- 2026-6-14
- イベント参加報告
Interpack速報(6):デジタルプリント関連(2)Hall8aからの続きです
我々の関心のあるインクジェットによる包材印刷の出展社は Hall8a/8bに集中していました。ここまでに紹介できていないデジタルプリント関連各社のブースをアップしておきます。
Geminiや ChatGPTで後付けでも調べてみると「ああ、そういうことをやっていたのか」というのが分かって非常に役に立ちます。
インターパックでXEROXとJensenがコラボをしていました。あれはどういうシステムなのでしょうか?
世界最大級の包装機械・資材の展示会「インターパック(interpack)」で展開されたXEROXとJensen(Team Jansen)のコラボレーションは、「ERPデータから直接、顧客ごとの個別仕様(パーソナライズ)されたパッケージを自動印刷・製造するデジタル・ワークフロー・システム」です。
このシステムは、以下のような仕組みで機能しています:
- ERP連携と自動化: 顧客データや商品データを持つ企業の「ERPシステム」と印刷システムを直接連携させます。
- バリアブル印刷(可変印刷): Xeroxの高性能なデジタルプロダクション印刷機と、XMPieのデータ駆動型ソフトウェアを使用します。これにより、パッケージごとに異なる言語、名前、企業ロゴ、個別QRコードをリアルタイムに印字できます。
- Team Jansenのインテグレーション: ドイツ最大のXeroxパートナーである「Jansen GmbH & Co.KG」が、システム全体のアーキテクト(設計・構築)を担当しています。
要するに、手作業での版の作成やデータの打ち替えといった手間をなくし、受注データに基づいて多品種・小ロットのパッケージを工業レベルで素早く製造可能にする革新的な仕組みです。
展示していたのは蜂蜜のラベルでしたがどういうことが可能なのでしょう?
インターパックで展示された蜂蜜のラベル(ドイツ養蜂協会:Deutscher Imkerbundの「Echter Deutscher Honig」がモデル)の実演では、「データと印刷技術が直結することで、従来のラベル印刷では不可能だった高度な個別最適化」が可能になることを示しています。
具体的には、以下のような画期的な運用が可能になります。
1. 養蜂家(生産者)ごとの超小ロット・多品種印刷
従来の印刷では、数千枚・数万枚単位で同じデザインのラベルを刷るのが一般的でした。このシステムでは、4万人以上いる個々の養蜂家の名前、住所、特定の蜂蜜の種類(アカシア、レンゲなど)、採取日、個別のロット番号を、データを切り替えるだけで1枚ずつ異なる内容で連続印刷できます。在庫リスクがゼロになり、必要な時に必要な分だけ(極端には1枚からでも)低コストで製造可能です。
2. コネクテッド・パッケージング(QRコードによる顧客体験)
ラベルに1枚ずつ異なるパーソナライズされたQRコードを印刷できます。消費者がスマートフォンでスキャンすると、以下のような「オムニチャネル体験」に繋がります。
- その蜂蜜が「どこの養蜂場の、どの巣箱から、いつ採れたか」というトレーサビリティ(生産履歴)の表示
- 養蜂家のメッセージ動画や、その蜂蜜に合うレシピの紹介
- リピート購入のための専用ECサイトへのダイレクトな誘導
3. 特殊トナーによる「偽造防止」と「高級感の演出」
展示では5色対応のデジタル印刷機(Xerox Proficioなど)が使用されました。
- クリアグロス(透明ニス): ラベルの一部を立体的に光らせ、高級感を演出します。
- マイクロテキスト(微小文字): 肉眼では見えないほど小さな文字を埋め込みます。これにより、市場に出回る安価な偽物(偽装蜂蜜)と本物を一瞬で見分ける強力なセキリティ(偽造防止機能)を持たせることができます。
4. 注文からカットまで「完全ノータッチ」の自動化
Webブラウザから蜂蜜の情報を入力すると、システム(XMPieやFreeFlow Core)が自動でデザインデータを生成します。それがそのまま印刷され、最後はカッティングマシン(Morgana ColorCutなど)と連動して自動でラベルの形に切り抜かれます。印刷の専門知識や手作業の調整(面付けなど)が一切不要で、データを入れてから数分で完成品が出来上がります。
このように、ただの「綺麗に印刷されたシール」ではなく、「データキャリア(情報媒体)としてのインテリジェントなラベル」を、誰でも簡単に、必要な分だけ瞬時に作れるのがこのコラボシステムの凄さです。
今回のInterpackでブラザー傘下の DOMINOにはなにか見るべき新製品・新技術はありましたか?
