EFI Connect 2019 (5) 纏め

Connect 2019 (4) からの続きです

EFIの Connectというイベントに参加するためにラスベガスに来ています。今回を以て纏めとします。

■ 人物

私が海外のコンファレンスや展示会によく出かけるのは「新製品のスぺックを調査に行く」というようなことはまず無く、どういう人が来ているのか(いないのか)を確認に行くのが主眼点です。そこで旧交を温め、face-2-faceでしか得られない情報を交換するというわけです。

今回の EFI Connect 2019は私にとっては初参加であり、またこのコンファレンスは EFIのユーザーコンファレンスという位置づけなので(…流石に、EFIのプリンターやソフトのユーザーレベルまでは知らんよなあ)あまり知り合いに会うことを期待しないで行きました。ところが案外そうでもなくて、結構な重要人物と再会しました。まあそのくらい重要なイベントというポジションなんだろうと思います。

ご記憶にあるかと思いますが、エストニアの Enn Kerner氏です。彼はエストニアに留まらず、ヨーロッパ諸国の印刷関係(アナログ及びデジタル)コンサルティング、大学などアカデミックな枠組みでの講座などを持って活動しています。詳細は書けませんが、エストニアのある特殊な大手印刷工場で EFIのプリンタを導入するアドバイスもしており、またこのイベントの後はカリフォルニア大学で案件があるとのこと…正に国際的な活動をしています。


上は CRETAPRINTの Pedro Benito氏。同社が EFIの傘下に入ったのでここに居て不思議ではないですけれど・・・他にも(写真は在りませんが)EFI傘下になった REGGIANIの Michele Riva営業部長にも会いました。BOLTの発表で先日会ったばかりですが(笑)

右はインドの Aditya Chandravarkar氏。インドでインクジェット関係のイベントを運営している中心人物です。

上はドイツの印刷業界の老舗専門誌で、創刊は 1894年に遡るという Deutscher Druckerの主幹編集長 Bernhard Niemela氏。大野とは 2012年の drupaで KM-1のローンチに際するインタビューを受けて以来の親交があります。プライベートな会話で私が「ドイツの歴史が好き、特に東プロイセン(Ostpreussen)とかドイツ十字騎士団(Deutsche Ritterorden)とか・・・」と超ニッチなことを言ったのに興味を持ったのか、会うたびにディープな歴史話で盛り上がります(笑)

Frank Tueckmantel氏

Cary Sherburne女史

Bill Muir氏

(左)Richard Romao氏 (右)Frank Romano氏

RICOHの商業印刷・産業印刷分野をカバーする CIP事業本部の森田本部長。

今回の EFI Connect 2019にはスタッフなども含め約 1,200人近くが参加したようです。その中で日本人は 6名のみ!EFIジャパンの多田さんを除けば、大野の他には理想科学から2名、Duploから1名、そしてこのRICOHの森田さん。役員クラスでは森田さんだけでした。

確かにインクジェット視点では EFIの日本での存在感は、米国や欧州でのそれと比べて低いのは否めません。というより日本全体が産業用インクジェット市場(セラミック・段ボール・テキスタイルなど)がまだまだ花開いていない状態なので、欧米の産業用インクジェットベンダーの存在感の低さは他社も同様です。

EFIに限らず、DURSTにしても SwissQprintにしても AGFAにしても、欧米や中国の産業用インクジェットプリンタ市場では知らない人はいませんが、日本での知名度は段違いに低いという現状は、逆に日本が異質・特殊なガラパゴス状態にある証左でしょう。

一方でガラパゴス日本といえども、電子写真業界では Fieryというコントローラーを通じ、 EFIの名前を知らない人はいないといっても差し替えないでしょう。そもそも EFIが産業用インクジェットに参入したのは、電子写真プリンタメーカーがいずれ自前のコントローラーに参入し Fiery事業も未来永劫ではないと読んだからです。そこから豊富なキャッシュで大判プリンタメーカーの Vutekを皮切りに産業用インクジェット分野に M&Aを多用して参入していきます。

しかし皮肉なもので、その電子写真メーカー群も今やオフィス市場の飽和や商業印刷市場への電子写真での拡大に限界をみて、産業用インクジェット分野に新たな展開を図ろうとしています。そういう意味では道程は異なっても同じ世界に踏み入れた仲間として EFIの動きを参考にするのは意味のあることでしょう。そもそも日本に居ては世界の動きは見えないですから・・・

