- 2019-6-16
- イベント参加報告
繊維業界の所謂「川中」(布を裁断して衣服に仕上げる工程)の展示会です。Messe Frankfurtが運営し、ブラッセルとシカゴで交互開催される Label Expoと同様に、奇数年はドイツ(フランクフルト)、偶数年はアメリカ(アトランタ)と交互に開催されます。また Techtextileという「機能性繊維・布・衣服」(典型的には防炎・耐熱。遮熱などの機能を持つ消防服など)展示会とセットになっています。
基本の主役は何といっても縫製を担うミシンと前工程としての裁断機ですが、近年はデジタル化が急速に進み「3Dボディスキャナーによる立体採寸、デザインCADによる仕上がりのシミュレーションと型紙データへの平面展開、そのデジタルデータを送って裁断、縫製」と、統合されたシステム・ソフトが前面に出てきています。
本来的にはこの動画のような「ミシンショー」的な展示会であり、ミシン業界のプレーヤーや、その前工程としての裁断機のメーカー、加飾としての刺繍機などが並んでいます。
↓↓クリックするとスライドショーになります。
近年は裁断(型紙)データのデジタル化から、3Dボティスキャナー、生地のデータベース化、デザインソフト、シミュレーション、遠隔地を繋いでのデザイン決定・・・など、あらゆるものが繋がっていく大きなトレンドがあります。ただ、どちらかというとデザインCADが中心にあって、布のデザインは所与のもの、また縫製までは繋がりが薄いように見えます。
さて、そういった性格の展示会に登場したのが「DTMF:Digital Textile Micro Factory」という概念。まずは下のの動画をご覧ください。
動画でお分かりの様に、3Dデザインからその平面展開、プリント、定着、カット、そして縫製へと一連の工程がシームレスに繋がっている様子がわかります。大量生産が宿命の織物ではなく、プリントはカスタマイズが可能なので一貫工程に取り込むハードルが低いと見えます。
また、この考え方は「スポーツアパレル分野」ではかなり浸透してきているようですが、ファッション業界の人が集まるこういう展示会でも提案され始めていることは注目に値すると思います。
↓↓クリックするとスライドショーになります。
↑↑ 現段階のファッション業界で「デジタルファッション」といっても、その意味するところは、デザインソフト周辺のことであり、そこに絡むプレーヤーの中にはプリンターメーカーいません。
このサイトを見て頂いている方は、概ね印刷・プリントに関係していると想定しています。インクジェットで捺染(テキスタイルプリント)をと考えている方も多いと想像します・・・という私も含めて、そういう視点でテキスタイルの世界を見ると、どうしても「プリント」をクローズアップしがちです。
しかし、現実にはテキスタイルの世界で「プリント柄」はマイナーなポジションで、せいぜい全体の 10%程度と推計され、主流は「織物」や「無地染め」と思われます。実際の繊維産業で流通しているものは「織物」や「無地染め」の布、あるいはニット(編み物)で作られたアイテムなのです。
そういうものが主流で流通している「繊維産業の産業構造」が、たかだか10%しかないプリントが、一貫生産で(DTMF化して)出来るようになっても、インパクトは限定的で、それだけでは産業構造が変わるようなパワーを持ちえないだろうと思われます。
それよりもむしろ「ネットインフラ」による流通が、実店舗での流通を前提としていた繊維の産業構造(サプライチェーン)に与えるインパクトの方が余程大きいと想像されます。そして、その流れの中で、ネットインフラと相性のいい「DTMF」が力を得ていく・・・そういう流れの様に思えます。
【その他の話題】
リコーが絡んでいる「刺繍糸のオンデマンド染色」を推進するスエーデンのベンチャー Coloreelのブースを発見。