- 2019-3-16
- イベント参加報告
上海:APPPEXPO+DPES 参加報告(3)からの続きです。
■ EPSONがヘッドを公式販売
昨年は、EPSONの安価プリンターから剥ぎ取ったプリンタがあちこちのメーカーから多数出品され、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしました。元のプリンターは EPSON AMERICAのサイトでは確か $130程度でしたが、そこから剥ぎ取られた 3,200ノズルの 4720系と称するヘッドがプリンターより高値を付けられ、更にその暗号解読ボードもヘッド同等(やや高い)価格で売られていました。
今年は、会場のあちこちに並んだプリンターには堂々と「EPSONの 4720(3200)ヘッド搭載」というボードが誇らしげにセットされていました。かねてより DX5とか DX7と称されるヘッドは無数にある「部品流通業者」で簡単に手に入っていましたが、このヘッドは EPSONが外販を制限していた最新のプレシジョンコアで、従来品とは一線を画しかなり話題になったものです。
ちなみに前回の「参加報告(3)今年の流行り?小型フラットベッドプリンター」の多くは EPSONと明示はされていませんが、プリンタの価格帯からは EPSON安価機からの剥ぎ取りヘッド搭載のものと推測します。剥ぎ取りを大々的に行った総元締めが、EPSONが公式販売などでそれを阻止する前にヘッドや暗号解読ボードを売り払った結果でないかと想像します。在庫が一掃されればブームは去るかもしれません。来年の注目点の一つです。
今年は、それが影を潜め(完全になくなったわけではない)その分、EPSONの公式バナーが増えた印象です。
EPSONの公式バナーが置かれていたプリンターメーカーは、正直申してあまり聞いたことのないところが殆どでした。元々 EPSONのグレーマーケット流通ヘッドを採用するメーカーは、海外にも進出し、ディーラー網やサービス網を構築した中国なりの一流メーカーではなく、価格志向の中小メーカー群が多いので、おのずとそうなりますね。
価格の明示は避けますが、EPSON以外のヘッドメーカーのヘッド価格は数百ドル/個~数千ドル/個で、EPSONのグレーマーケット品は数十ドル/個~百ドル台/個あたりです。今回の EPSONの公式ヘッド価格も概ねそのレンジと聞き及んでいます。EPSON以外のヘッドメーカーは、高価格で販売する代わりにインク認証や不具合ヘッドの解析などのサポートが(メーカーごとにバラツキはあるものの)一般に充実しています。
高価格帯のヘッドを供給するメーカーは、誰にでも売るという訳ではなく、顧客の実力や信用を調査した上で顧客を選定します。(各社によってスタンスは微妙に異なります)。グレーマーケットで EPSONヘッドを調達しているメーカーは、そういう「選別に漏れた」メーカーが殆どかと考えられますが、そういうプリンタを購入する顧客も存在するからビジネスが成り立っているわけで、異なった顧客層・そこへのプリンター供給メーカー群という二重の市場構造が存在していると想像されます。
一社の中で、高価格帯ヘッドとグレーマーケット品 EPSONヘッドの両方を手掛けるメーカーもありますが、その各々のポジショニングはちゃんと区別しており、また高価格帯ヘッドに求める保証やサービスと、保証無しを割り切ってグレーマーケットから調達した EPSONヘッドに求めるものは区別して考えています。
そこに登場した EPSON公式ヘッド!それが市場にどういうインパクトを与えるのでしょうか?
公式供給ヘッドであるからには、採用メーカーは何かあった時に EPSONにちゃんとした保証を求める?EPSONはそんな面倒なことを(安価なヘッドについて)やりますかね?やれるのですかね?インクの認証なんてやるのかな?認証インクを使って不具合が出たらちゃんと解析してフィードバックするのかな?あるいは、ちゃんと供給してあげるから、インクとの相性なんかは自己責任でやりなさいよ、そこは知らないよ・・・ということなのかな?
もしそうだとすると、中小のプリンターメーカーを個別に相手にするより、いっそグレーマーケット・・・というか部品供給業者にオープンに流した方が隅々に行き渡っていいように思われますが、何故中小メーカーを個別に相手にするんだろう?そのあたりの販売方針をコンファレンスなどでちゃんと発表・公表しているわけではなさそうで、スタンスに謎が残ります。
さて、来年はどういうことになっているのでしょうか?
上海:APPPEXPO+DPES 参加報告(5)に続きます。