富士フイルム:ひとつの時代の終わり End of an era at Fujifilm

富士フイルムの古森重隆氏(81歳)が、富士フイルムホールディングス株式会社とその子会社である富士フイルム株式会社の代表取締役会長兼CEOを退任し、富士フイルムの一時代の終わりを告げるとともに、新たな経営陣への道を開き、会社を再編成する機会を得ました。

古森重隆氏は、富士フイルムのフィルムからデジタルイメージングやヘルスケアへの移行を推進しました

これまで社長兼COOだった助野健二氏は会長に就任し、後藤禎一氏はメディカル部門を担当する取締役から社長兼 CEOに昇格します。これらの変更はすべて 3月 31日の取締役会で可決されましたが、次回 6月に開催される株主総会での議決が必要となります。

また、9月に 82歳を迎える古森氏は、最高顧問として新たな役割を担います。古森氏は 1963年に入社、2000年から代表取締役社長として富士フイルムを率い、富士ゼロックス事業における富士フイルムのシェアを大幅に拡大し、最終的に合弁会社の 75%を保有するまでになりました。しかし、ゼロックスとの合併案は実現せず、富士フイルムは富士ゼロックス(後に富士フイルム・ビジネス・イノベーションに改称)の100%を保有することになりましたが、米国市場への重要なアクセスや技術共有契約は終了しています。

しかし、古森氏は富士フイルムのビジネスを多角化するために多くの企業を買収し、富士フイルムが中核製品である写真フィルムからデジタルへの移行を乗り切ることを可能にしました。そのリストには、2004年にアーチケミカルズのマイクロ電子材料事業(現在の富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ)、2005年にセリコールグループ(現在の富士フイルムスペシャリティインクシステムズ)、2006年にアヴェシア・インクジェット・リミテッド(現在の富士フイルム・イメージング・カラーラント)、2006年にプリントヘッドメーカーのダイマティックス(現在の富士フイルム・ダイマティックス)が含まれます。在任期間中、富士フイルムは医療・医薬関連の企業を数多く買収し、最近では日立の診断用画像処理事業も買収しました。結果的に、古森氏が遺したものは、コダックをはじめとするフィルム時代のライバル企業よりも、富士フイルムがはるかに強い立場にあることだといえるでしょう。

経営陣の交代は、富士フイルム内の幅広い変化を反映しているようです。富士フイルムは現在、3つの主要部門に再編成されています。4月1日からのヘルスケア部門、4月1日からのイメージング部門、7月1日からのグラフィックス部門です。このうち、ヘルスケア部門は、少なくとも当面の富士フイルムの成長の主な原動力となると考えられます。この部門は、主に診断用機器であるメディカルシステムと、積極的に提携や買収を行う新しいライフサイエンス戦略で構成されており、最先端の医療を創造することでライフサイエンス業界のリーダーになることを目標としています。

(■ 註:原文では話をシンプルにするために、3つの部門に集約されるような表現となっていますが、実際にはこの3部門に関連する事業が成長を加速するために3部門に再編されたもので、これ以外の事業部門、例えば液晶ディスプレイフィルムを扱う高機能材料事業や半導体向けフォトレジスト等を扱うエレクトリックマテリアル事業等々はもちろん存続します。)

富士フイルムの「Covid-19 AG Test」は、写真現像のハロゲン化銀技術を利用している。

富士フイルムは先週、SARSの Cov-2に関連する抗原を検出できる「Covid-19 AGテスト」を発表しました。このキットは、写真現像のハロゲン化銀増幅技術を応用した高感度検出技術を用いて開発されたもので、体外診断用医療機器として販売される予定です。この検査キットは、同梱のカートリッジにサンプルを入れて、その場で目視により結果を確認できるため、追加の機器を必要としません。

フォトイメージングプロダクツ事業部とオプティカルデバイス&エレクトロニックイメージングプロダクツ事業部を統合し、イメージングデバイスからフォトプリントシステムやサービスまで、新たな製品・サービスの開発につながると考え、イメージング事業部を新設しました。フォトイメージング事業部は、インスタントフィルムやデジタルカメラ、テレビ放送用カメラのレンズなど、幅広い分野をカバーしています。

グラフィックス事業部は、富士ゼロックスを FBI(富士フイルムビジネスイノベーション)という新しい名称に改称し、既存のグラフィックスシステム事業に統合させて設立されます。これは本当に唯一の選択肢であり、富士フイルムは昨年、2021年 3月 31日に期限が満了したゼロックスとの技術およびブランドライセンスを含む技術契約を更新しないことを発表した際に、すでに示唆していたものです。これがどのような結果になるかは、時間が解決してくれることでしょう…。

(■ 註:ここも補足しておきますが、既存のグラフィックスシステム事業が、旧富士ゼロックスを丸ごと呑み込んで統合するということではありません。旧富士ゼロックスの3事業部門、「 (1) 主力のオフィスプリンター事業」「 (2) プロダクションサービス事業(グラフィックコミュニケーションサービス事業部) 」「 (3) ソリューションサービス」の内、(2)を富士フイルムのグラフィックスシステム事業に 7月 1日付で統合するということです。ここはオフィス向けではなく印刷会社向けを中心としたPOD機や連帳機 (トナーベースとインクジェット双方) を担いで活動しているので、今後は One Faceでアプローチすることになります。(1)と(3)はそのまま富士フイルム・ビジネスイノベーションに残ります)

それまでの間は、fujifilm.comでより多くの情報を得ることができます。

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