- 2022-1-5
- 新年ご挨拶
皆様、あけましておめでとうございます。2022年寅年の新年のご挨拶を申し上げます。
【新型コロナウィルス:オミクロン株】
新型コロナウィルスが世界を股にかけたパンデミックを引き起こし始めてから丸2年、残念ながらまた今年もこの話題から入ることになります。
「コロナウィルスの今後:苦しい長期戦は必至、そしてその向こうにあるものとは?」という記事を書いた2020年 3月 22日、世界の感染者数累計はまだ「たったの 23万人」、それが 2021年 1月 3日時点で 8,446万人・・・僅か 8か月で約 370倍、世界人口の1%以上が感染したことになり、また感染者の2%強に当たる 180万人が死亡しています。そして更にそこから1年、今年 2022年 1月 4日時点では感染者は 3億人に迫り、死者数は 500百万人を超えました。
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当初の見通しでは、「ワクチンが遍く行き渡り集団免疫を獲得するまでの間」は、医療崩壊と経済崩壊の限界点を見極めながら、「抑止施策」と「緩和施策」繰り返す「サーモスタット・オペレーションを繰り返すしかない」と思われました。その基本路線は今も変わりませんが、ワクチン接種率が 70%を超え、集団免疫を獲得していると考えられていた先進諸国で現在猛威を振るっているオミクロン株という変異種によって、諸般の規制が継続する期間が長くなることを覚悟せざるを得ないという状況になっています。
折角、復活し始めた矢先の展示会やコンファレンスなどが(もちろん居酒屋も(笑))再び厳しい規制の対象で延期・中止・自粛などの影響を受けざるを得ないことは残念なことです。また事務職などは在宅勤務で対応可能な場合が多いですが、製造・物流など「どうしても現場作業が必要な業種」で、死亡率・重症化率は低いとはいえ、そこの作業員が集団で数日職場を離れざるを得ないことは、経済インフラに多大な影響を及ぼすことになります。
この冬「給湯器が故障したのだが、交換部品・制御基板の在庫が払底し、かつ製造しているベトナムの工場がコロナで長期閉鎖されており修理が出来ない=冬場に風呂に入れない!」というようなニュースを目にしました。これなどは氷山の一角で、これに類したサプライチェーンの混乱はあちこちで顕在化しているものと想像されます。ある研究機関が今年の10大リスクの筆頭に「中国のゼロコロナ施策の破綻」を挙げています。流行初期に強権的な都市封鎖でゼロコロナを達成したと標榜する中国は、オミクロン株でその施策が破綻して、再度更に強力な都市封鎖などをやらざるをえなくなる=大規模な経済混乱に繋がる・・・というものです。(ついでに申せば、中国の庇護を受けて生きながらえている半東北部の某国にオミクロンが蔓延したら・・・ゾッ~)
ただ・・・敢えて希望的観測を申し上げれば、これは新型コロナが「フツーのインフルエンザ、普通の風邪」化していく過程ではないかと考えられることです。死亡率が極めて高い伝染病は、患者が死んだ場所からはもはや動かないのでパンデミックは起こしません。逆に感染力の強いウィルスが拡散するのは、患者がそこそこ活動できる程度に元気で、重症化率・死亡率が低いから・・・という考え方があります。更に、仮に罹患してもタミフルやリレンザのような「初期に服用すれば軽い症状で済む」治療薬が開発され早期に普及できれば、もはや過度に恐れることもなく、現在のインフルや風邪の類として日常生活に取り込むことができるでしょう。来年の年初のご挨拶には、それが現実のものとして書くことが出来れば!と期待しています。
【それよりもっとヤバい(かもしれない)こと】
世界は「民主主義陣営」と「独裁体制陣営」の二極化が進んでいるように見えます。が、一元的に民主主義vs独裁主義:善vs悪という二項対立の、分かり易い世界でもないように思われます。
