延期された DRUPAに日本だけ参加できない?:DRUPAの延期とコロナウィルスの今後

既にご存知のように DRUPAと INTERPACKが来年春まで延期となりました。妥当な判断というか、この記事を書いている3月15日時点での欧州の状況に鑑みれば、これは必須だろうと思います。日本では公式にはまだオリンピックが予定通り云々と言われていますが、世界各国で予選会を開催できない状況は、もはや延期は確実と考えられます。コロナの今後について考えます。

新型ウィルスに対しては誰もが免疫を持っていません。だから新型なのです。これに感染し治癒すると、その人は免疫を獲得します。感染すれは100%発病するわけではなく、人によっては感染しても(免疫を持っていないにもかかわらず)発病しません。医者ではないので詳しいメカニズムは説明できませんが、基礎体力などと呼ばれるナニかなのでしょう・・・あ、こういう曖昧領域に付け込んで、変な民間療法や電磁波がどうとかいうアヤシイ商売があり得るのでご用心(笑)

感染して発症しても、薬がないので対症・緩和療法しかありません。幸いにして致死率は極端には高くはなさそうなので、基礎疾患のある人以外は治癒率は高いようです。治癒した人は免疫を獲得します。一時、治癒したのに再発したというケースが騒がれましたが、もしそれが事実なら感染症と免疫のメカニズムに関するこれまでの理論が根底から覆る可能性があるので騒がれたのです。今は検査の精度も高いとは言えないようで、基本的には治癒した人は免疫を獲得すると考えていいと思います。

人口の100%(全員)が感染してしまえばもはやそれ以上広がらず終息となります。ワクチンができると、未感染者に投与して、実質的に感染したのと同じように免疫を与えることになります。こうやって、母集団の多くの人達が免疫を獲得することを「集団免疫獲得(形成)」と言います。数式では下の様に表されますが、これだけで敬遠されそうなので数式無しで続けます。

全員(人口の100%)が感染・ワクチンによって集団免疫を獲得してしまえば、理屈の上では終息ですが、実際には(感染力やそのほかのパラメータにもよりますが)人口の60~80%が集団免疫を持てば実質的に終息状態となるというのが、最も単純な数理モデルです。もっと精緻・複雑化は可能ですが・・・理解するためのモデルはシンプルがいいです。

もうひとつの考慮点は「医療機関のキャパ」です。所詮、薬が無いので対症・緩和療法しか無いわけですが、重症者は自宅より入院の方が人工呼吸器や点滴による栄養補給が可能で、命が助かる可能性が高くなります。感染者が全員医療機関に殺到すると、所謂「医療崩壊」を起こして重症者が救えない事態を引き起こします。今のイタリアはそういう状況の様に見え、ドイツや周辺各国はそうならないように躍起になっているわけです。

医療崩壊を起こさないためには、基本的には2つの手段の併用です。ひとつは「感染者を一気に増やさない」、もうひとつは「感染しても軽症なら自宅療養してもらう」ことです。前者はイベントや集会の自粛、一斉休校、在宅勤務促進、国境の封鎖(入国拒否)などです。それぞれの効果のほどは議論の余地があります。

ここで勘違いしてはいけないのは、「感染者を一気に増やさない=イベントや集会の自粛、一斉休校、在宅勤務促進、国境の封鎖(入国拒否)など」は、医療崩壊対策にはなっていても、未感染者は未感染者のまま残ります。集団免疫形成の均衡点としての人口の60~80%の免疫獲得者に達するまでは終息しないわけですから、こちらをどうするかという問題が残ります。これは各国によって対応が異なっている様に見えます。

英国は、ジョンソン首相が「もっと多くの」家族が愛する人を失うことになると発言したり、政府首席科学顧問のパトリック・バランス氏が 13日のインタビューで、国内人口の6割が感染するかもしれないと警告するなど、事態を明確に国民に説明しています。

