JIBC2020 参加者のアンケートから

先般の、日本で初めての試みとしての「ビジネス指向のインクジェットコンファレンス JIBC2020」は、お陰様で大盛況・大好評でした。次回に繋げ、更に内容や運営を改善するために、参加者の皆様にアンケートをお願いしました。計数評価ではなく、文章でコメントをお願いしたので読みこなすのに時間を要しましたが、次回に向けての改善ポイントなどが浮かびあがってきました。しかし、SNSのバズワードのトレンド分析に使われる AIなどを活用できれば簡単なんだろうなあ(笑)

お願いしたコメントは「1.全般感想」「2.よかった講演(いくつでも)」「3.イマイチだった講演(いくつでも)」「4.改善要望」「5.期待する講演テーマ」「6.自由記述」の6つの切り口です。

【1.全般感想】

★ 全般に大変好意的なコメントが多く、やってよかったと意を強くしたところです。
★ 海外も含め、これだけ大勢で多様なインクジェット関係者が集まる機会は今まで無かったので、改めて業界の拡がりと繋がりを感じたという意見がありました。

★ また、ネットワーキングが一番刺激的だったというご意見もあり「それが実は一番大きな狙いだったんです!」と、これも意図が通じたと大変嬉しいコメントでした
★ 大野の最初の挨拶の中で「井の中の蛙を脱却しよう」のは耳が痛かったというコメントがありました。日本という「世界のガラパゴス」のなかで、更に「自社の中だけに閉じ籠って、コミュニティに背を向ける」・・・それでは世界に通じないことを痛感し、逆にこういう場に出てきてよかった・・・一番うれしいコメントの一つでした。

【2.よかった講演】

★ 参加者の大部分が日本人だったこともあり、日本人4名には多くの票が集まりました。
★ 石倉さん(京セラ・ドイツ):コンファレンスでここまで明快に話をしてくれる人をこれまで見たことが無い。話も面白く、京セラヘッドの設計思想がよく理解できたと好評でした。MEMSの経済性に疑問を呈し、バルクピエゾを極めるという考え方と、その対極にあるセイコーエプソンや富士DIMATIXとで、是非公開討論をやって欲しいという要望もありました。

★ 山下さん(東洋インキ・フランス):従来印刷向けインクとインクジェットの両方を手掛けている立場から、メタメリズムという現実的な問題に対する解を示したことに高い評価がつけられました。

★ 堂前さん(iPrint・スイス):企業からの受託案件が多いとのことで「個別内容の詳細開示がなされなかったのは残念」という声はありましたが、なによりキャラが立っていて話が面白く、大いに刺激になったという技術屋さんの声が多かったです。

★ 細畠さん(KNF・日本):ポンプという、あまり目だない部品と思われがちですが、その技術とダイヤフラムの利点、課題の克服を非常に明快に説明され、「目から鱗」という声が数多く集まりました。細畠さんのプレゼンは「いまさら訊けないシリーズ」でも好評です。

Shin Ishikura, manager of Kyocera’s Inkjet Design Centre.

Kazuya Yamashita, director at Tokyo Ink Europe Speciality Chemicals.

Yoshinori Domae, academic associate and scientific officer for iPrint Institute

Nobuhiko Hosobata, sales manager for KNF Japan.

Paddy O’Hara, director of business development for Industrial InkJet.

Martin Schoeppler, CEO and president of Fujifilm Dimatix

Debbie Thorp, business development director for Global Inkjet Systems.

★ 一番票を集めたのは、英国 IIJ社の Paddy O’Hara氏でした。「KISS = Keep Inkjet System Simple」という極めてシンプルなメッセージながら、そこに至るまでに数々の試行錯誤を重ねただろうことが滲みでていたと評価が高かったです。加えて、英語が分かり易く、通訳が翻訳し易かったということもプラスに働いたと思います。このあたり逆も真なり・・・自分がプレゼンする際にも気を付けなければと思いました。

★ 富士DIMATIXの Martin Scjoeppler社長、GISの Debbie Thorp女史にも票が集まりました。また Nessanの講演は、ちょっと網羅的だったのと、現行を読み上げたのは多少マイナスでしたが、逆に広く網羅的にトピックスを取り上げた点は評価され票が集まりました。

★ 複数回答オーケーとしたので、一票も入らなかった講演者が無かったというのも、いいことかと思います

【3.イマイチだった講演(いくつでも)】

★ 殆どが「特になし」「(ブランク)」回答でした。
★ LANDAの Michael Mogridge氏がキャンセルとなったのは「残念」という声があった一方で、日本の代理人である digジャパンの有賀さんが日本語で丁寧に話をされたのが良かった、もう一度話を聞きたいという声が複数ありました。

【4.改善要望】

★ 最も多かったのは「会場」絡みの点でした:「やや狭かった」・「テーブルは3人でなく2人掛けくらいがよい」・「クロークが欲しい」・「スクリーンが一つで、かつ低いので後ろから見辛かった」等々。
■ なにぶん今回が初めての試みで、どのくらい集客が見込めるか未知数だったこと、場所のスタディ不足であまり多くの選択肢がありませんでした。蓋を開けてみると12月半ばには想定定員に達してしまい、急遽会場サイドと相談して3人掛け/テーブルとしたのですが、結果としてそれが「狭い」ということになってしまいました。次回はもっとゆったりしたスペースを確保し、スクリーンも複数設置など改善したいと思います。