もっとも、EFIとして潜在的(顕在かも)競合という電子写真メーカーからの参加を歓迎するのかどうかは分かりませんが、一方で電子写真メーカーはヘッドの供給者という側面を持っています。EFIはヘッドを持っていません。そういう観点からはサプライヤと顧客という関係にもなります。この世界は白黒・敵味方で割り切れる分かり易い世界ではなく、局地的・部分的に、あるいは包括的に戦略的提携を模索していくべき世界なのです。

そういう仕事は担当者ではなく、役員クラスがトップ外交として自らやるべき仕事です。森田さんが居た(しか居なかった)ということは・・・そういうことなのでしょう。

■ イベント全般

全般に非常にうまく構成されていて、エンドユーザー、ディーラー、アナリスト、メディア関係者が自分で知りたい情報を、目的に応じて組み立てて収集でき、またネットワーキングレセプションやメディア向けディナーなどもあり、またエンターテインメント性もあって「やはりマーケティングに長けたアメリカ企業」のイベントだな!と感じます。

日本の業界の「予定調和的」イベントも、それはそれで日本の文化にはフィットしているのでしょうが、産業用インクジェットに関わる以上は、こういう米国企業や欧州企業のイベントに参加して、その空気を吸っておくべきでしょう。どちらがいい・悪いの問題ではなく、日本の市場だけではあまりに特殊なうえに、まだまだ小さいわけですから・・・

日本のエンドユーザーも参加されるといいと思いますが、一点ハードルがあるとすれば、全編英語で同時通訳などは全くないことです。少なくとも英語のヒアリングが出来ないと厳しいですし、また英語で喋るのが得意でないと、会話に参加して楽しむことは難しいです。

日本人(?)・パキスタン人・インド人・トルコ人・米国人

日本人(?)韓国人・中国人・オーストラリア人

ドイツ人・ポーランド系ドイツ人他

総合司会をしたマーケティング部門の VPである Frank Tueckmantel氏はドイツ人で、非常に分かり易い英語を喋ってくれますが、CEOの Bill Muirやその他の米国人の英語は、普通に流暢な米語です。もっともよく聴いていると、出身国も様々なのでイスラエル系の人はちょっと訛りがありますし、買収した CRETAPRINTや GEGGIANIから来た人のプレゼンはスペイン訛りやイタリア訛りがあり、米語より聞きやすかったりもします(笑) ただ、いずれにせよ日本のエンドユーザーの方にはちょっとハードルが高いかもしれません。それでも、参加する価値はあると思いますが・・・

一方、上述の電子写真系メーカーや潜在的サプライヤー・パートナーとして産業用インクジェットに関わる人たちは、技術であれ営業・企画であれ、この程度の英語はこなせないと、更にはこういう場でプレゼンできるくらいでないと欧米、いや中国も含めて世界で仕事をするのは無理です。何度も書きますが、日本の市場は GDP比ではアンバランスに小さいですから、世界で勝負できる英語が(心理的)ハードルになっているようではダメです。

出来るようになるには「場慣れ」「回数をこなすこと」です。ガラパゴス日本で勉強して満を持してデビューするのではなく、まずは回数をこなすことを考えましょう。そういうことに予算をケチる企業にも、この世界での勝ち目は薄いです。

Bill Muir氏

基調講演をする新 CEO の Bill Muir氏

最後に新 CEOの Bill Muir氏ですが、本イベントの初日が在任 99日目だったとのことです。先般イタリアの REGGIANIでの BOLT発表会が丁度 30日目だったとのことで、まあここで所謂「最初の 100日」が経ったということになります。外から見ている限りでは、非常に卒なくそのポジションに馴染んで、きちんと役割行動をしているように見えます

会場で何人かの人に「どう思う?」と訊いてみたところ「前任の Guyのような思い入れとかパッションは感じない」という声も有ったのは事実です。「まあ、それは 19年も在任して、技術もよく理解し、この事業を自分の子供のように愛していた Guyと比べるもんじゃないよな」というコメントとセットでした。当面は、これだけのイベントを仕切れる強力なスタッフが育っているので大きな問題は生じず、真価を問われるのはこれからでしょう。

Guyも会場に来ていたのを目撃した人がいましたが、非常に目立たなく振舞い、自ら人前に出て「やあやあ、どうもどうも!」と旧知の友人に声を掛けることはなかったそうです。そこも流石ですね。

Guyが年に数回は日本に来て、日本企業のトップと親交を結ぶということをしていたように、いずれBillもそういうことを始めると思います。そこで各社のトップがどういう対応をするか(そもそも誰が主体となって、Billに向き合うのか)・・・そのあたりから EFIと日本の各社との新しい関係が決まっていくことでしょう。

いやあ、非常に楽しめて参考になったイベントでした。

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