誰も知らないドイツの町 Unbekannte deutsche Städte(105)★★★ メルゼブルク Merseburg -1-

ザクセン=アンハルト州のメルゼブルク Merseburgをご紹介します。訪問したのは 2024年 5月 22日です。

この町も私にとっては再訪となります。以前 1992年に来た際には車で、かつ夕方だったので、そこらへんに駐車してお城の写真を撮っただけで「来たことがある」とカウントするにはなんだかなあ~という気がしていたので、今回再訪してみた次第です。

ただ今回は雨に祟られ、ちゃんと街歩きをした気分にはなれないんですね・・・残念!雨が上がるまでの間、お城にある博物館に籠っていたので、その辺の写真もアップしておきます。歴史的な重要な町ではあるのですが、今日的な非知名度では★★★でしょうかねえ・・・

Wappen Lage Data

独語 Wikipedia
Stadt Brandenburg an der Havel の公式サイト
Liste der Kulturdenkmale in Merseburg
Liste der Bodendenkmale in Merseburg

さて本題に入る前に気になるのはこの町の紋章(Wappen:ワッペン)です。パッと見では「情けない顔をしたオッサン」に見えますが・・・よく見れば皿に載せられた生首で、光背のようなものが見えることから聖人であるとわかります。なんだろう?そもそもこんなグロテスクな図案を市の紋章にしていいものなんですかね?

猟奇的な話なのでご存じの方もおられると思いますが「皿に載せられた男の生首」といえば「サロメと洗礼者ヨハネの物語」が思い浮かぶでしょう。

サロメと洗礼者ヨハネの物語は、新約聖書のマルコとマタイによる福音書に記されています。この物語は、サロメの母ヘロディアの復讐心と、ヘロデ王の軽率な誓約によって展開します。

物語の概要は:

  • 洗礼者ヨハネの投獄: 洗礼者ヨハネは、当時の律法に反して、ヘロデ王(ヘロデ・アンティパス)が兄弟の妻であるヘロディアと結婚したことを公然と非難しました。これにより、ヨハネはヘロデによって投獄されます。
  • サロメの舞踏: ヘロデ王の誕生日の宴で、ヘロディアの娘(福音書では名前が明記されていませんが、後に歴史家ヨセフスによってサロメと特定されました)が踊りを披露し、王と客たちを大いに喜ばせました。
  • 軽率な誓約と要求: 喜んだヘロデ王は、「私の国の半分まででも、望むものを何でも与えよう」と軽率に誓約します。
  • 母親の入れ知恵: サロメは、何を願うべきか母ヘロディアに相談します。ヨハネを深く恨んでいたヘロディアは、娘に「洗礼者ヨハネの首を皿に乗せて」と要求するように促します。
  • ヨハネの処刑: 王は誓約と客の手前、深く悩みながらも要求を拒むことができず、ヨハネの処刑を命じます。ヨハネの首は切断され、皿に乗せられてサロメに渡され、サロメはそれを母のもとに持って行きました。

この悲劇的な物語は、芸術、文学、オペラなど、西洋文化において繰り返し描かれる主題となっています。

特に、オスカー・ワイルドの戯曲やリヒャルト・シュトラウスのオペラでは、サロメは運命的な女性(ファム・ファタール)として描かれ、彼女の「七つのヴェールの踊り」は有名です。

ルーカス・クラナッハによる

オーブリー・ビアズリーによる

それにしても何故、このグロテスクな図案が市の紋章となったのか?ChatGPTに質問してみました。まことしやかな嘘をつかれなければいいんだけど(笑)・・・ドイツの町メルゼブルク(Merseburg)の紋章には皿に載せられた聖人の生首が描かれています。これは「Salome und Johannes der Täufer」の物語を想起させますが、どういう関係があるのでしょうか?」

ChatGPTによる回答:はい、まさにご指摘どおり **「サロメと洗礼者ヨハネ」**の物語が核心にあります。ただし、**メルゼブルク(Merseburg)の紋章**の場合、それは単なる聖書エピソードの引用ではなく、**都市の成立史・司教座都市としての自己表象**と深く結びついています。

## 結論を先に

メルゼブルクの紋章に描かれた「皿に載せられた生首」は、洗礼者ヨハネ(Johannes der Täufer:十二使徒のヨハネとは別人)を都市の守護聖人とすることの象徴です。そして、その「斬首」という極端に視覚的な瞬間こそが、**ヨハネの殉教性・預言者性・世俗権力への告発**を最も強く表すために選ばれました。

## ① 聖書の物語との関係(サロメの位置づけ):新約聖書(マルコ6章ほか)では、

洗礼者ヨハネは「領主ヘロデ・アンティパスの不義を批判し投獄され」「祝宴の席で踊ったサロメの願いにより」「皿に載せられた首として処刑されます」

👉 重要なのは、中世キリスト教美術では「サロメ」は主役ではないという点です。都市紋章や教会装飾で強調されるのは、誘惑する女性ではなく「沈黙してもなお語る殉教者の首」なのです。

