アドビ:「Adobe Print Services」を提供

2026年10月22日

「Japan Inkjet Technology Fair 2026」に出席した、アドビ・ジャパンのシニアOEMプロジェクトマネージャー、増田茂氏

アドビが現行バージョンの「Adobe PDF Print Engine」を発表した際、「Adobe Print Services」という枠組みの下で今後さらなる機能が追加されることが示唆されていたが、これがついに市場に本格的に投入された。

「Adobe Print Services」は、「Print Ready」、「Print Embellishment Ready」、「Finish Ready」の 3つの構成要素から成り、それぞれソフトウェア開発キット(SDK)の形で販売され、主にプリンターOEMメーカーを SDKの開発を進め、多くのプリンターOEMメーカーと共同でテストを行ってきた。今年の「ジャパン・インクジェット・テクノロジー・フェア」で、アドビジャパンのシニアOEMプロジェクトマネージャーである増田重良氏に話を聞いたところ、次のように語った。「フィードバックに基づいて何度も改良を重ねてきたため、ようやく製品化できる段階に至った」

3つの構成要素はそれぞれ特定の領域を対象としている。つまり、「Print Ready SDK」は、PDFが印刷可能な状態であることを保証するためのものだ。増田氏は次のように説明する。「重要なのは、実環境での問題を解決することだ。オンラインプラットフォームや AIチャットボットの利用が増加しており、何らかの修正を必要とする非専門的なPDFが多数存在する」。同氏によると、一部のオンラインデザインプラットフォームやチャットボットは、印刷用の PDF仕様はおろか、フォントやカラーマネジメントといった問題さえ理解していないという。

そこで、「Print Ready SDK」を使えば、フォントの欠落、低解像度の画像、色に関する問題といった一般的な不具合を修正できる。増田氏によると、これは主に印刷仕様に準拠するようPDFの構造を修正することを目的としたプリフライトソフトとは異なるという。同氏は次のように付け加える。「しかし『Print Ready』では、良好な印刷体験を実現するために問題を解消するため、より焦点を絞り、処理も高速だ」。 画像の解像度をアップスケールする機能を含め、基盤となる技術の多くは Photoshopに由来している。

そのため、理論上は既存のプリフライトソフトウェアの代替として使用できる。しかし、ファイルの変更の多くはオペレーターによる確認を必要とするのに対し、多くのプリフライトプログラムにはある程度の自動化機能が備わっている。これは、低マージンの小ロットジョブを大量に扱う印刷所において、プリフライト作業自体が生産のボトルネックになるのを防ぐために不可欠だ。とはいえ、こうした自動化には結果に対する信頼が必要であり、あるワークフロー開発者は、AIによる結果は時に少し予測不能になり得ると私に指摘した。とはいえ、APSはまだバージョン1であり、AIの性質上、時間の経過とともにデータが蓄積されるにつれて結果は向上していくため、将来のバージョンでは何らかの自動化オプションが登場すると予想される。

さらに、「Print Embellishment Ready SDK」もある。増田氏によると、金箔、銀箔、ニス加工を施した PDFを作成するのは難しく、ほとんどの OEMメーカーは独自のソリューションを構築せざるを得なかったという。「Print Embellishment Ready SDK」は、ネットワーク上で利用可能なデバイスを自動的に検出し、どの加工技術を活用すべきかを判断する。追加の印刷チャネルを備えたプリンターの場合はPDFに効果を追加できるほか、MGIや Scodixなどの独立した加工装置が利用可能な場合は、別の を作成することもできる。

さらに、「Print Embellishment Ready SDK」は一歩進んで、印刷会社がデザインファイルに追加できる加工を提案し、顧客がそれらの提案を承認または変更できるようサンプルを表示することも可能だ。このSDKは、組み込まれた大規模言語AI機能を活用して、自然言語によるクエリを理解し、デザインに関するプロンプトを受け付ける。ここでの狙いは、顧客が自発的には依頼しないような装飾機能を、印刷会社がアップセルできるように支援することにある。そしてもちろん、印刷サービスプロバイダーにこのような機能を提供することで、彼らがそのようなハードウェアに投資する可能性も高まる。

最後の部分である「Finish Ready SDK」は、主にカットライン、ブリード、ネスティングを追加するためのものだ。ブリードに関しては、アドビは自社のPhotoshop技術を応用し、画像の端にあるオブジェクトを自動的に分析してブリードを作成している。これは単に端のピクセルを複製するだけのものではなく、システムがベクターグラフィックスやテクスチャ効果を理解し、オブジェクトの形状が端を越えてどのように続くかを正確に予測できる。増田氏は次のように述べている。「Photoshopには多くのAI技術が組み込まれているため、これを印刷に活用できるのだ」。

アドビは、複数のオブジェクトを互いに重なり合うように自動的に配置する「ネスティング」を作成する新技術を特許取得した。増田氏によると、その目的はオブジェクト間の不要なスペースを可能な限り削減し、それによってオブジェクトを切り抜く際に生じるメディアの無駄を減らすことにあるという。「非常に複雑なパターンや、各素材ごとにどの組み合わせが最適かを識別し、オブジェクト同士を近づけることで、非常に不規則な形状であっても素材の使用量を削減できる」と述べている。

顧客は、3つの APS SDKすべてを組み合わせて使用することも、必要な部分だけを選択して使用することも自由だ。また、APSの各コンポーネントをアドビ以外の RIPと併用することも可能だが、Adobe PDF Print EngineとAPS SDKを併用することにはメリットがある。より緊密な連携により、PDF構造の分析が高速化されるからだ。

すでに一部の OEMメーカーが、Adobe Print Services SDKに基づくソリューションを発表している。これには、Apogeeワークフローを開発し、APPEをいち早く採用したワークフローの一つである Eco3が含まれる。コニカミノルタは「Embellishment Forge」を提供しており、ゼロックスは「Empres Studio」を販売している。いずれも主にPrint Embellishment機能を利用している。Adobe Print Services SDKは現在 OEM向けに提供されており、詳細は adobe.comで確認できる。

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