上方修正して株価を上げる作戦のような気がするな(笑)

キヤノン

四半期ごとの売上高(左)・営業利益(右)推移です(単位は百万円)。キヤノンは決算期が暦年なので、今回は 2022年度の第2四半期(上期)の発表ということになります。第1・第2四半期とも売上高・営業利益は過去最高を記録しており、年間最高記録更新に向かって順調な滑り出しと見受けられます

↓↓ キヤノンの場合は暦年決算なので、増収増益という年間見通しを立てたのは昨年末=ロシアのウクライナ侵攻など誰も想像していなかった時期です。その時期に立てた見通しでは増収増益となっています。

今回、上期を締めた時点は戦争は長期化しそうな様相を呈しており、それに起因する様々なネガティブ要因を織り込んで(エプソンの事業利益のように)据え置きとすることも可能だったと思われますが、公表された数字は、第1四半期に続いて「更に上方修正」という強気なものです。余程自信があるのでしょうね!

↓↓ 決算説明資料には下記のような説明があります。すべてのビジネスユニットで増収増益ですって!文句のつけようがありません。御手洗社長、益々の長期政権となりそうですね(笑)画像はクリックすると拡大します。

前回書きましたが、ロシアによるウクライナ侵攻に関連するスタンスは明確ではありません。エプソンが侵攻から2週間後に「自社の行動原則に照らしてロシア・ベラルーシとの取引を停止する」と明言したのに対し、キヤノンからはスタンスについて明確なメッセージはありません。

キヤノンメディカル、ロシアのヘルスケア大手と合弁」・「キヤノンメディカルシステムズ,R-Pharm社とロシア・CIS地域における機器販売・サービス保守事業の合弁事業開始に合意」というような報道や発表もあったわけで、これらについて会社としてどういうスタンスを取るのでしょうか?世界の優良企業が明確なスタンスを公表しているなかで、もはや堂々たる世界的な企業である同社も何らかのメッセージの発信はあってもいいように思います。

撤退を表明すべき・・・と言っているわけではありません。例えば独シーメンスは「多国籍コングロマリットであるシーメンスAGは、ウクライナへの侵攻が続いているため、産業用事業をロシアから撤退する計画を本日発表しましたが、別経営の医療技術部門であるシーメンス・ヘルスイニアーズはロシアに残り、ヘルスケア製品やサービスの提供を継続する予定です。」と、ヘルスケアはロシアで事業継続と公表しています。何も言わないのと、明確に意思表示をするのとの違い・・・これを理解して初めて「日本企業」を抜け出して「世界企業」になれるように思います。

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