- 2018-8-6
- イベント参加報告
インクジェットを軸に展示会を見ている私の視点からは、今回の目玉は「ボードなどのフラットメディアにプリントが出来るようになったラテックス機」だけだったので簡単に紹介して終わろうか・・・などとも考えましたが(笑)、日本メーカーに何かを感じてもらう意味もあって大量に写真をアップします。細かい話は他の情報源にお任せして、ここはフォトギャラリーとしてお楽しみ下さい。
銀塩写真のプリントは、ざっくり言えばスーパーマーケットなどに小型現像機を設置して、一時間くらいで同時プリントを仕上げる分散処理タイプのミニラボと、撮影済みのフィルムを集めて集中処理を行い、プリントを送り返すという集配ラボに別れていました。また、レベルの高い(広告向けなどの)商業写真はプロラボと呼ばれる、ハイレベルな現像所でプリントされていました。
ミニラボはノーリツ鋼機・富士フイルム・コニカミノルタなどが機器を開発・供給し、集配ラボ向け機器はアグファ・グレターク・コダックなどが供給、プロラボ向け機器で有名だったのは、今や産業用IJ機器の雄である、あのダースト(durst)でした。
恐らく、当時の INDIGO は、デジタル写真時代を見越して、集配ラボ向け高速プリンタとプロラボ向けのプリンタを目指したものと推察します。このPMAだったか、ドイツのフォトキナだったか、これも記憶がはっきりしませんが、当時の durst の社長だった Dr,Piock からコンタクトがあり「HP INDIGO が展示会で200台近い受注を取ったらしい」と危機感を持ち、写真画質のインクジェット機器開発への協力を求められたことがあります。
詳細は割愛しますが・・・受注内示は取ったものの、銀塩写真業界の「写真画質に対するこだわり・思い入れ」は非常に深いものがあり、結局は写真業界には受け入れられなかったようです。その後 HP INDIGO は写真を諦め、ラベル分野をターゲットに大きく舵を切って行きました。
インクジェットでも写真画質のプリンタ開発に、今にして思うと実に面白いチャレンジがなされましたが、それだけでかなりの物語になるので別の機会に譲ります。さて銀塩写真がほぼ絶滅し、所謂写真業界も往年の姿では無くなった今、改めてデジタル写真のプリントの需要が「フォトアルバム」という形で勃興してきました。一度は写真にチャレンジして挫折した INDIGO が、銀塩写真業界で「こんなものは写真とは言えない!」とのたまわっていた人達が居なくなった今、漸くフォトブックという形で復活してきた・・・そんなストーリーかなと思います。
■ ブランドオーナーへの営業
やはり、いつどこの展示会でも、HPのブースには圧倒されます。洗練されたスタイルもあり、プレゼンのトレーニングや、顧客のガイドの仕方もしっかりしてポリシーを感じます。斜に構える前に、日系企業には何故それが出来ないのかを、虚心坦懐に考えてみることは重要かと思います。
敢えて懸念を述べるならば・・・HPのインクジェットヘッドはサーマル方式で、またINDIGOは液体現像です。産業用に使われるインクジェットヘッドの主流はピエゾ方式であり、電子写真の主流は乾式トナーです。誤解を恐れず言い切ってしまえば、HPは「仲間の居ない、鬼っ子の技術」を極めて今日があるように見えます。仲間の居ない技術は、超長い目で見て生き残ることが出来るものなのでしょうか?
そのあたりに、独り勝ち状態の HP に対する対抗軸を立てるヒントがあるように思えてなりません。まあ、それと並行して「マーケティング」は HP にまだまだ見習うものが多いように思いますが・・・
終わり