京セラ:テキスタイル市場に飛び込む

2023年5月16日

京セラは、テキスタイルプリンター市場への初参入となるインクジェットテキスタイルプリンター「Forearth」を発表しました。

京セラドキュメントソリューションズの産業印刷事業開発室長である谷口昌氏は、昨年の IGASで「京セラは繊維産業がデジタル印刷技術をベースに、より持続可能な未来へと変化するための一翼を担いたい」と語っています。そのために、京セラは最も持続可能なテキスタイルプリンターを開発することにしたのです。

京セラは、KPI(Kyocera Precision Ink)と呼ばれる独自の顔料インクを開発し、前処理や後処理の工程を省くことで、生産時に使用する水の量を削減することを可能にしました。また、インクだけでなく、前処理液や仕上げ剤も開発し、綿、絹、ポリエステルからナイロン、混紡生地まで、さまざまな素材に対応できるようにしました。

プリンター本体の水使用量はわずか0.02リットルで、それも転写ベルトを洗浄するためだけに使用します。というのも、ほとんどの繊維製品では従来の染色方法が採用されており、地球上で最も汚染された産業のひとつになっているからです。

もちろん、Forearthプリンターは京セラのプリントヘッドを使用しており、フルリサーキュレーション、600×600dpiの解像度を備えています。このプリンターは、リニアモーターでキャリッジを高精度に駆動するマルチパススキャン方式を採用しています。前処理剤、印刷剤、仕上げ剤用のプリントヘッドは、すべてプリントキャリッジに積み重ねられ、合計で最大 18個のヘッドを搭載することが可能です。Forearthは、最大 1.85mの基板に対応し、最大 1.8m幅までプリントできます。最大で毎時 250平方メートルの生産が可能です。

カラーは CMYKに加え、オレンジ、レッド、グリーン、ブルーの最大8色まで設定可能です。京セラは白インクも開発中で、次のイテレーションで利用できるようになると思います。

京セラは、テキスタイル市場で使用されるインクジェットのプリントヘッドの約 50%を供給していると谷口は言います。また、谷口はこうも言っています「プリントヘッドの顧客と喧嘩するつもりはありません。しかし、アナログ印刷はまだ 90%もあるのでので、デジタル市場をカニバリゼーションする必要はない。それに、人口はまだまだ増えるので、比率は変わっていくでしょう」。

しかし、ここで大きな意味を持つのは、京セラがドキュメントソリューション事業を通じて、コニカミノルタ、エプソン、リコーといった他の日本企業が過去に行ってきたように、既存のオフィスプリント事業から商業印刷市場に進出しようとしていることだと思います。同社は、エントリーレベルのカラーインクジェット・プロダクションプリンター「タスクアルファ15000c」で大きな成功を収め、昨年末にはモノクロ版も発売しました。さらに京セラは、コート紙に対応したより高級なモデルの計画も発表しています。また、今年初めにはフランスのインクジェット専門会社ニクスカを買収し、自社のインクジェットプリンターを拡充する意向を明確に打ち出しています。

Forearthは、6月にミラノで開催される ITMAショーで欧州初公開される予定です。なお、京セラと同様の理由で、他のメーカーもマルチパステキスタイルプリンター用の顔料インクの開発に取り組んでおり、ITMAで展示される予定であることを申し添えておきます。

顔料インクを使用する主なメリットは 3つあります。まず、前処理と後処理を減らすことができ、さらに水の使用量も減らすことができるため、より持続可能なソリューションとなります。また、印刷から完成品までの生産ラインの自動化の第一歩となり、オンライン注文システムの構築には欠かせません。3つ目は、顔料インクを使うことで、1台のプリンターでさまざまな素材に対応できるようになり、より柔軟なテキスタイル制作が可能になることです。

一般的に、デジタル捺染は従来の捺染より環境に優しいが、その分コストもかかります。ファッション業界の大手ブランドなどのテキスタイルユーザーは、デジタルプリントを本当に活用できるような在庫管理やオンデマンド印刷の概念をまだ習得していません。ですから、生産の自動化と単一インクタイプの標準化は、その大きな役割を果たすでしょう。ですから、今年のITMAで予想通り顔料インクのプリンターが多数展示されれば、テキスタイルプリントにとって大きなマイルストーンとなるでしょう。

Forearthは、今年の秋には発売される予定です。詳細は kyocera.comでご覧ください。

注:私もITMAに参加しますので、どなたかお会いしたい方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

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