Printio が面白い!

先日「コクヨ:ひとつから文具にオリジナルデザインできる カスタマイズサービス」というタイトルの記事で、同社の「ひとつから文具にオリジナルデザインができる個人向けカスタマイズ文具作成サービスを開始」という話を採りあげました。

コクヨといえば、誰しもが小学校時代から馴染みのある有名な文具メーカーですが、印象としては、少子化時代とは言え日本の小中高大の生徒・学生に深く浸透して、大人になっても会社で使う文具・事務用品まである・・・多品種ではあるんだろうけど、それぞれが少量ってことは無いんだろうなあ・・・と漠然と思っていただけにちょっと新鮮な企画でした。

自分的には「Campusノート」と、新入社員時代に全国の営業所の売上・仕入原価・粗利を纏めるのに使った「B4サイスの集計用紙」が定番だったので「測量野帳」ってのがあるんだ!というのも新たな発見でした。

今回は、そのコクヨとしても新しい試みの「1品からのカスタマイズ」を受注した「Printio」サイドからの発信です。Printioは「HappyFabrics]「HappyPrinters」を展開する「OpenFactory」(堀江賢司社長)の「B2Bカスタム受注サービス」です。

★★★ まず、堀江さんの facebook投稿からの引用です★★★

少し時間たちましたが、コクヨさんのショーケースというサイトのなかでパーソナライズ文房具として測量野帳のカスタムサービスをご一緒させてもらいました。

自社プロダクトや WEBサービスに印刷サービスを組み込もうとすると、シミュレーターの開発や、1個づつつくれる工場の開拓、そこにつなぐ APIや毎日の生産管理など「膨大なやることリストがある」わけですが、そこをまるっと PrintioAPIで受けられてパーソナルサービスを開始することができます。

今、大口のグッズサイトなどの裏側でマスカスタマイゼーションをやってますが、いろいろな企業の DX案件で D2Cや新規事業室とご一緒することが多くて、アパレルブランドや繊維商社、商品メーカーなどなど、ほぼすべてが、D2Cチームだったり、新規事業室だったり DX推進室だったりします。

なので、お客さんも面白い人が一杯でとても刺激的な毎日です。これまでも Cheeroさんのモバイルバッテリーとか PFUの ScanSnapなど「大量生産プロダクトをパーソナライズ化」するのはとても相性が良くて嬉しいです。

★★★ (引用終わり) ★★★

私自身はデジタルプリント機器のメーカーに身を置いていたので、メーカーサイドの社内のロジックは聞き飽きています(笑)「アナログは版を作る必要があるがインキは安価・デジタルは版が不要だがトナー(インキ)は高い=損益分岐点があって、大ロットはアナログ有利、一品や小ロットはデジタル優位」・・・煎じ詰めればこれだけです(笑)メーカーサイドで、その先のことを語れる人はほとんどいません。

産業をマクロで見ればそのロジックは正しい。しかし「産業がデジタルプリンターを買ってくれるわけではなく」実際に買ってくれるのは個々の企業なわけです。個々の企業は産業をスライスして、その一部を分業しているので、そこには産業全体のロジックとは異なるロジックが支配しています。典型的には「賃加工の印刷・プリント屋」・・・確かにそこは印刷・プリントの現場で印刷機・プリンターが稼働していますが、そこのオーナーに向かって「大ロットはアナログ・小ロットはデジタル」のロジックは通じません。何故なら彼らはそもそも「1枚いくら」という超低マージンの賃加工業なので、デジタルのトナー(インク)の価格が、そのマージンの大半を食ってしまう・場合によっては逆ザヤになるデジタル機は検討の俎上に上りません。・・・この話は長くなるので、一旦ここで終わります。

要は、堀江さんは、そういうメーカーのロジックを全く擦り込まれてはおらず、「その先(印刷サイド)」から出てきた人で、かつインターネットの申し子である・・・このインターネット時代に生き残れる印刷業・プリント業ってどういうものさ?というところから事業を構想しているということを紹介しておきます。

