展示会報告 Heimtextil 2018(7)フランクフルト1月9~12日:デジタル集中フロア H4.0 HP

まず、ギアの入った感のある HPKornit Digital から書き始めます。一部はすでにこのサイトを始めた当初に動画などのテストを兼ねてアップしたものです。

HPジャパンの霄(おおぞら)さん。背景の壁紙はロール紙対応の Indigo20000 によるものです

霄さんが持っているのは菊池襖紙工場による和風柄のサンプル集で、HPのラテックス機でプリントしたものです

菊池襖紙工場の和風柄…インクジェットです

これはラテックス機による壁紙の事例です。尾張一宮の堀江織物さんの工場のキャンティーンです。
随所に独特な工夫が見られ、従業員の方々がリラックスできる快適な空間です。

部屋のサイズや窓の位置、貼りたいデザインなどをインプットすれば
どういう感じなるのかシミュレーションできるソフト。
堀江織物さんもこれでシミュレーションしたようです。

デリケートな問題ですが、よく見るとごく一部左右で色味が異なりつなぎ目が見えてしまう部分があります。
従来ならば「これがあっては絶対にダメ!」と言われてきた部分です。
もちろん「デジタルだから許される」というものではありません。
しかし、従来は「施工業者」から、こんなもんクレームになるからダメ!と言われていたところ
エンドユーザー(施主)の堀江さんは、まあこのくらいならいいか…と受け入れているのです。
ここは考えるべきところかと思います。

■ 大野補足:HPの名誉の為に補足しますが、上記にような現象が常に起こるわけでもなく、またそれに満足するHPでもありません。デジタルだから許されるとはゆめゆめ考えてはいないようです。ラテックス機も進化改良を続け、現行世代のモデルでは顔料定着用樹脂インクの改良や乾燥方法の改良、その他諸々の改良により、色差の生じる確率は極少化されているとのこと。旧世代機をお持ちのユーザー様はそろそろお買い換えのをお勧めしますとは、ワードフォーマットエヴァンジェリストの霄さんのコメントです。詳しくはHPジャパン霄さんにお問い合わせください。

少し目立ちにくいですが、ラテックスインクでプリントした垂れ幕です

ラテックスインクでプリントした布張り(人造レザーだったか?)の椅子です

このようにHPは、ラテックスインクジェット機のみならず、Indigoによる壁紙も含めて総合的に「内装材」へのアプローチをする姿勢を明確にしてきています。

左から二人目の女性がエステル・サラ女史、HPバルセロナでテキスタイルプリントを推進している責任者です

右から二人目の人は「ドイツ繊維染色研究協会 DITF : Deutsche Institute für Textil + Faserforschung」の Dieter Stellmach 氏、三人目の人は同じく Christian Kaiser 氏。ドイツは戦前は染料工業の一大拠点だったこともあり、その流れを汲んで繊維・染色の研究機関として DITF が設立され存在していると想像されますが、ここのウェブサイトをみると、単に狭義の繊維染色に留まらず、Industry4.0なども取り入れて DTMF:Digital Textile Micro Factory の推進や Retail4.0 というコンセプトによる小売業の変革なども含んで繊維産業全体をカバーする研究機関と考えられます。昨年のハイムテキスタイルでは DTMF のコンセプト発表に中心的な役割を果たしました。日本にも染色業者の業界団体としての日本染色協会や、学術研究機関としての信州大学繊維学部や京都工繊大学などがありますが、産業の変革まで視野に入れた全般的な活動を行っているようではないと思われます。
DITFのサイト
二人はここに紹介されています
Christian Kaiser 氏によるDTMFのレポート
Christian Kaiser 氏によるRetail 4.0の紹介

左端の人はスイスのRIPベンダー ERGOSOFT の創業者・会長の Hans-Peter Tobler 氏です。インクジェット捺染の世界ではinedit や Wasatchi などと並んで定評のあるRIPです。
ERGOSOFTのサイト

この写真で大事なことは、HPのデジタルテキスタイル推進責任者が、こういう場で、こういう人達と会って話をしているということです。事前にガッツリと繋がっており、今度こういうの出すから会場で会いましょう!ということかもしれないし、たまたまここで出会って Hans-Peter がRIPを売り込んでいたのかも知れないですが、要は会って話をしているのです。(上述のRIPベンダーの inedit と言えばエステル・サラ女史のいるバルセロナに所在しており、当然地元で話はしていると推察されます。)

展示会は製品を並べて商売をする「モノの交易」だけが重要なのではありません。展示会があれば人が集まり、そこでいろんな方面のキーパーソンが出会って繋がることによって「情報の交易」がおこります。これが重要なのです。これが、私の持論である「事業責任者は必ず展示会に行くべし」という背景です。

成熟しきった産業はいざ知らず、これからという産業・事業では、それは必須であろうと思う次第です。あなたの仕事は全社業績を忖度して経費を削り、出張を控えることではありません(笑)現地販社の駐在員と会食することでもありません。自ら世界に出て行き、自ら人と繋がり、自ら事業を拡げていく!これです!

 

(長くなりましたのでここで切ります。次回は Kornit Digital について)

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