世界最大級の包装機械・資材展示会「Interpack 2026」において、ブラザー工業傘下の英ドミノ・プリンティング・サイエンシズ(Domino)は、2Dコードへの移行、インテリジェントな自動化、サステナビリティを軸に強力な新製品や新技術を出展し、高い注目を集めました。
今回、ドミノ社のブースで特に見るべきだった重要な新製品および新技術は以下の通りです。
1. 新製品:Ux360i(UVレーザーマーカー)
- 特徴: 新たに開発された高性能なUVレーザーシステムです。
- メリット: 従来のレーザーでは印字が難しかったリサイクル性の高い新素材や薄型フィルムに対して、熱によるダメージを抑えつつ、高コントラストで非常に鮮明な2Dコードやテキストを印字できます。
2. 新製品:Gxシリーズ PRO(サーマルインクジェットプリンター用プリントヘッド)
- 特徴: 2Dコードの大量・高速印字に最適化された新しいプリントヘッドです。
- メリット: 生産ラインの稼働効率を落とすことなく、医薬品や食品パッケージへの高解像度なトレーサビリティ印字(GS1準拠)を安定して行えます。
3. 新技術:GS1デジタルリンク/2Dコード移行へのトータルソリューション
- 背景: 小売業界で従来の1次元バーコードから2Dコード(QRコード等)への世界的な移行(Sunrise 2027など)が進んでいます。
- 展示内容: ドミノは単にコードを「印刷する」だけでなく、サプライチェーンの効率化、食品廃棄物の削減(ダイナミックプライシング対応)、消費者のスマートフォン連携(アレルギー情報など)までを視野に入れた「コネクテッド・パッケージング」の統合ワークフローを提案しました。
- 自動化と検証: コードの印字ミスを自動で検知・検証し、生産ラインでの廃棄やダウンタイムをゼロに近づける「インテリジェント自動化」技術(Journey to Zero)を披露しました。
LINX,VIDEOJETはかつてはDanaher傘下でしたが最近独立したのですか?かつてDanaherは「買った会社は手放さない}と豪語していました。なぜでしょう?
産業用プリンタ・マーキング分野の主要ブランドである Videojet(ビデオジェット)および Linx(リンクス)は、2023年9月にダナハーから「分社化(スピンオフ)」という形で独立しました。
現在は、ダナハーから独立した環境・応用技術分野の総合企業グループ Veralto(ヴェラルト)コーポレーション の一員としてニューヨーク証券取引所(NYSE: VLTO)に上場しています。
かつて「買った会社は手放さない(永続保有)」を理想としていたダナハーが、なぜこのような変化を遂げたのか、その理由を3つの背景から解説します。
1. ダナハーのビジネスモデルが「ヘルスケア特化」へシフトした
かつてのダナハーは、工具、産業機械、計測器など多岐にわたる製造業の会社を買収し、独自の経営改善手法「DBS(ダナハー・ビジネス・システム)」を注入して高収益化させる複合企業(コングロマリット)でした。
しかし、近年ダナハーは「ライフサイエンス・医療診断」など、人間の健康(ヒューマンヘルス)に直結する超高成長・高利益率分野への集中を進めています。
- 売却ではなくスピンオフ:VideojetやLinxが属していた環境・製品識別部門(水質検査や産業用印字など)は非常に優良で安定した黒字事業でした。そのため、他社にバラバラに「売却」するのではなく、一つの独立した上場企業(Veralto)として丸ごと切り離す(スピンオフ)手法がとられました。これにより、既存のダナハー株主にはVeraltoの株式が割り当てられ、価値が損なわれないように配慮されました。
2. 「コングロマリット・ディスカウント」の解消
株式市場では、一つの企業が関連性の薄い多様な事業を抱えすぎると、全体の企業価値が実態より低く評価される「コングロマリット・ディスカウント」が起きやすくなります。
- 投資家の明確化:「医療・バイオテクノロジーに投資したい人」と「安定した産業インフラ(水質や印字)に投資したい人」では求める性質が異なります。
- それぞれの最適化:会社を分けることで、ダナハーはバイオ医薬品関連の大型買収に資金を集中できるようになり、独立したVeraltoも独自の戦略で投資を行えるようになりました。
3. かつて「手放さない」と言えた理由と、現在の「新・ダナハー流」
ダナハーが黎明期から成長期にかけて「買った会社は売らない」と豪語していたのには、当時の明確な強みがあったからです。
- 当時の理由(DBSの絶対的自信):一般的なPE(プライベート・エキティ)ファンドは、会社を買ってコストカットし、数年で転売して利益を得ます。しかしダナハーは、買った会社に「DBS(トヨタ生産方式をベースにした改善手法)」を導入し、数十年かけて事業そのものを強くし続ける長期保有モデルをとっていました。これが他社との差別化であり、買収される側からも「転売されずに大切に育ててもらえる」と信頼される武器だったのです。
- 現在の基準(ポートフォリオの代謝):しかし、時代とともに「企業の永続性」よりも「資本効率と市場の成長スピード」が重視されるようになりました。現在のダナハーは「DBSで企業を強くする」という根本は変えていないものの、「より市場成長率が高く、利益率の高いプラットフォーム(医療・科学技術)へグループ全体をトランスフォーメーション(代謝)させる」というステージにシフトしています。
補足:過去の主な大型スピンオフ
ダナハーはVideojet(Veralto)以外にも、過去に同様の優良部門の独立を行っています。
- 2016年:産業用計測器や工具などの伝統的製造業部門を Fortive(フォーティブ) としてスピンオフ。
- 2019年:歯科医療部門を Envista(エンビスタ) としてスピンオフ。
- 2023年:水質管理・製品識別部門を Veralto(ヴェラルト) としてスピンオフ。
結果として、現在のダナハーは純粋な「ライフサイエンス&診断」のピュアプレイ(専業)企業へと生まれ変わっています。VideojetやLinxはダナハーに見捨てられたわけではなく、ダナハーのDNA(DBS)を引き継いだまま、よりふさわしい独自の成長ステージへと送り出されたというのが正確な背景です。






























