様子を見よう:富士フイルムの軟包装プリンタ

2025年10月24日

少し前に、富士フイルムがフレキシブルフィルム用インクジェット印刷機「Jet Press FP790」を5台販売したという記事を書いた。その後、これらの印刷機がすべて実際に設置されたわけではないことに気づいたので、この記事で記録を訂正する。

この印刷機は元々ミヤコシが開発した MJP30AXFであるにもかかわらず、富士フイルムはジャーナリストや顧客に対し、同社が開発したと説明し続けていた。ミヤコシは富士フイルムがリブランドを決定する前に、既に日本国内のカナオカグラビアに最初のベータサイトを設置していた。とはいえ、これは両社にとって極めて標準的で現実的な手法である。富士フイルムはミヤコシが既に投入していた数年の開発コストを節約でき、ミヤコシは富士フイルムの世界的に広範な販売・流通網を活用できるからだ。

富士フイルムは欧州市場をフレキシブル包装印刷において最も受け入れられやすいと見ているようだ。富士フイルムヨーロッパが FP790の販売を主導していることからもそれが窺える。最初の顧客は英国ノーサンプトンに拠点を置くエコフレキシブルズで、2023年 6月から同年 12月までベータテストサイトとして機能した。この時点で富士フイルムはベータテスト段階を完了したと宣言し、エコフレキシブルズは本機を本格生産に投入した。

エコフレキシブルズは主に製版会社であるため、インクジェット印刷機を活用して短納期印刷分野へ進出できた。同社は本機の性能に満足していると考えられる。その根拠として、同社は本機の性能を称賛する複数のプレスリリースや SNSコメントを発表し、さらに 2台目を購入している。

2番目の顧客はピエール・ヴェドレーヌ氏であるはずだが、同氏が富士フイルムが納入した印刷機に全く満足していないのは明らかだ。この印刷機はスイスで法的手続きの対象となっており、詳細の公表には制限がある。とはいえ、何らかの理由で期待に応えられなかったと思われるこの導入事例について、富士フイルムの初回受注を祝うプレスリリースだけが公式見解として残るわけにはいかない。

ヴェドレーヌ氏はヴェドレーヌ・パッキングの CEOである。同社は 1894年にフランス・オーリヤックで創業した印刷会社から発展した。2022年にはスイス・バーに拠点を置くヴァリパックを買収し、事業拡大を図った。買収後はヴェドレーヌ・パッキング・スイスと改称されている。ヴァリパック社は老朽化したワイドウェブフレキソ印刷機数台を稼働させていたが、ヴェドレーヌ社はこれらをジェットプレス FP790 2台で置き換える計画を立てていた。

このうち 1台目は 2024年 9月にスイス・バー工場に設置された。富士フイルムによれば、合意通りセットアップされ 2024年末までに設置は完了したが、ヴェドレーヌ社は理由を明示せずに受入を拒否したという。これに対しヴェドレーヌ社は、富士フイルムが 2025年初頭からプレス機の設置を放棄したと反論している。言うまでもなく、発注された 2台目のプレス機は設置されなかった。スイスで法的手続きが進行中であるため、これ以上推測することは控えたい。

残る 3社目の顧客はドイツのデロ・デットマー社である。この設置も遅延したと思われるが、まだ非常に新しい技術である以上、こうした遅延は珍しくない。富士フイルムヨーロッパはデロ社に代わってプレスリリースを発表し、同社もこの印刷機に満足していると表明した。当然ながらデロ社はそれ以上の質問には答える気がないようだ。

富士フイルムは Drupa 2024で Jetpress FP790の複数台販売を発表した

富士フイルムは、この印刷機を 3台販売・設置したことは成果だと主張するだろう。確かにそれは成果である。フレキシブルフィルムはインクジェットにとって依然として課題である。その一因は、非多孔質基材に水性インクを高速で定着させ、商業生産に耐える十分な均一性と許容コストを実現する難しさにあり、さらにインクが包装が耐えなければならない擦り傷、折り目、温度変化などのあらゆる問題に耐えなければならないという課題が加わるため、競合他社のほとんどがまだ開発段階にある理由がわかる。

しかし、5台の印刷機のうち 3台しか設置できなかった事実は、あまりよい印象ではない。富士フイルムとヴェドレーヌの両社は、今回の設置で何が問題だったのか、そしてその後の対応について説明責任を負っている。ただし、これらの疑問はまず法廷で解決されるのが最善だろう。法的な手続きが終結した段階で改めてこの件を取り上げたいが、現時点では結果を見守るしかない。

その間、富士フイルムがこの印刷機のマーケティング活動や、ジャーナリスト(顧客は言うまでもなく)がこうした状況で投げかける厄介な質問への対応に制限が生じるだろう。これら全てが、印刷における技術的課題の解決はゲームの一部に過ぎず、財務面や法的側面が同様に重要であることを浮き彫りにしている。後者については、記事化がより困難ではあるものの。原文はこちら

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