大野版:2018年上半期の振り返りと下半期の見通し

官公庁や大方の企業の会計年度は4月から翌年3月ですが、個人事業主の会計年度はカレンダー年です。こんな基本的なことに前職を退職後、個人事業主になって初めて気が付きました。ということは、大方の皆様より三ヶ月ほど先行していろいろなことにアタマを回していると言えるかも知れません(笑) というわけで、私なりの2018年上半期の振り返りと下半期の見通し、そして来年度の方向付けです。

1.海外出張・・・あるいは滞在?

前職退職を3か月後に控えた2016年の新年のご挨拶にて「今年、私は活動の場の軸足を欧州とアジアに移していこうと考えております。日本はデバイス(IJヘッド)や技術は保有しているのに、何故かインクジェットによる産業革命の担い手となれていません。(中略)エキサイティングな欧州や中国・アジアにもっと身を置くことで、そこの人脈を拡大し、情報を吸収咀嚼し、それを以て日本に火を点ける。黒船も連れてくるかもしれません(笑)が、案外それが日本の産業用インクジェットシーンを変える近道のような気がする次第です。」と書きました。

また今年の新年のご挨拶で「2017年は一年のちょうど五分の一にあたる73日間海外におりまして、内52日がヨーロッパ、17日が中国、4日が北米でした。この数字はそのまま、私の関心度合いの分布=産業用インクジェット関連の情報やイベントの多さを反映しているようです。」と書きました。

今年2018年は、前半6か月が終わった段階で、既に昨年の一年間分を超える78日間海外に出ていき、内67日がヨーロッパ、11日が中国、アメリカはゼロという状況です。産業用インクジェットの動きやインダストリー4.0などの動きを自分なりに追いかけていくと、結果としてこういう比率になったということです。

後半は主要なイベントの会期のバッティングが多く、また自分がモデレーターを務めるコンファレンスもあり、日程の調整に工夫が必要ですが、やはりヨーロッパと中国やアジア諸国に積極的に出かける予定です。

2.ウェブサイトの立ち上げ

今年1月から、自分の想いとミッションを形にするべく、ウェブサイトを立ち上げました。お陰様で訪問者数やページビューは当初の期待と予想を大きく上回る数字で増加中です。また、いろいろな局面で知人や知らない方々から「読んでるよ!」とお声がけ頂くことも多く、改めて情報発信の重要さに気が付いた次第です。当初は、英語記事へのアクセスのハードルを下げるべく、英国人ジャーナリストの Nassan Cleary の記事翻訳を主体とするつもりでしたが、やっているうちに次々と「この際、是非やらなくては!」と思う案件が増えつつあります。

自分の想いの発信の場だけでなく、広くプラットフォームとして活用して頂き、皆様のインクジェットへの想い・貢献案・情報・プレスリリースなどの発信の場としても活用頂ければと思います。

また、ウェブという「(アクセス)待ちのメディア」と並行して、プッシュ型のメルマガも発行して相乗効果を生む努力もしております。社内回覧などもして頂いているようですが、是非下記リンクから無料メルマガご登録をお願いいたします。


3.展示会の変調?メーカーの悩み?

今週のNessanの記事で「英国IPEXが終わった」件を紹介しました。また前半に参加したインクジェットが関係する展示会は「Heimtextil」・「上海広告設備展示会」・「FESPA」などですが、欧州系の展示会には何か変調の兆しを感じました。典型的にはFESPA・・・産業用インクジェットメーカーの雄であるDURSTが出展しなくなったこと、出展機がワイドフォーマットプリンタの枠を外れて多様化しつつあること、FESPAもそれに対応してそれを推進している姿勢を見せつつも、今ひとつ「ハラ落ち感が無いこと」などにそれを感じました。

インクジェットは、非常に応用力のある技術で、「可能性があると思えばどんな隙間にも入り込んでいく、飛べる空間があればどこにでも、どこまでも飛んでいく」そんなイメージがあります。前職でインクジェット事業を担当していた際に「インクジェットを商業印刷やオフィスという鳥籠に閉じ込めるな!」と言ったことがあります。電子写真を主たる生業とするメーカーは、オフィス市場の成熟の打開策として、商業印刷分野への展開を考え、その枠組み・シナリオにインクジェットも隷属させようと考えがちです。しかし、それではインクジェットの持つ潜在能力を殺してしまう・・・それが「鳥籠に閉じ込めるな!」でした。

