OIJC:drupa2024 報告会 事前質問&回答 (5)

OIJC主催の drupa2024報告会にて事前質問を募集したところ、沢山のいい質問が集まりました。これを参加者だけで独占するにはあまりに勿体なく、また回答も広く募集したいのでこちらに公開いたします。回答は今回出張された何人かの専門家の方にも順次お願いしていきます。デジタル(インクジェットの)向かう方向性に関して・・・

京セラのプリントエンジン・一般的にプリントエンジンは市場トレンドか?

★ KyoceraがIJプリントエンジンを出展していました。このようなIJプリントエンジンとしての販売は、XAAR、memjet、KONICAMINOLTA(IIJ)などここ数年プレイヤーが増加傾向ですが、市場として大きくなっていきそうでしょうか?他の未参入のIJヘッド単体売りメーカーも追随する流れになりますでしょうか?

【回答者:大野
まず一般論として「YES」と思います。プリントヘッドの顧客には2通りあって「ヘッドを買ってきてプリンターを開発し、それを売ることを生業とする顧客」と「ヘッドを買ってきて内製用のプリント装置を作り、その成果物を売ることを生業とする顧客」です。

★ 後者はその為に駆動ボードやインク供給系を開発するのは必ずしも目的ではないので、そういうものをヘッドメーカーが供給してくれたり、いっそのことプリントエンジンとして供給してくれるなら有難くそれを使うでしょう。開発期間も短くて済みます。典型的にはラベル印刷業者が保有している Mark Andy社のフレキソ印刷機に「後付け retrofit」でプリントエンジンを載せ追い刷りを可能にするというものがあります。こういう事例は他にも多々あります

★ 前者の「ヘッドを買ってきてプリンターを開発し、それを売ることを生業とする顧客」の内、ワイドフィーマット機のようにある程度数が見込めるプリンターを開発する顧客は、自社で駆動基盤やインク供給系を開発するのが普通です。その方がコスト的に見合うからです。ただ、比較的ニッチで数が見込めないような用途のプリンターには、開発リソースのセーブとプリントエンジンの購入価格を秤にかけて意思決定するでしょう。

★ ヘッドメーカー視点から見ても、ヘッド単体で多数の顧客に販売して、それぞれの顧客が似たような駆動基盤やインク供給系を四苦八苦しながら開発しているのを見るにつけ「だったら最大公約数的なレベルまではつくって供給しますよ」となるのも自然な気がします。

高粘度ヘッド

★ Nazdar Ink Technologies が HighVAquaというブランドで Xaar Aquinox (100cps対応で売り込んでいる)で50cpsのインクによる印刷を行っている様子をLinkedInで見ました(drupa会場での展示として)。「高粘度インク対応のヘッド+今までインクジェットで対応できなかった高粘度インクによる印刷」という流れは、機能性インクのような狭い範囲ではなく、より広いアプリケーションに広まる可能性はあるのでしょうか。「高粘度インク対応インクジェットヘッド」というカテゴリーが確立していくのかどうか、コメントが聞けたらうれしいです。

【回答者:大野】

★インクジェットヘッドが向かう方向として、高精細は 1200dpiで行きついた感があります。またインク循環も出揃った印象です。そういう意味でも未開の荒野は高粘度ということになるでしょう

★ またインクジェットを印刷視点だけから見ていると気が付かないかもしれませんが、高粘度対応ヘッドの要望は「積層造型(3Dプリンター)」分野から来ています。XAARは在欧州のメーカーとしてこのあたりのトレンドを捕まえているということでしょう。また、欧州には Quanticaという新興インクジェットヘッドメーカーが台頭してきており、積層造型にフォーカスしたヘッドを開発しています。日本では積層造型はまだ何故かイマイチ他人事のような印象で、少なくともヘッドメーカーで公然とそれを発表しているところが無いのは残念です。

★ Quanticaについては、今回出張して視察してきたので別途報告します。

中東系の人が目立ったが?

★ 出展側としては見かけませんでしたが、参加者としては中東系の方をちょくちょく見かけました。今後マーケットとして中東圏の国々が成長する見込みは高いのでしょうか。

【回答者:大野】

★ 中東系というのはよくわかりませんが「インド系」ではないでしょうか?

★ 中東諸国は現在あちこちで戦禍に見舞われており、サウジアラビアと一部の国を覗いてはなかなか経済的は発展は見通しがたい状況にあります。

★ 一方、インドは次世代の一大市場とされその可能性は中国を上回るともされています。メーカーもインクやプリンターに有力なものが育ってきています。恐らくインド系のことかと思います。

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