- 2023-4-6
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今日、2023年 4月7日はキリスト教圏では「イースター(復活祭 英:Easter 独:Ostern)の受難の金曜日(独:Karfreitag カールフライターク)」という休日です。明日は通常の土曜日で店も開いていますが、明後日は復活の日曜日、更にその翌日は復活の月曜日(独:Ostern Montag)として一部の国では休日となります。イースターではウサギや卵がシンボルで、ウサギの形をしたチョコレートや、カラフルに塗られた卵などが町に出回ります。
そしてこの時期、町の大きな教会ではバッハのマタイ受難曲が演奏されるのが定番です。Wikipediaによると「マタイ受難曲 (Matthäus-Passion) は新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にし、聖句、伴奏付きレチタティーヴォ、アリア、コラールによって構成された音楽作品である」とあります。英語でも St Matthew Passionと呼ばれ、いずれにも Passionという単語が使われています。
この Passionに関し、前職でインクジェット事業部長を拝命していた時代に、会社で6つの行動指針の標語を定めた際に、それについて自分の想いを記した文書があるのでご紹介します。この時期、新入社員の皆さんや、自分のミッション(使命)について改めて考えてみたい皆さんの参考になれば幸いです。
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●インクジェット事業部のミッション
当事業部は「インクジェットで産業革命を起こす! Cause the industrial revolution with inkjet!」をミッションとして掲げ、ここまでやってきました。何のために自分は存在するのか?何のために働くのか?自分の仕事にどんな意味があるのか?それを腑に落とすことが、個人として、集団としてブレることなく、迷うことなく強くあるための前提だと思うからです。これがミッションです。
新入社員にもいつも言います。「会社に入って与えられる仕事は、小さな部品の図面描きや、毎日同じような実験の繰り返しや、お客さんのクレームの対応など、凡そ学生の頃に想像していた仕事のイメージとはかけ離れていて、自分はいったい何をしているんだろう・・と、立ち位置を見失うことがあるかも知れません。そんな時には『自分はインクジェットで産業革命を起こすことに加わっているんだ』と唱えてみてください。我に返ることが出来るでしょう。それがミッションを腑に落とすということなのです」と。
●6Values
さて新たに掲げられた当社の6Valuesは、改めてこのように言葉にしてみると、このミッションを胸に秘め、ここまで事業が歩いてきた道程の指針として実によくフィットしていることに気が付きます。「これは当事業部の理念として最初から存在していた」と言い切ってもいいくらいです。
Open & Honest:オープンに誠実にお客様や仲間達に向き合わずして我々のインクジェット事業の成功は有ったでしょうか?
Customer-Centric:お客様を中心に考えずして、今日のインクジェット事業は有り得たでしょうか?
Innovative:我々の製品や事業の進め方がそうでなくて、新しい事業が起こせたでしょうか?
Inclusive & Collaborative:お客様や仲間たちと肩を組んで協力せずして、今日まで来れたでしょうか?
Accountable:苦しくてもやり抜いて来たからこそ、インクジェット事業の今日があるんですよね?
これまで、こういう言葉に「見える化」していなかった理念を言葉にしてみると、「なんと、これを愚直にやって来たんだね!」と改めて腑に落ちる思いです。
●Passionate とは?
さて6番目のこの言葉には特別な思い入れがあります。日本語で「情熱」と訳されることが多い Passion ですが、バッハのマタイ受難曲も Matthäus-Passion(マテウス・パシォーン)が原題ですし、受動・受け身を意味する passive(パッシブ)とも同じ語源です。何故、「情熱」が「受け身」や「受難」と繋がるのでしょうか?
やや難しいことを言いますが、東洋哲学に「陽と陰」がある様に、西洋哲学にも二項対立という概念があり、「善 vs 悪」・「理性・意志 vs 感覚・感情」・「ロゴス vs パトス」・「能動 vs 受動」などが対応関係にあり、いずれも前者がポジティブ概念で、後者はネガティブ概念に属します。
「理性や意志は自分から能動的に働きかけ他を支配していくというポジティブな側にある」のに対し、「感情は、他からの働きかけによって受動的に湧き上がってくるもので、他から支配されるネガティブな側にある」とされたのです。誤解を恐れず言い切ってしまえば、抑圧され支配され受け身なサイドに湧きがって来る感情が「Passion」なのです。本来はネガティブワードだったのです。
しかし、私はこれを「困難・苦難・受難があるからこそ Passion 情熱が湧き上って来るんだ」と捉えます。新規事業は困難・苦難・受難の連続です。市場も見えず、技術も未熟で、先行者は強く、我が戦力は貧弱。こんな逆境の下で「俺達のやろうとしていることは世の中に革命をもたらす偉大な仕事なんだ!ミッションを全うするまで、こんなことに負けるもんか!」と沸々と湧き上って来る感情、これが Passionだと思うのです。こうして私の中で、当事業部のミッションと当社の標語の6Values が結びついて完結します。
困難・苦難・受難は、新規事業だけに限らず、既存事業にもそれは付き物でしょう。甘い事業などありません。ここで改めて自分の関わる事業や業務と、自分自身のミッションに思いを致し、それを全うする上で降りかかる困難・苦難・受難を克服するぞと、熱い情熱を湧き上らせていこうではありませんか!