中国対アメリカの対立が尖鋭化しており、台湾有事もこれまでになく具体的に起こり得る事案として想定しうる事態となっています。あの自由だった香港で起こったことは、世界に中国の現政権の本質をあからさまに見せつけたワケです。アメリカのバイデン政権は中国の習近平政権に対して、新疆ウイグル自治区やチベットでの人権問題で圧力掛けてはいます。しかし「では、お前たちがインディアン(ネイティヴ・アメリカン)に対してやった仕打ちはどう正当化できるのか?」という反論には有効な反論ができていません。何より「今、民主主義を標榜している西側先進国」は、つい最近まで帝国主義の時代には阿片戦争を初めとして、さんざん中国や植民地諸国を食い物にしてきたことは紛れもない事実です。今になって正義感ぶるって、お前ナニ様?という反論にも有効な反論は出来ていません。コトは「善対悪」「民主主義対独裁主義」というほど単純ではないのです。
私見ですが、中国が今ビジョンとして掲げている「中国夢(China Dream)」というのは「IT技術に支えられた究極の計画・統制経済」ではないかと思うのです。かつての社会主義国家群に於ける計画経済は、全体最適と局所最適の調和が取れずに破綻しました。私が住んでいた豊かな西独から「わずか壁一枚隔てた」東独で、物資に不足が起こり、トラバントという粗末な自動車の「配給」に7年も待たなければならず、家屋の補修資材が不足して廃墟化していったのをこの目で見ました。しかし、今は IT技術と AI技術の発展で、そういう齟齬は克服出来る可能性はあるかもしれません。
私は古典的な経済学、アダム・スミスの「神の見えざる手」を信じてきました。自由経済・市場経済では、経済的な不均衡は「ビルトイン・スタビライザー=神の見えざる手」によって調整されるものと信じてきたのです。しかし、昨今の情勢を見ると、その神の声を頑なに無視し続ける日本企業群の体たらく、当時マルクス経済学の視点で予測された資本主義の次ステップとしての国家独占資本主義って「GAFAM」のことではないのか?これって広義の「市場の失敗」ではないのか?中国の「IT・AI技術に支えられた『自由』計画統制経済」が正解ではないのか?・・・そんな気にもさせられます。
一方で、中国で言う「共同富裕」・・・欧州で言う「社会民主主義」のレベルならいざ知らず、これに独裁・政府管理が加わると、かつてのナチズム「Einer für Alle, Alle für einer(ひとりは皆のために、皆はひとりのために)」というイデオロギーと重なりはしないか?正月に、マイケル・サンデル教授の「白熱教室」をみましたが、アメリカの学生は好き勝手なことを主張し、中国の学生は政府の代弁者的なことを喋り、日本の学生は「足して二で割った」ようなことを・・・(笑)しかし、日本にも同調圧力というのはありますが、中国のそれは「海外でも迂闊なことを言うと、中国に帰国した際に逮捕・拘束される」「中国国内にいる家族が不利益を被る」・・・かもしれないという脅迫にも等しい無言の圧力のもとに居るのではないでしょうか?
日本人は「岸田首相は頼りない、菅首相はアホだ、安倍首相はもっとアホだ!(笑)」とホンネを言っても、(少なくとも今は)逮捕拘束されることは無いという安心感のもとになんでも喋れますが、果たして中国国外にいて、本国の不気味な監視下にある中国人は「同等に」自由なのでしょうか?旧東独が、旧来の社会主義が何故破綻したか・・・それは、自由でイノベーティブな発想を抑圧された(・・・皮肉を言えば、今の日本もそうかも・・・)結果でした。人々の行動の全てを監視下に置く、中国夢としての、IT・AI技術に支えられた究極の計画経済は、そのモチベーションとどういう折り合いをつけるのでしょうか?
