- 2018-10-21
- イベント参加報告
世界最大の(所謂、繊維産業の「川上」の)繊維機械展示会である ITMA(International Textile Machinery Association)のアジア版です。会場は1号館から6号館まであり、最上流の紡績・製糸機械、その次工程の織機、更にその次工程の染色・捺染機械などが展示され、インクジェットは5号館の一部に集中しています。
ざっくり結論を申せば、来年 2019年 6月にバルセロナで ITMAが開催されることもあってか、(少なくともインクジェット関連では)驚くような新製品や新技術の発表はなかったと言えます。全般に、中国の展示会で画期的な新製品や最先端技術が発表されることは稀です。そういう意味では来年のバルセロナの ITMAに行けば十分という考え方もないではありません。
長年やってきたメイン事業ではなく、テキスタイルへのインクジェットプリントなどという得体の知れない市場に斬り込んでいくにあたって、メイン事業の管理で言われるような「出張の費用対効果」なんていう指標をテキスタイルの事業部門に求めているような会社にはこの市場で戦う資格はありません。
今回、インクジェット機器やインクなどが集中して展示されたのは5号館です。同じ会場で3月には広告設備機器展示会(APPPEXPO)が開催され、そこにもサイン業界向けのインクジェット大判機が所狭しと並びます。出展社のかなりの部分はそちらと被りますが、APPPEXPOの方は(失礼な言い方ではありますが)かなり有象無象的な中小零細メーカーも出展し、ある意味で何でも有りのヤンチャな活気を感じますが、ITMA ASIAに出展しているメーカーは、母集団は比較的似ているにしても、あえてこの既存産業としてのテキスタイル市場に食い込んでいこう・変革に寄与しようという「それなりの覚悟」というフィルターがかかっているように感じます。
プリンターの出展社を幾つかのパターンに分類してみると、「1.サイン向け大判機の有力メーカーで、そこを起点としてテキスタイル分野(を含むその他の産業用プリンティング分野)に展開しているメーカー」、「2.そもそも既存捺染機や周辺機器のプレーヤーで、将来を睨んでインクジェットプリンタに進出したメーカー」、「3.インクジェットヘッド・インク・プリンタなどの技術を総合的に有しており、テキスタイル分野が有望と判断してそこに進出したメーカー」、「4.サイン業界のプリンタメーカーでもなく、既存捺染機メーカーでもないが、インクジェット技術を獲得し、それをテキスタイル分野に展開しようとしているメーカー」、「5.その他(背景不明を含む」という感じです。
【1.サイン向け大判機の有力メーカーで、そこからテキスタイル分野に展開】
今回の出展社では、日本のミマキエンジニアリング、中国の FLORA、JHF、SkyJet、HOMER、Human Digital、韓国の DGI、インドの ColorJet等がそれにあたります。APPPEXPOにはもっと多くのプリンタメーカーが出展しますが、「テキスタイル分野に食い込んでいく覚悟」というフィルターが数を限定、出展社を厳選しています。
一般に生産機としての繊維機械はベビーデューティで、鉄骨を骨格とした頑丈な作りの機械が多いのに対して、サイン業界の比較的安価な大判プリンタは紙メディアを対象として軽量作られており、昇華転写用紙にプリントするプリンタからスタートするメーカーが多いです。が、イタリアのLaMeccanicaを買収したミマキや、自力でヘビーデューティ機を開発する中国メーカーなど、ダイレクトプリントの本格捺染の生産機に参入する動きも増えてきています。
まずは、会場の雰囲気をお伝えする意味でも写真を並べます。いずれかの画像をクリックするとスライドショーになります。
続いて動画です
ミマキの TIGER 1800 Mk2 買収した LaMeccanicaベースのマシンにミマキの技術を導入して内容を一新
瀋陽の SkyJetはかねてから一貫して同時両面プリントに強み
深圳の FLORAは京セラヘッド搭載の高速機 T180S を展示、昇華転写紙と布の両方にプリント可能とアピール