★ 次に「運営:絡みのコメント:「資料は事前にプリントして配布して欲しい。事前スタディができるし、メモが書き込める。」
■ これは理解できます。一方で、講演者サイドからは「事前に配布すると、日本人はうつむいて資料ばかり見て、話をしている自分の方を見ない」と不評だったりします。また、海外の講演者はプレゼン資料の締め切りを守りません。今回、期限を守ってくれたのは日本人4人とドイツ人2人だけです(笑)。次回からはなんらか工夫したいと思いますが、一般に海外の講演者は「話を聞いて感動して欲しい」というのがあり、手の内を事前にばらしたくないという考えもあるのです。余談ですが、今回も「日本人は話を真剣に聞くのはいいが、顔色ひとつ変えずじっと無表情なのが不気味(笑)」という講演者もいました。ジョークを言ったら笑って欲しいのです。すべった!と思った講演者は複数いたようです(笑)
■ 通訳:今回お願いしたのは、キーポイント・インテリジェンスや WTINのデジタルテキスタイル・コンファレンスなどでも使っている通訳さん達で、少なくともインクジェットやデジタルプリントに関しての件数は一番数多くこなしている人達です。講演者サイドの問題・・・「話すスピードが速すぎ」・「通訳を意識せず切れ目なく喋る」・「エンジンがかかってくると自己陶酔的にしゃべる(笑)」・「事前勉強のためにプレゼン資料は早めに送ってと依頼しても当日持ち込む」なども並行して改善していく必要があると思います。

★ また「タイムマネジメント」の課題:「1.5日であれだけ詰め込むのは多過ぎ、丸2日にしても短いくらい」・「質疑応答の時間がなかった」・「パネルディスカッションが時間の問題でカットされたのは残念」・「コーヒーブレークはもう少し頻度を多く」等々・・・
■ 日本人は一般に「忙しい、忙しい」というのがステイタスと考えている向きが多く(笑)、丸二日コンファレンスに出席というのは荷が重いかなと考えた次第です。1日目が午後からなら、関東圏の企業なら朝一で職場に顔を出して「アリバイを作ってから(笑)」来ることができるし、関西圏からは前泊しないで済む・・・そんなことを考えました。結果としてやはりタイトでしたね。海外では3日に亘ることもあります。まあ、最終日の午後はフライトの関係でガラガラですが(笑)いずれにしても、次回からもう少しゆったりした運営を考えます。皆さんも丸3日くらい会社を空けるくらいの覚悟でご参加ください(笑)
■ また、日本人は講演後に「質問ありますか?」というところで、待ってましたとばかりに手を上げる人はかなり少数派で、微妙な空白の時間が流れます。今回はそもそも時間がタイトだったので、そこもスキップしたり、大野が突っ込みを入れたりした次第です。次回は事前に訊きたいことを募集するとか、アプリを使って質問を募集するとかの工夫もしたいと思います。

【5.期待する講演テーマ】

★ これは、参加者のバックグラウンドによってさまざまでした。そのなかでも多かったのは「バイオ・ハイテク・3Dプリンティング・その他、現在の印刷置き換え以外の新しい分野についてのテーマを希望」・「メーカーサイドばかりでなく、ユーザーサイドからも講演して欲しい」・「もっと専門的な内容を希望(あるいはその逆も)」・「テーマ別に2複数トラックでもいいのでは?」・「いまさら訊けないシリーズを正に期待」・「パネルディスカッションを是非」・「バルクピエゾvs薄膜」などなど・・・いろいろヒントを頂きました。

【6.自由記述】

★ 「価格は妥当だった」・「福袋を買ったら、価格以上のものが入っていて得をした感じ」・・・無償や低価格のコンファレンスとは一線を画したつもりなので、こういう評価は大変嬉しいです。

★ 「団体割引価格があるともっと若手も参加し易くなる」というご意見もありました。これはキャパを増やした際に実現したいと思います。

★ 一方「満杯という状況下なのに、一部の大企業の参加者が多かった」という声もありました。これは私一人では所詮すべてに対応できないのは明らかなので、何人かのボランティアをお願いした結果です。例えば今回のパンフレットは私の前職コニカミノルタの「印刷価値共創チーム」にお願いしましたし(お世辞抜きで素晴らしい出来栄え!)、会場の運営裏方をオフィスが近い富士フイルムの方にもお願いしたりもしました。その分何名かを招待した結果です。ご了解いただきたく思います。

★ テーブルトップ展示はよかった。普段はあれだけの多様な分野を一堂に会しては観ることができない。テーブルトップのプレゼンは初日にやってくれたほうが、その後しっかり話ができる。
★ 「弁当ではなく、ランチも立食にした方がネットワーキングの時間が増えていい。」・「コーヒーブレークにはコーヒーの他にスイーツが欲しかった(笑)」

★ ネットワーキングレセプションは全般に好評でした。あれこそが価値!との絶賛もありました。また、外人さんだけ集まる傾向があったので話しに行き難かったという声も・・・海外では「日本人だけ集まって」とよくいわれますが、やはりアウェイになると言葉が通じる仲間で集まりたくなるのは日本人だけではないようです。事前に名簿を配布したのも好評でした。コンプライアンスに関して意味もなく神経質な企業では無理でしょうけど・・・。

以上、様々な有益なご意見を頂きました。なかなか一気に全部とはいかないかと思いますが、可能な限り次回に反映していきたいと思います。よりよい会場のご提案なども歓迎いたします。

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