上の堀江さんの facebook記事から、もう一つ面白いことが読み取れます。相談・商談を持ち込んでくる「アパレルブランドや繊維商社、商品メーカーなどなど、ほぼすべてが、D2Cチームだったり、新規事業室だったり DX推進室だったり」・・・という話。

今の時代、SDGsと DXを語っていれば当面は食っていけそうですが(笑)上のような構図からは、「自社が扱う商品に、敢えて一品からカスタマイズ可能という究極の多品種少量のサービスを持ち込み、それを実現できるのはデジタルプリント・・・これが我々(DX推進室)が考える DX戦略だ(笑)」・・・ちょっと安易な感じがしなくもないですが(笑)

でも、改めて考えてみると、例えばバルキーな建材・・・カタログに載っているボード全てを品切れが無いように在庫すると、スペースも額もトンデモないことに・・・現状は売れ筋とそうでないものを ABC分類して、それぞれに見合った受発注という職人技的管理をしているところ、白いボードだけ在庫しておいて、受注を受けてからカスタムプリントする・・・って現実に始まってますからね。

これを実現するためには、単にプリンターがインクジェット・フラットベッド機=デジタル機だというだけでなく、従来の受発注とは全く異なった「デジタル・ネットワークを前提とした」受発注の仕組みが必要なのは自明です。そういうことが可能になること・可能にすること=デジタル・トランスフォーメーションなわけですよね(ガラパゴスでは何故か DXと略される・・・海外では通じないので念の為)

そういうことのマイクロ版をやってるのが「Printio」だと考えれば、そのサービスを活用するというのも、立派に「デジタルトランスフォーメーションに取り組んだ」事例として誇っていいと思いますよ、DX推進室の皆さん(笑)

上記の建材の事例にしても、Printioのサービスにしても「データが全てデジタル(ネットワークで)で繋がっていること」が前提となります。どこかに FAXで送信するとか、紙にプリントしてチェックするとかという工程が一つでも入ると成り立ちません。ネットでワクチン接種を予約しても、接種の現場では担当者がプリントされた名簿で本人確認やったり、接種証明を貰うのに申請書とマイナンバーカードのコピーを郵送して・・・なんていう八王子市的なことをやっていてるのは DXではありません(笑)

まあ、ここまでは分かり易い話でしょうが・・・実際のボトルネックは別のところにあります。デジタルプリントとはいえ「何処かの誰かが、実際にプリントするという作業」をやっているわけです。そういうプリント工場がどこかにあるわけですね!ここが驚くほどデジタル化・ネットワーク化されていない!いや、デジタル化はされてはいるけど「外界・インターネットに繋がっていない」・・・

ガラパゴス日本に於いては、結構な最新鋭のデジタルプリンターが並んでいるのに、受発注はファックスで受けていて、それをワークフローソフトに手入力したりしている・・・。大体、工場って機械設備には投資する(それがメシのタネと考えている)し、工場内のワークフローまではその一環で考える。でも、受発注から一貫してデジタル・ネットワークで繋ぐというと突然思考停止に陥るところが殆ど・・・まあ、大企業だって、直ぐに「費用対効果は?」なんて言いますからねえ、プリント工場だけを責めてもいけませんが・・・

繋ぐためのソフトウェア開発だけの話なら、ちょっと優秀なソフト屋さんに頼めば出来ちゃうんでしょうが、ボトルネックはそこではなくて「繋がっている工場を見つける・繋がっていない工場を説得して繋がるようにする・・・」ここも含めて Printioというサービスだということがポイントなのでしょう。facebook投稿の「まるっと PrintioAPIで受けられて」という表現のツボはそこなんだろうと思います。

Printioのブログも是非お読みください

そういえば、もう一年半前に Printioについてこんなインタビューもしてました

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