リコー:ペロブスカイト太陽電池を低コスト生産 インクジェット方式

日経新聞オンラインに「ペロブスカイト太陽電池」に関する包括的な記事が出ています。が、この記事は突っ込み不足で大きな視点を見逃していることを憂慮するものです。

「リコーは薄くて曲がる「ペロブスカイト太陽電池」の新製法の開発に取り組んでいる。印刷機に使われる「インクジェット」技術を駆使したのが特徴だ。インクを噴出するようにフィルムに材料を塗布することで製造コストを下げる。2030年度には約9万世帯の年間消費電力に相当するペロブスカイト太陽電池を生産できるようにする。記事全文はこちらから」

建材一体型のペロブスカイト太陽電池を手がけるパナソニックホールディングス(HD)もインクジェットに着目する。レーザー加工技術と組み合わせて製造する。有機ELディスプレーで培った技術を応用し、建築用ガラスに対応した独自の「大面積塗布法」を開発した。「インクジェットは多様な建材ガラスに対応できるのがメリットだ」(パナHDの担当者)と説明する。

現状では課題もある。ペロブスカイト太陽電池を構成する各層を形成するために材料を噴出するが、インクジェットヘッドの部材を傷めやすい。製造コストを押し上げる要因になる。ただ、こうした問題についても解決策が見いだされつつある。

コニカミノルタは材料への耐久性を高めたインクジェットヘッドを開発した。装置製造のマイクロジェット(長野県塩尻市)が扱う装置などに使用されている。セイコーエプソンも25年度中にインクジェットヘッドの新製品を発売する。同社は電池の製造装置を手掛けるメーカー複数社にヘッドを納めており、4月には有力技術をもつ韓国新興ゴサンテックへ出資した。

コニカミノルタの「塗布装置の中核部品」はこれを指すものと思われますエプソンが出資したゴサンテックに関する記事はこちらにあります。またリコーやパナソニックの本案件に関する政府からの補助金の記事はこちらです。

ただここでひとつの疑問があります。

液晶パネルの製造は韓国・台湾そして中国に奪われ日本の製造は没落しました。有機 ELの惨状は政府肝いりのジャパンディスプレイの迷走を見れば明らかです。太陽光パネルの製造は初期からもうどうしようもない感じです。3Dプリンターはもはや何周回遅れとなっているのかわからないくらい絶望的な状況です。さて、ではペロブスカイト太陽電池はどうするのでしょうか?

記事には「日本政府が国内生産に力点を置いていることもリコーにとって追い風になる。経済産業省は24年、40年に20ギガ(ギガは10億)ワットのペロブスカイト太陽電池を国内に導入する目標を策定した。

開発企業を支援し、関連産業を育成する。従来型の太陽光パネルは中国製が多い。エネルギー安全保障の観点からも日本製の普及が求められている。リコーとNTTアノードエナジー、大和ハウスの3社は日本政府の脱炭素向け「グリーンイノベーション基金」を活用している。」とあります。

何を言っとるんだ?なんと中途半端な!突っ込み不足だ!

私は製造国粋主義者ではありません。中国に任せて安く作らせその成果を享受するというのも正解のひとつだと思っています。なんでもかんでもアメリカに製造業を取り戻せばいいというトランプは狂っています。しかしペロブスカイトはこれからの技術です。サステイナブルな世界を目指すうえで十分な戦略物資になりえる可能性を秘めています。そういうものを製造できるヘッドや装置を中国や他国に売っていいものでしょうか?

コニカミノルタひとつ取ってみても、同社はバリア性に優れたフィルムを持っていることを決算発表などでアピールしています。これってコニカミノルタが「フィルムとインクジェットヘッドで完成品」を製造しようとしているのでしょうか?或いはフィルムもヘッドも外販しますよ!と言っているのでしょうか?もし自社で完成品を作るなら、その生産技術の要となるヘッドやフィルムは「ブラックボックス」化して外販するべきではありません。もし完成品を目指さないなら部品・部材としてヘッドもフィルムも外販すればいいのですが・・・が、中国にヘッドの使い方まで含めて外販しますか?

エプソンが出資した製造装置メーカーはノーコントロールで中国にでもどこにでもそれを売るのでしょうか?

高市氏は経済安保やエネルギー安全保障に敏感と認識していますが、こういう具体論にはどこまで認識しているのでしょうか?官僚たちは認識しているのでしょうか?産総研や関連機関はどう考えているのでしょうか?考えた上で今の状態なら結構です。

が、誰も何も考えずに放置していつの間にか中国が「また」いつものように独占している・・・そんな状態が目に浮かぶのですが、それでいいのでしょうか?

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