- 2018-11-4
- ブログ
以前にご紹介したベルギー東部のドイツ語コミュニティからそう遠くない場所、南東に 10kmほど行ったところに不思議な国境があります。Googleマップでは国境が二つあるように見えます。赤い矢印でしましましたが・・・どういうことでしょう?
一部を拡大してよく見てみると、二つあるように見える東側の国境線は二重線になっています。
更に拡大してみると、この二重線の内側はベルギー、その外側はドイツであるということが分かります。実はこれ、かつてドイツのアーヘンからルクセンブルグまで Vennbahnという鉄道が通っており、この鉄道線路の部分が歴史的な経緯から今日のドイツ領の中にベルギー領として残ったということなのです。逆に言えばこの内側は「ベルギー領の中にあるドイツの飛び地」ということになります。
Gemeinfrei, Link
Von Duhon – Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
この路線は、第一次世界大戦の戦後処理を決めたベルサイユ条約のなかで、かつてのドイツ帝国領だった Eupenと Malmedyという地域と共にベルギーに割譲されることになります。割譲されずドイツ領として残った地域は、ベルギー領となった鉄道線路によって本土と切り離された飛び地となります。ただこの「ベルギー領の領土線路」部分にはベルギーの警察権や関税課税権はなかったなど特殊な運用がなされたようです。
その後、第二次世界大戦ではナチスドイツがここを支配下に置きますが、その後ノルマンディ上陸に始まった連合軍の反攻に遭いドイツ軍は撤退します。ドイツの敗戦に続く戦後処理の中で、ベルギーはこの領土線路を放棄しませんでした。今日では鉄道は役割を終えて廃線となり、そのあとにはサイクリングロードが整備されていますが、今日でもベルギーはこの細い元線路跡地の主権を放棄していないので、地図にこういう形で残っているという訳なのです。ベルギーの警察権は関税課税権は及ばないというのもかつてのまま残っています。
Von G. Friedrich – Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link
Von Andreas Toerl – Eigenes Werk, CC BY-SA 3.0, Link