Labelexpo 2019 (9.24~9.27):ブラッセル(8)纏め

あまり時間が経ってしまわないうちに、私なりに纏めを書いておこうと思います。纏めというより、「気づき」ということになりますが・・・

■ 今回、自分なりに最も「そういうことかな」と腑に落ちたのは「ハイブリッド」が市民権を得つつあるのでないかということです。

アナログ技術の経験の無いインクジェット技術サイドからは、インクジェットによる「フルデジタル」を指向するしかありません。典型的には EPSON、SCREEN、DOMINOなどはインクジェット技術のみで、フルデジタルのラベルプリンタを開発・市場に投入し、そこそこ認知度が高まってきています。

一方、これまでラベルの印刷技術はフレキソが主流(日本は例外的にレタープレス)でしたが、フレキソ印刷機メーカーもデジタル化の波に対応せざるを得なくなってきている状況の中で、その対応方法として初期にはフルデジタルを指向したものの、最近はフレキソとインクジェットのハイブリッドが勢いを得ているように見えます。

フレキソ印刷機メーカーが自力でフルデジタルを指向した場合、そもそもデジタルで勝負しているメーカーとどこで差別化して勝負するのか?という点が課題になります。一方で、デジタルも上の写真のような「プリントエンジン」を供給するメーカーも力をつけてきています。このメーカー(Industrial Inkjet Ltd.)は、既に設置済みのフレキソマシンに「後付け(Retro-fit)」でプリントエンジンを取り付け、可変データの追い刷りからスタートし、カラーの可変画像もできるレベルになっています。これをフレキソ印刷機メーカー(FOCUS)が取り込んで、自らのフレキソ印刷機に組み込んだという訳です。

また、この流れの背景には、こちらで述べられている経済性の認識の高まりがあると思われます。

他にも、DURSTや DOMINOなど、インクジェットプリンタメーカーのインクジェット部分を取り込んだ事例がなど見られます。統合度合いの差はあるものの、プレキソ印刷機とインクジェットのハイブリッドの事例、及びプリントエンジンの事例を下記に画像でアップします。

 

 

■ 更に、この流れで memjetが存在感を増しているように見えます。

memjetの Don Allrad氏によると、今回の会場に12社が memjetの機器を出展しているとのこと。「来年の DRUPA2020には、更にビッグネームが memjetを採用して出展する」と豪語。

memjetに関しては、成立の経緯や現在の実態がやや謎めいていること、ピエゾヘッドを追いかけてきた私としてはそもそもあまりフォーカスしてこなかたっという事情もあり、まだちゃんと位置付けられずにいるというのが正直なところです。実際、ピエゾヘッド命!という人達のなかには「サーマルなんでしょ?」と、そもそも同じ土俵に置いて論評しない向きもあるようです。

しかし、機器価格が安価ということで導入ハードルは低く、インクが少々高くても、小ロットではそれでもフィットするニッチがあることも事実です。DRUPA2020を注視しましょう。

■ 電子写真方式も成功しつつあるように見えます。

Konica Minolta’s AccurioLabel 230 label press is designed for short runs.


私はインクジェット屋ではありますが、前職で電子写真部門の一角でラベルプリンタの企画が進められていた時に、それを推進していた同僚に「これはイケる!インクジェット屋から見ても、これはやるべき!」と応援したものです。

インクジェットでワンパスのラベルプリンタを構想すると、ヘッドユニット・インク供給系・UVランプ・メディアの搬送系・・・そして企画ロットの数量・・・などを考えていくと、原価でも数百万円、売値としては一千万円を超える価格設定をせざるを得なくなります。

一方、電子写真の場合は、そもそも企画ロットが数万台~数十万台で、一台当たりの原価(部品費+組立加工費+間接経費)はかなり安く、それをベースに追加でラベル用途に改造しても、さほどの追加コストはかかりません。更に、その昔ミノルタは、電子写真の枚葉機を連続紙用に改造して少量を商品化した経験があり、こういうことに抵抗が少なかったようです。

とはいえ、最初はこの電子写真ラベルプリンタチームは凄い苦労をしていたのが横から見えていましたが(保守本流からは鬼っ子に見られるし、そもそもラベル業界での要求品質への理解は保守本流にはないですからね・・・)、そこのハードルを漸くクリアして、累計設置実績は450台を超え、更に勢いを増していると聞きます。

業界の米国人アナリストが「450台の設置ってホンマか?」と訊いてきたので「まあ、嘘はついてないみたいだぜ」答えると、目を丸くしていました。信じられない!といった風情でしたが、やはり市場にとって低価格の魅力は馬鹿にしたものではありません。正確な価格や台数を掴んでいないので比較はできませんが、SCREENや EPSONのフルデジタルのインクジェット機の設置台数は既に上回っていると想像します。

「マスをバックに、多少の改造なので原価が安く、従って安価なプリンタが実現できる」・・・このアナロジーとして、EOSONのヘッドの外販があります。EPSONのヘッドは家庭用プリンタのマスをバックに、そのデリバティブなので原価はかなり安いはず・・・従って、最近始めたヘッド外販では低価格でオファーずることが可能です。(・・・もっとも、最初からそうするかどうかは別問題)

ひとつ決定的な違いがあるとすれば、プリンタの場合はエンド顧客と直接向き合うことができ、そこのニーズを直接聞いて・感じて・それを実現するという努力が可能です。(但し、説得するべき相手が電子写真の「保守本流」なのでその苦労は大変なものであることが想像するに余りありますが・・・)

一方、部品商売の場合はそこに直接絡めないので、「こんなにいい部品で、価格も安いのに、なぜそれを搭載したプリンタが売れないのか?結局なにをしてあげれば、ブレークスルーがあるのか?」がイマイチわからずもどかしい思いをする・・・そういうものです。

電子写真で課題があるとすれば・・・今はマスの母体からごく少量を追加で加工してラベルに転用しているので、原価は安いと思っている・・・その原価計算は本当か?正確な数字は存じませんが、450台の設置実績は、その母体機の企画ロットが5万台とすれば1%以下の話なわけで、まだまだ原価計算や費用のアロケーションなど問題にもならない話です。仮にこれが50:50になった暁にはどういうことになっているのか?そこは想定して備えをしておくべき部分なんだろうと思います。

■ そういえば、前回(二年前)のラベルエキスポで話題になった EB方式のプリンタは出展されていませんでした。

■ HPは?

これまでは「ラベルでデジタルといえば HP」と相場決まっていた感がありますが、プリントエンジンのサプライヤの増加と、それを採用・搭載するフレキソ機のメーカーの増加。安価な乾式電子写真の参入などで、デジタルの選択肢も増えてきました。迎え撃つ HPはどういうことを考えてくるのでしょうか?

2020年に同年・同都市で相次いで DRUPAと Interpackへの各社の取り組みが楽しみです。

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