このテーマは、ここではとても書ききれないほど奥深く、また避けて通るにはあまりに重要な話です。今回、ここで深入りすると新年のご挨拶としては破綻をきたしますので、継続テーマとしたいと思います。
【政府の対応は日本社会の縮図】
日本政府の動きの遅さ=受け身の姿勢=自ら主導して局面をリードしない=他社のアクションを待って「リアクション」をする・・・という姿勢に見えます。私は最早これに対する批判をしません。飽きました(笑)これって、所詮は民間企業を含めて日本人・日本企業に共通する行動様式ですよね。
日本企業はこの三十年、結局は変わってはいません。個別にはそうでない企業もありますが、総じていえば・・・何も変わらず、思考停止しているように見えます。誰かのアクションを待たなければリアクションできない、他社や世の中はどう動いているのかという情報を取らないうちは動かない、十分な情報が有ってもトップが決断ぜず、「もっと情報を取れ」と先送りする(笑)・・・日本企業全体が「囚人のジレンマ」状態(笑)
これまで会社を支えてきたメイン事業が衰退期に入ろうとしているにも関わらず、結局はその事業で食ってきた人材を「他に候補がいないから」というような消去法的・消極的な論理で社長にしてしまう。経営層が現場に出ているフリをして、結局会っているのは既存の顧客と関連会社幹部だけ。「デジタルは小ロットが有利」なんていう、陳腐化の極みのコンセプトを今も語って現実を全く知らない・・・という現実(笑) オイ、あんたのことだよ(笑)
この話にも、オチはありません。ここでこれ以上続けるとエンドレスになってしまいそうです。ひとつ明らかだと思われることは「落ちるところまで落ちて、自浄作用・自己反発機能が働くまで放置する」しかないのではないかということです。今の経営者が、次にバトンを渡す際に「他に居ない」というような消去法的・消極的な論理で、従来路線の人材を選択するような企業には最早未来はありません。渡した先任者は逃げ切るのでしょうが、渡された方には(嬉々として受けた方には)地獄が待っています。「神の見えざる手」を体現できない、即ち、時代の変化の局面にあって自己否定をできない民間企業には、先は無いのです。おわかりですよね?
【昨年の振り返りと今年度の構想】
昨年もさることながら、私が前職コニカミノルタを卒業して以来、5年の時が経過したわけですが、この5年に自分が目指したことは実現できたのでしょうか?
こちらに、当初考えていたことを、今もブレずにそのまま掲げてあります。
いろいろ書いてはいますが、ひとつ「日本に産業用インクジェットに関わる企業・人」のネットワ-キングを促進し、コミュニティを形成する・・・これはある程度は達成できているのかなと思っています。★★組合とか、★★工業会など、コミュニティの体裁を取りながら、実質的に有名無実化しているものと比べると(比べたくもないですが(笑))かなり意味のある活動はできているかなと感じています。海外で起こっていることの継続的な情報提供で、それを有難いと思って頂ける企業や人、及びその相互の繋がりの核になれているかなという実感はあります。
一方で、それを海外の産業用インクジェットのコミュニティに結びつけるという目標に関しては、いまだ道半ば感があります。海外では「人は皆、コミュニティの中で繋がっている」のです。だから転職も容易なのです。会社の名前やステイタスではなく、固有名詞で仕事をしているのです。そこに OIJCを核として形成されたコミュニティを結び付け、相互の交流を図って行こうと考えていたのですが・・・難しいですねえ(笑)
そもそも・・・日本の会社の経営幹部を自認するあなた、君のことだよ(笑) アンタは世界のコミュニティに名前を知られてますか?世界のコミュニティに名前を知られるって、どういうことかわかってますか?Linkedinに登録していますか?そこで何人の人と繋がっていますか?「そこに登録していない=あなたは世界のビジネスシーンには存在していない」=所詮は自分のグループ企業内だけで知られた存在に過ぎない=世界を相手に仕事なんかできない・・・ってことに気が付いていますか?
若い人に申し上げます。あなたの上司を linkedinで検索して見つからなければ、あなたの上司はどんなにカッコいい蘊蓄を垂れようが、所詮はその程度のマルドメな人ということなんです。反面教師として位置づけ、そんな人の言うことはスルーして自分の価値を高める活動をしましょう。最近、大手企業を辞めて転職したというお知らせがかなり多く届くようになりました。能力のある若手は既に決断をしています。
【ということで、OIJCとして今年は・・・】
いささか「竜頭蛇尾」感は否めませんが(笑)、今年度の OIJCの活動は:
1.引き続き「産業用インクジェット」のコミュニティ形成に尽力する
2.引き続き「マルドメ」幹部を啓蒙し、若手の閉塞感の解放に資する
3.大野がカバーできない技術コンサルが出来る人材を発掘・確保し、ニーズに対応する
4.コロナの状況を見極めつつ「リアル・サプライヤー・フォーラム」の開催にチャレンジする
5.電子写真人材のインクジェット人材へのシフト・再教育に資する(ニーズ多い)
6.大野の将来の後継体制を含めコミュニティ運営体制を強化する
ということを旨に推進していきたく思います。皆様のご協力をお願いするとともに、今年の皆様のご多幸を祈念致す次第です、