- 2018-2-1
- Nessan Cleary 記事紹介
今月初め(1月初め)に富士フイルムとゼロックスが何らかの取引を話していたことが広く報道されていましたが、ここで米国ゼロックスが富士ゼロックスの合弁事業に吸収統合され、富士フィルムがその50.1%の株を所有するマジョリティのオーナーとなることに両社が合意するという結実をみました。
残りの49.9%は、ゼロックスの株主が保有し、25億ドルの特別配当金、1株当たり約9.80ドルを受け取る予定です。富士フイルムにとってはキャッシュアウトは無く、富士ゼロックスの75%の株式を効果的に利用して資金を調達する仕組みです。この買収額は61億ドルと評価されます。
新会社は引き続き富士ゼロックスと呼ばれます。当面の間、ゼロックスと富士ゼロックスのブランドは、それぞれの西洋およびアジア市場で引き続き使用されます。引き続きニューヨーク証券取引所に上場し、米国と日本の両方に本社を維持します。新会社は、現状のゼロックスの1株当たり年間配当金$ 1.00を維持し、フリー・キャッシュ・フローの少なくとも50%を株主に還元するという約束をします。
ジェフ・ヤコブソン氏は、辞任要求があったにもかかわらず、新たな富士ゼロックスの最高経営責任者(COO)として続投しますが、辞任要求が、こういったディールを後押ししたということです。富士フイルムの会長兼最高執行責任者(COO)の古森重隆氏は、富士ゼロックスの取締役会長になり、富士フイルムは12人の取締役のうち7人を指名します。
新会社は総収入180億ドルをば上げなければなりません。概ね最初の3年間で、一過性統合費用と再編費用は約14億ドルになるでしょう。しかし、同社は2022年までに年間17億ドルのコスト削減を実現することができ、2020年までに約12億ドルの総コスト削減を達成することができるはずです。コスト削減の多くは人員削減から生じます。富士フイルムは、約1万人の削減をすると発表しています。
古森氏は、「富士フイルムとゼロックスは、既存の富士ゼロックス合弁会社を通じて優れたパートナーシップを育んできました。この取引は、我々の同盟関係の戦略的進化です。ドキュメントソリューション事業は、富士フイルムのポートフォリオの重要な部分を占めており、新しい富士ゼロックスの創設により、急速に変化する市場においてリーダーシップの地位をより直接的に確立することができます。我々は、富士フイルムの画期的なイメージングおよび情報ソリューション(特にインクジェット、イメージング、AI分野)における技術進歩の実績が、新しい富士ゼロックスの成功の重要な要素となると考えています。」と述べました。
富士ゼロックスは1962年に50/50合弁会社として設立されましたが、富士フイルムは2001年以来75%を所有していました。皮肉なことに、元々はゼロックスが技術開発はしっかりと主導権を維持するという前提の下で、アジア太平洋地域へのよりよいアクセスも求めて富士ゼロックスとの合弁会社を設立したのだったということです。しかし、近年、富士フイルムはこの技術の多くを開発しており、富士フイルムはアメリカ市場へのアクセスを向上させるために、効果的にXeroxを買収したのです。
もちろん、本当の課題は、富士フイルムがXeroxを掌握するのにどれくらいの時間がかかるかということです。オリジナルの富士ゼロックスは、まれな、成功した長期的なパートナーシップでしたが、事業全体を引き継ぐことはかなりの背伸びとなるでしょう。また、今回の買収により、富士ゼロックスはオフィス用のプリンターの最大手プロバイダーとなりましたが、今日ではデジタル化されたドキュメントが増えているため、この分野は縮小しつつあります。 XeroxはImpikaで優れたインクジェット技術を持っていますが、富士フイルムがこれを最大限に活用するためには、いくつかのリストラが必要です。富士フイルムは近年かなりの数の企業を買収し、それらを完全に統合するために、かなりの時間を要しています。(■大野註:富士フイルムは2006年にヘッドメーカーのDIMATIXやインクメーカーのSERICOL、色材メーカーのAVECIAなど一連のインクジェット関連企業群を買収したが、その統合はいまだ道半ばと言っている)
このディールは、通常の規制当局の承認の対照であり、今年下半期までは完了しません。