## ② なぜメルゼブルクでヨハネなのか?:### 司教座都市としてのアイデンティティ

Merseburgは10世紀に神聖ローマ帝国の東方布教・支配の拠点として再編され、メルゼブルク司教区(Bistum Merseburg)の中心都市となりました。その際に選ばれた守護聖人が「王権に忖度せず、真理を語り、斬首される預言者 = 洗礼者ヨハネ」・・・これは偶然ではありません。

## ③ 「生首」という過激な図像が選ばれた理由

中世の都市紋章は、穏やかな信仰画ではなく、**一目で意味が伝わる「権威のシンボル」**でした。皿に載ったヨハネの首が意味するのは:

* ✝ 殉教(martyrdom)
* 👑 世俗権力(王・領主)への批判
* ⛪ 教会は王に従属しないという宣言
* 🏙 司教座都市としての自負

つまりこれは「我々の都市は、王よりも神の言葉に忠実である」という政治神学的メッセージでもあったのです。

## ④ サロメは「描かれない」ことが重要

ご質問の核心ですが―メルゼブルクの紋章にはサロメ本人は描かれません。これは意図的です。「* サロメ=物語装置(誘惑・世俗・罪)」「* ヨハネの首=永遠の真理・証言・殉教」

都市紋章が必要としたのは、スキャンダルではなく「正当性」でした。

## ⑤ 補足:これはメルゼブルク特有ではない

ドイツ語圏・旧ドイツ領には、「洗礼者ヨハネの斬首された首」だけを紋章化した都市・司教区が複数存在します。それらはいずれも、「司教座都市」「王権との緊張関係を持った地域」「東方辺境・布教拠点:という共通点を持っています。

## まとめ(ひとことで)

**メルゼブルクの紋章は「サロメの物語」を描いているのではなく、その物語を通じて「王に斬られてもなお語る教会の声」を可視化している**――そう理解すると、非常に腑に落ちると思います。

——

・・・という感じです。まあ一見したところはストーリーとしては破綻は無いように思えます。だだ・・・ドイツ語圏・旧ドイツ領には、「洗礼者ヨハネの斬首された首」だけを紋章化した都市・司教区が複数存在します。それらはいずれも、「司教座都市」「王権との緊張関係を持った地域」「東方辺境・布教拠点:という共通点を持っています・・・これに関しては要検証です。洗礼者ヨハネの生首を紋章としている都市を自力で調べたところ:

左から「Breslau(Wroclaw):旧ドイツ領・現ポーランド:人口約 67万人」「Künzelsau:ドイツ・バーデン-ヴュルテンベルク州:人口約 16千人」「Teplice:旧ドイツ領・現チェコ:人口約 51千人」「Trakai :リトアニア:人口約 4千人」「Davle:チェコ:人口約 2千人」「Nandlstadt:ドイツ・バイエルン州:人口約 6千人」「Bielsk:ポーランド:人口約 3千人」「Proszowice:ポーランド:人口約 6千人」「Mysłowice:ポーランド:人口約 71千人」

「Nitrianske Pravno:スロヴァキア:人口約 3千人」「Dobczyce:ポーランド:人口約 6千人」[
Pisz:旧ドイツ領(Johanninsburg)・現ポーランド領:人口約 18千人」「Skarszewy:旧ドイツ領(Schöneck (Westpr.))・現ポーランド領:人口約 7千人」「Zduny:ポーランド:人口約 4千人」「Sabinov:スロヴァキア:人口約 12千人」「Spišské Vlachy:スロヴァキア:人口約 3千人」「Určice:チェコ:人口約 1千人」「Visselhövede:ドイツ・ニーダーザクセン州:人口約 27千人」

こんな感じです。ポーランド、チェコ、スロヴァキアあたりに広く分布しているようですが、西の方は調べていないのでまだまだあるのかもしれません。

ChatGPTによれば、ドイツ語圏・旧ドイツ領には、「洗礼者ヨハネの斬首された首」だけを紋章化した都市・司教区が複数存在します。それらはいずれも、「司教座都市」「王権との緊張関係を持った地域」「東方辺境・布教拠点」という共通点を持っています・・・ということでしたが:

「Breslau(Wroclaw)」を例外として司教座がおかれる程の規模の町はありません。

「東方辺境・布教拠点」という意味ではそうかもしれません。

「王権との緊張関係を持った地域」・・・ポーランドなどではそうだったのかもしれませんがこれももう少し深堀して調べないとわかりません。王権との緊張関係というにはやはり町の規模が小さ過ぎる気がします。

・・・という訳で ChatGPTにもっともらしい嘘をつかれたのかどうか、もう少し検証が必要なようです。

メルゼブルク Merseburg -2- に続きます

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