2018年 年頭のご挨拶

皆様、新年あけましておめでとうございます。2018年戌年のご挨拶を申し上げます。

一昨年のご挨拶には「AmazonTV」や「ChromeCast」がレンタルビデオ屋さんという業態を破壊しつつあり、また日本の家電メーカーがハードウエアになんでも詰め込もうとするのに対してAmazonTVやChromeCastはシンプルに考えていることを「リモコン」を例にとって書きました。

昨年のご挨拶には「AbemaTV」が結構面白い話、またデジタルテキスタイルとネットビジネスが結びついて、所謂繊維産業を大きく壊し始めていることなどを書きました。

今年の正月は、故障した年代物の液晶テレビを買い替えましたが、この時にもれなくネットで注文したのがAmazonTVとChromeCast!別にAmazonやGoogleの回し者のつもりはありませんが、民放の地上波放送より、YouTubeやAbemaの企画もの、AmazonPrimeの子供向けアニメを見ている時間の方が圧倒的に長かったというのが実態でした。民放に釘付けになったのは、今年もまた駅伝中継くらい(笑)

そういえば新しい液晶テレビを買ったのもネットでした!その前に下見に行ったヨドバシ(笑)にて店員から聞いた話「4Kとか8Kテレビって、実はデータ量の関係から放送では現実的ではないんです」「じゃ、どこで使うの?」「ネット放送ですよ!ネットなら光ケーブルで十分なデータ量が…」…コトの真偽はわかりませんが、お茶の間のテレビは確実に従来の放送受像機としてのテレビから、モニター化・ディスプレイ化しつつあり何かを壊し始めているようです。

【最近ちょっと驚いたこと】

さて昨年11月末から12月中旬に上海を二往復する機会がありました。上海には年に少なくとも二度以上は出張するのですが、今回は一日を完全オフにして「ぶらり街歩き」を楽しんだところ、また新たな発見がありました。

噂に名高いレンタル自転車です。この写真は黄色ですが、他にもオレンジや緑などいろいろな業者が参入しています。中には顧客から保証金を確保して逃げてしまう悪徳業者もいて社会問題化している側面もあるそうです。

使い方は簡単で、アプリをダウンロードしたスマホで、自転車のロックについているQRコードをスキャンしロックを解除するだけ!使用料は1回1元(17円程度)で、WeChatペイやAlibabaペイから引き落としで決済されます。使用後は、町の至る所にある道路わきの駐輪場(歩道に白線で囲ってある)に乗り捨てるだけだそうです!

左の写真は、街によくあるシンプルな麵屋ですが、レジの横にスマホ決済用のQRコードが掲示してあります。右の写真は暗くてわかりにくいかもしれませんが、甘栗を売る屋台です。ここにも右上にQRコードが見えます。外国人の私はキャッシュで買いましたが、並んでいた中国人はやはりスマホ決済でした。

極めつけはこれです。地下鉄の車内で、若いおニイちゃんがスマホをかざして、座っている乗客に次々と話しかけています。同じことをやっていた若いおネーちゃんも見かけました。どうやらスマホ決済で小銭をせびっているようなのです。名付けて「デジタル物乞い」とでもいうのでしょうか…。

もちろん、こういう古典的なタイプもいまだ健在ではありますが、この人達もネット決済・キャッシュレス化の波の中で業容転換を迫られるのかもしれませんね(笑)

以上、最近中国は上海で目の当たりにしたスマホ決済の急速な普及の報告でした。

【昨年の振り返り】

さて数えてみると、昨年は一年のちょうど五分の一にあたる73日間海外におりまして、内52日がヨーロッパ、17日が中国、4日が北米でした。この数字はそのまま、私の関心度合いの分布=産業用インクジェット関連の情報やイベントの多さを反映しているようです。これに加え航空券を手配しながら私用でキャンセルせざるを得なかったHeimtextilとInPrintを加えれば、一年の四分の一、ヨーロッパの比重は更に大きくなっていたところでした。

ヨーロッパでは FESPA、TheIJC、LabelExpo、IMI Europe、DigitalTextile、Textile4.0及び半導体関連のPCIMと車載照明関連のISAL、中国ではAPPPEXPO、上海TEX、LabelExpoAsia、北米はSignExpoと、主要な展示会とコンファレンスには出かけてきました。このあたりの報告は、後述するウェブサイトで公開しています。