展示会視点でも同じようなことが言えるのかなと思うのです。インクジェットの潜在能力を理解したメーカー群は、できるだけ素直にその潜在能力を広く引き出そうとします。一方、展示会にはそれが発足した時のミッションがあり、それが展示会の「タガ」であり、自由を求めるインクジェットの鳥籠になっているのかも知れません。もっとも、ヒエラルキーや部門間の力関係が働く企業とはことなり、展示会は出来るだけトレンドを取り込もうとします。が、展示会の「タガ」は結局自らも縛り、「ハラ落ち感」無いままに、形だけのトレンド追求となっているのではないでしょうか?そこは結局、電子写真を主たる生業とするメーカーが、インクジェットとどう向き合うかという悩みと同じなのかもしれません。

4.下半期のイベント

来年分も含めてイベントカレンダーを更新しました。

7月末にはIGASがあります。かつてはDRUPA・PRINT・IPEXと並んで、4年周期の印刷機材総合展の一つ、アジアで開催される唯一の大規模展示会のステイタスを誇っていましたが、4つの一角でIPEXが無くなり、隣国中国では All in Print と Print China が勢いを増しつつあります。そんな中でIGASは今後どのように舵取りしていくのでしょうか?今回のIGASはそれを占う意味があると思います。私は展示会での勉強以外に、産業インクジェット業界の送液ポンプのデファクト「KNF社のセミナー」をサポート致します

9月26日には私がモデレーターを務める WTiN のジャパン・デジタルテキスタイル・コンファレンス2018が開催されます。インクジェット関係の皆様が、単にプリンタの仕様や機能だけでなく、繊維産業・アパレル産業がどう変わりつつあるのかという流れを理解することは大変重要だと思うのです。海外ではそういうコンファレンスが盛んに開催されていますが、それを日本に持ち込みました。是非、デジタルが何をどのように変えつつあるのかを感じて頂ければと思います。7月一杯は「アーリーバード」割引(20%)が適用されますので、ご活用ください。このイベントの関係で、個人的にはシカゴで開催されるラベルエキスポには出張できません。

10月は主要な展示会がバッティングしまくりです(笑) 新興の産業用インクジェットのコンファレンスとして成長著しい TheIJC がちょうど上海開催の ITMA ASIA にぶつかります。更に北米サイン業界の展示会 SGIA がほぼ同時期に開催されます。その少し後には中国広州で All in Print が開催されます。多分、ITMA ASIA に出かけて、その後中国の顧客や現場を回り、その流れで広州に行って、欧米はスキップすることになりそうです。

11月初にはアムステルダムで WTiN 主催による INNOVATE Textile & Apparel が開催されます。また後半にはミラノで InPrint があります。多分、2回出かけるのではなく、この間を欧州の顧客やパートナー巡回の機会として、ずっと滞在すつことになると思います。今年のアドベント(クリスマス前の「待降節」)は12月2日からで、本当はそこまで居たいところですけどね(笑)

2019年、年が明けると直ぐに年初恒例の Heimtextil がフランクフルトで開催されます。今年2018年は、DURSTが居なくなりましたが、HPが積極的に布に参入する構えを見せた年であり、また2020年のFESPAがHPのワイドフォーマット事業部門のお膝元バルセロナで開催されることを考えると、その前哨戦としてなにか面白い出し物が期待できるかもしれません。

そして3月には上海でAPPPEXPO、サイン業界の大判機を中心とした大規模展示会があります。今年登場したEPSONの小型機からカニバライズされたプレシジョンコアはどうなっているでしょうか?その他、既存の産業用ヘッドの勢力分布に変化あるのでしょうか?興味は尽きないところです。

5.日本のインクジェットコンファレンスの立ち上げと、経営層への提言

2016年4月に独立して以来、いや実は前職現役時代から「日本発の、日本の為の、日本によるインクジェット産業振興を促すコンファレンス」が必要なのではないかと考えていました。学会や業界団体がインクジェットに絡む情報を提供するイベントを適宜開催していますが、「So what ? だから何なの」、「それを事業・産業にするには具体的に何をすればいいの?」をもっと泥臭く、かつストレートにホンネベースで追及した方がいいように感じます。忖度多すぎ、多過ぎ君(笑)。この先、約一年を目途に「日本発の、日本の為の、日本によるインクジェット産業振興を促すコンファレンス」を立ち上げたいと思います。何をやって欲しいか?ご意見ある方は、メールやお問い合わせフォームからどんどんインプット下さい。

と同時に、大小を問わず、インクジェットに関係する企業のトップ層に斬り込んで、提案・提言をしていこうと考えています。何故なら、おそらくそういう層は上記のコンファレンスには出て来られないというのが見えているからです。でも、会社のリソースを握っているのはそういうトップ層、あるいはその頂点の社長!従って、そこに働きかけていくこととセットで初めてコンファレンスも活きてくる・本来の意味を持つ・・・そういう感覚です。

私にとっての今年度下期をその構想を練り、志を同じくする仲間を募る期間とし、来年度の中~後半には形にしていきたいと思う次第です。同士を募ります(笑)

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