ローランドDG:上場廃止へ

2024.2.10付の静岡新聞に下記の記事があります

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 ローランドDGは9日、米国の投資会社タイヨウ・パシフィック・パートナーズが設立した企業が、ローランドDGの株式を公開買い付け(TOB)で取得すると決定したと発表した。経営効率化などを目的に非公開化し、東証プライム市場の上場を廃止する。同社は同日の取締役会で公開買い付けに賛同し、株主に応募を推奨することを決議した。
 タイヨウ・パシフィック・パートナーズが設立した「XYZ」が13日から3月27日まで、1株5035円(9日の終値は3870円)で公開買い付けを実施する。買収総額は約620億円。成立後はローランドDGを存続させ、田部耕平社長が継続して経営に当たるという。
 同社の売上高の4割を占める広告・看板市場向け低溶剤プリンター市場は先進国で成熟し、今後の停滞が見込まれる。同社のシェアは約50%以上で、大幅な拡大も難しいと判断した。非公開化で、外部パートナーとの協業による効率的な製品化や、市場の変化を的確に捉えた意思決定を迅速に行う経営体制を整える。
 タイヨウ・パシフィック・パートナーズは、かつてローランドDGの親会社だった楽器メーカー・ローランドの経営陣による自社買収(MBO)にも携わった。


いくつかの側面の情報を集めてみました。

0.日経新聞オンラインの記事はこちら

1.ローランドDGの親会社だった楽器メーカー・ローランドのMBO
1)広告が多く少し読み辛くはありますが、こちらに「ローランド上場廃止→再上場で、米投資ファンドはどのように巨額利益を得たのか?」という非常に詳細な記事があります。創業者は「乗っ取られた」という恨み節を残して退任、その後死去されています。

2.社長の田部耕平氏とは?(写真は同社の「社長のご挨拶」より引用

1)こちらのサイトに略歴が掲載されています。立命館大学卒・生え抜き・米国経験豊富・関西人・・・トラキチかな?(笑)

2)こちらに野村アセットマネジメントによるインタビュー記事があります。

3.役員構成は?
1.こちらに 2022年 12月期の株主総会招集ご通知があります。

社内3名・社外3名の再任に加え1名の国際弁護士(企業法務)の方を新任(社外)として7名体制としています。また社外4名の中で3名は独立社外取締役(独立社外取締役 (Independent Directors) とは、社外取締役の中で企業の内部者から一定の独立性を有している取締役のことである)ですが、ブライアン・K・ヘイウッド氏には「独立」の表記がありません。

略歴や理由を読むと、以前に親会社だったローランドの上場廃止・再上場に関与し、ローランドDGの株主でもある「Taiyo Pacific Partners L.P.」の CEOであると書いてあります。

4.2023年 12月期のトピックス(四半期ごとの分析参照

1)Q2(上期決算)時点で下期の目標はちょっと高すぎないか?という分析でしたが、結果的にQ3で下方修正し、Q4(年間決算)ではそれにも届かず、対前年で「増収減益」(営業利益は2021年の実績ににも届かず)だった。

Q2終了時における年間予想を達成するには、下期はかなりの数字を達成する必要があるように見えていました。

Q3ではそれを下方修正しました。

Q4=年間決算実績はそれを更に下回っています。

2)このような状況下で Q3に期末配当予想を上方修正しています。

しかしながら 2月 9日で発表されたアナウンスで、無配とする決定が公開されています。

私は企業法務に関しては詳しくはありませんが、Q3決算時点で(計数的には年間見通しを下げながら)増配を謳い、その僅か3ヵ月後の年間決算時には MBOで上場廃止に向かうことに関連して無配とする・・・これって一般株主的にはどうなんですかねえ?まあ、それまで 3,800円くらいだった株価が 5,000円くらいに値上がりしたから売却してハッピーだからいい・・・というコトなんですかねえ?でも、何のために増配を発表したんだろう?

3)2023年 11月 1日に本社新社屋が稼働開始したとのことです(画像は同社のサイト・記事から借用)

5.コメント

特にありません(笑)

同社のニュースリリースを見ても、TOB(株式公開買付)に関する事務的な情報だけで、その趣旨や目的に関しては(私の探し方が下手なのか)記述が見当たりません。静岡新聞が「経営効率化などを目的に非公開化し・・・」と書いていますが、株式を非公開化すると経営が効率化されるのでしょうか?その因果関係がイマイチ明確ではありません。

・・・とはいえ、上場企業の役員経験者としては、正直に申せば実は理解できないこともありません。上場企業というのは一般株主や大株主に対しての説明責任(accountability)があり、時としてそれが行き過ぎると茶番劇のような煩わしさがあるのも事実で、それが経営のスピード感に影響を与えかねないこともあることを否定はしません。

透明性とかガバナンスとかを懸念する向きもいるか知れませんが、上場しているから、見かけのカバナンス体制が美しく整っているからと言って、それが機能しない例もあります。上場だけが最適解でないことは明らかです。役員の顔ぶれはそのあたりを熟知されている方々とお見受けしますので、心配ないでしょう。

ローランドDGと言えば、ワイドフォーマット機や特殊な産業用プリンター、その他で世界に通用する日本企業として業界に大きな存在感のある企業です。大事なことは「経営効率化をした結果として、その存在感やステイタスを更に向上させ発展していく」という結果を出すことです。役員構成を見ると、錚々たる経営のプロの方々が揃っておられるようでなので、そこは十分に力を発揮されるものと信じ、前途にエールを送りたいと思います。

まあ、あえて懸念点と言えば・・・生え抜きで事業や業界に通じている方が手薄に見えることでしょうか・・・

また、静岡新聞には「非公開化で、外部パートナーとの協業による効率的な製品化や、市場の変化を的確に捉えた意思決定を迅速に行う経営体制を整える」・・・とあります。例えば主力グラフィック分野のラテックスインク機はいろいろ素晴らしいことが書いてありますが、これってブラザー工業の開発製品ですよね?外部パートナーとの協業による効率的な製品化・・・とはこういうことを増やしていくということでしょうか?メーカーの存在の源泉は開発力・技術力に尽きますが、自前の技術の強化や方向性にも言及が欲しかったところです。

・・・それと・・・関係ないですが、上場廃止=>再上場なんてことはないんでしょうね?(笑)

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