大事なことは、個々の展示会やコンファレンスに参加するだけでなく、そこに集まる人と話し・繋がり、サプライヤー・競合・パートナー・顧客・業界メディアなどが混然一体となって織りなす「業界コミュニティ」の一部となり、そこでの存在感を発揮し、そのコミュニティから「個人として」認めてもらうことではないかと思っています。

こういう場に、日本メーカーの役員層(=事業責任者層)はまず現れません。参加しても、コンファレンスで発表も発言もしません。こういうコミュニティに自ら属することなくしては、部下・実務層から上がってくる事業提案を、本当に腑に落として決済・決断することなど出来るのでしょうか?「責任者の顔が見えず、意思決定の遅い日本企業」と言われる原因、ガラパゴスと揶揄・自虐する要因の一つはこのあたりにありそうです。ここは、なんとか流れを変えたいと、切に願っている次第です。

(左)TheIJCコンファレンスにて(右)LabelExpoAsiaにてインクジェット業界レジェンドのRak Kumar氏と

また12月には2回目となったジャパン・デジタルテキスタイル・コンファレンス2017の議長を務めました。2016年のコンファレンス・アジェンダから既にその徴候はありましたが、北イタリアのコモから始まったインクジェット捺染は、単にプリントの無版オンデマンド化の枠を超え、ネットインフラとの融合を通じて、旧来の繊維産業の目と手の届かないところで新たなビジネスを創り出しつつある状況が一層鮮明になってきました。もはやインクジェット捺染ではなく、まさしくデジタルテキスタイル、更にはテキスタイル4.0というフェーズに入りつつあるようです。

嬉しいことに、国内でもそういう動きをする方々が登場し、小規模ながら既にビジネスを軌道に乗せつつあることです。こういう動きを加速・成長を後押しし、世界に繋いでいきたいと思っています。

【ウェブサイトの開設と今年のアクション】

既にご案内の通り、大野インクジェットコンサルティングとしてウェブサイトを開設いたしました。お陰様で想定以上に好評で、アクセス数も順調に増加しております。
https://ohno-inkjet.com/?utm_campaign=shinnen18&utm_medium=email&utm_source=direct

詳しくはこのサイトの「OIJCとは」をお読みいただければと思いますが、大野のミッションは「ヘッドメーカーは殆ど日本に在るのに、システム事業は欧州や中国に大きく後れを取っている現状…これを変えること」です。

何故そういう状況にあるのか?というのは、前職で産業用インクジェット事業を軌道に乗せ、自ら運営してきた経験からかなりわかっているつもりですが、退職後に中立な立場で改めてそれに関わる中で、新たにわかってきたことも数多くあります。

このサイトでは、そのミッションの達成のために、英語で書かれた海外の情報への導入部分だけでも日本語化することでアクセスハードルを下げ、情報が満載の海外コンファレンスへのアクセスを容易にし、時には海外コンファレンスを日本に呼び込むことなどを通じて、インクジェットのシステム事業先進地域とガラパゴス日本の情報格差や意識格差を少しでも減らしていこうと考えています。

更に、国内外を問わず、規模の大小を問わず、様々な立場から産業用インクジェットの普及推進に加わっている企業や個人にスポットを当て紹介していきます。またブログや連載を通じて、私なりの脱ガラパゴスへの処方箋を発信するプラットフォームとしたいと考えています。

サイトは可能な限り、週に一度は更新し、その更新情報をメールマガジンでお届けする予定です。最新の情報にアクセスするために、是非メールマガジン会員(無料)に、このページの下方にあるバナーをクリックし登録ページにジャンプしてご登録下さい。

【おわりに】

2016年の年初のご挨拶の最後には「活動拠点を欧州と中国に移す」と書き、その理由も書きました。そこは達成できたと思っています。

2017年の年初のご挨拶の最後には「やはり会社は社長次第!産業用インクジェットシーンを変えるポテンシャルのある企業の社長・経営層に直接届く・響くことをやりたい」と書きました。ここは流石に難攻不落(笑)!私の力不足なのか、経営層はハピナスのように防御力が高いのか(笑)、あるいは「産業用インクジェットシーンを変えるポテンシャルのある企業」なんて存在しないのか?今一つ達成感がありません(笑)

2018年は新たにウェブサイトというツールも得て、ミッション達成のために2017年に目指したことに再チャレンジしていこうと思います。社長・経営層の皆様、広いお心で宜しくお付き合いをお願いいたします(笑)

末筆ながら、本年が皆様にとって素晴らしい一年となりますことを祈念致す次第です。

2018年1月吉日
大野インクジェットコンサルティング代表
大野彰得

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