学校閉鎖も行わず、14日のラグビー欧州6カ国対抗戦 「シックスネーションズ」の試合など大規模なイベントが依然継続されているのはなぜかと問われると、「やめさせると言えば目を引くだろうが、実際には感染拡大に大きな影響はない。実際にスタジアムに行くよりも、パブなど人々が集まるところで観戦する方が感染の可能性が高いと考えている」と述べる・・・など、施策の意味づけも明快に説明しています。

その後、各方面からの批判(ジョンソン氏の物言いはデリカシーがないとか、他の欧州諸国と比べて対応が甘いとか・・・)で、若干の軌道修正はしましたが、基本は「早く60%は感染して治癒してもらう(多少の犠牲は止む無し、但し医療崩壊は起こさず重症者を救うことには努力する)」「長引いて冬まで続けば、また医療機関の繁忙期にぶつかる。医者が暇な夏にピークを持ってくるのがよい」と考えているようです。

ドイツでもメルケル首相が、ドイツの人口の60~70%は感染するだろう・・・と発言し、国民に大きなショックを与え、日本と同じくトイレットペーパーや食品の買いだめを引き越しましたが、やはり終息させるには国民の60~70%が感染するしかないとハッキリ説明し、連邦政府としての基本方針と施策を決めて説明し、その上で各州の首相に対応を任せています。ドイツは連邦国家なので、州ごとの休校期間などは州政府が判断します。

両国とも、中央政府が事態を明確に説明し、70%感染するまでは終息しないという到達点=戦略目標を明示し、医療崩壊を起こさないように遅延策を打ちながらも、経済支援施策を含めた戦術を説明しています。

対照的なのが、わが国の対応です。戦術としての諸施策はそれなりに打ち出しているように見えますが、肝心の「70%に達するまで感染は広がり続ける」こととか「それがいつ頃になるのか?いつ頃になるようにコントロールしようとしているのか?」などの戦略と時間軸をセットにしたグランドデザインについては言及を避け続けています。首相の記者会見を聞いていてもガッカリ感が漂うのはひとえにそこです(個人の感想です(笑))。

ただ、安倍首相がどうこうではなく、他のどの党の誰が首相だったとしてもあまり変わらなかったのではないかと考えられます。また4月には習近平氏の来訪予定があったことや、オリンピックへのコミットメントなど、単純にそういうのを無視して自国ファーストの大胆な施策がとり辛かったというのは割り引く必要あもあるでしょう。

しかし、欧州で予選会さえ開催できない現状では、オリンピックの延期はもう既定路線です。ここ数日でも欧州から帰国した人達がかなりの確率で陽性判定を受けている現状で、選手の他に大勢の役員を受け入れて「予定通り開催」なんてある筈がありません。強行しても、選手自ら出場拒否することも考えられます。そもそも、「7月までに終息宣言をこういうストラテジーで出す」ということを明言しない国にオリンピック代表団を送り出す国がどこにあるでしょうか?

もはや、習近平の来日も延期、オリンピックも延期しか選択肢は無いという、ここに至ってはハラを括って「終息へのグランドデザイン」を提示して、それを国民に明快に説明し、その上で各戦術施策の意味合いも説明しながら手を打っていく・・・これが求められているんだろうと思います。昨日の首相会見を見ていると(途中からチャンネル変えちゃいましたが(笑))、ジョンソン首相やメルケル首相の様に「国民に最悪・・・というか、最も起こりそうな事態=70が感染しないと終わらない」を明示することを恐れている様に見えます

米国とトランプ大統領・・・コメント不能です(笑)

日本は、そのグランドデザイン(いつ、どのように終息させようとしているのか?)を国民にだけでなく、海外にも発信をしていく必要があります。各国が、70%まで緩やかに、かつ夏ごろをピークとして国民に感染させて終息を狙っている中で、PCR検査数も極端に少なく「未感染者が多いまま=終息宣言ができない」・・・世界の鬼っ子として取り残されてしまう可能性があります。その時、延期された DRUPAに日本人だけ入国拒否という事態も起こり得ないことではないと思います。

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