ミヤコシ:新製品内覧会(7月28日@宮腰デジタルシステムズ)-その2-

ミヤコシ:新製品内覧会(7月28日@宮腰デジタルシステムズ)-その1- からの続きです

「ミヤコシの技術屋さんと言えば井澤さん」・・・これは暫く前までの、インクジェット・デジタルプリンター業界に絡む人達の共通認識だったのではないでしょうか?

パナソニックヘッドを斜め配列することで解像度を稼ぎ、水系インクで高速トランザクションプリンター MJP600を開発し、その後程なくして京セラの 600dpiのワンパス志向のヘッドに切り替えて、そのシリーズを発展させた立役者・・・これは誰しもが認める話なんだろうと思います。

井澤さんは「ポリシーが非常にハッキリした方」という印象でした。私が前職でヘッドメーカーとしてオファーに何度もその門を叩きましたが「大野さん、アンタのヘッドは遅いからウチでは使えねえ!」と・・・(笑) 多くのサプライヤー・担当者が「お出入り禁止」になる中で、何故か例外的に暖かくお付き合い頂いていました。サプライヤーになれていなかったからかな?(笑)

インクジェットヘッドの設計思想として、オールラウンドプレーヤーを目指すのか、あるいはピンポイントの性能に特化するのか?という根本的な課題がある中で、シングルパスの速度に特化した京セラヘッドに、オールラウンダーのコニカ(当時)ヘッドは、そこでは太刀打ちできなかったのは事実ではあります。まあ、オリンピック陸上で 100m走のメダリストを目指すのか、近代十種競技でメダリストを目指すのか?・・・そんなアナロジーでしょうか?別の競技のアスリートとして見て頂いていたのかも知れません・・・オメエ、足は遅いけどなんでもやるよな?・・・とか(笑)

しかし、この私にも会社ルールで定年というものがやって来ます。思うに井澤さんは普通の会社の定年ルールなどは適用されなかったのではないかと推察しますが、それでも人間として今度は「余命」を考えるべきタイミングはありますよね。あのパワフルな井澤さんも引退されたようです。

後任の亀井さんは「オレは私立文系(慶応義塾)だから」と自虐的に仰るように、バリバリの技術屋さんとしての井澤さんのダイレクトな後任という訳ではないかと思いますが、逆にビジネス視点で印刷業のデジタル化に一貫して関わってきたという実績があります。

私は前職で亀井さんの同僚(私が数年先輩)でしたが、彼はアメリカ駐在も経験し、世の中がまだまだアナログ全盛の中にあって、いち早くデジタル化の可能性を説き、その後一貫して自らもその実現に尽力してきた経緯を見てきました。また、単に自分が所属している会社のみならず、世の中全般のデジタル化が必要という視点を常に説いていたことも印象的で、今も PODiジャパンで精力的にその活動を続けています。

本当なら「デジタル庁長官」は、ガラケーしか使えない議員ばっかりの中で、たまたまタブレットを持っていた某氏・・・などを選ぶのではなく、こういう人こそ相応しいのではないか?・・・なんて思ったりします(マジです)。

私から見た井澤さんのミヤコシは:
0.コダックの CIJヘッドの「VersaMark」の搬送機パートナーから一歩踏み出してプリンターメーカーとなった。
1.パナソニックヘッドを斜めに組み合わせて高解像度にし MJP600を実現し、高速電子写真プリンターの世界に、インクジェットという風穴を開けた。
2.その後、京セラのワンパス指向の多ノズル・高解像度ヘッドを採用し、その改良に貢献すると同時に、多くの製品を OEMで有名ブランドメーカーに供給した。京セラヘッドとは一心同体の関係だった。
3.マシンは常に「高速・高画質・ベビーデューティーに耐える」大艦巨砲主義的ロバストなものを指向していた。
4.技術シーズを多方面に応用展開し、テキスタイルプリンター・液体現像方式プリンター・ラベルプリンター・その他の応用製品を展開した。
・・・こういう印象があります。あくまで私見ではありますが・・・

一方で、私が想像するに、技術屋ルーツではない亀井さんが目指しているものは、ミヤコシが蓄積した技術資産を継承しつつ、市場的アプローチで:
1.インクジェットにフォーカスし、「技術的には可能」という理由だけで液体現像との二兎は追わない
2.大艦巨砲主義に拘らず、戦艦・巡洋艦がカバーできない駆逐艦クラスが効率的な市場にもフォーカスする
3.用途・市場に最適なインクジェット技術を幅広く検討し採用する
・・・そういう印象を持ちました。

また、私と同じ前職場で「量産品のモノづくり」を経験していること、更にはそれが肥大し過ぎてしまうと市場やお客さんを見ないで社内規定に縛られてしまうという負の側面も併せて理解していること・・・この経験値は、一品料理が得意なミヤコシが一段ステップアップするにあたって、新しい考え方を提示できるベースとなるのではないか?そんな気がします。

印刷業界全般のトレンドに加えて、コロナ禍がそれを加速して、局所的に追い風や逆風が渦巻いているのが現在だと思いますが、ベーシックなものは必ず残ります。そういう「残るべき」もののひとつが、部品の加工から一貫してベーシックなモノづくりをしているミヤコシのような企業なんだろうと私は思っています。

それが、コロナ後にどういう進化を見せてくれるのか?楽しみにしています。

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