ドイツの総選挙 2025の結果

ドイツで総選挙が行われました。結果は報道などでご存知と思いますが、既存政党で最大野党だった中道右派の CDU/CSUが 29%獲得して第一党となり、極右政党の AfD(Alternative fuer Deutschland ドイツの為の選択肢)が 20%を獲得して第2党となり、中道左派で現ショルツ首相が所属する SPDは第3党に転落しました。

ARDの tagesschau.deの選挙特集のページには様々な角度からの分析やチャートが掲載されていますが、私が特に注目したのは下のチャートです。

左側の地図は、東西ドイツが分かれていた頃の西独・東独とベルリンの位置関係ですが、右の地図で示される「AfD:Alternative fuer Deutschland ドイツのための選択肢」が第一党となった地区は、僅かな例外を除いて旧東独とピッタリ重なります。

ご存知のように、私は「誰も知らないドイツの町」シリーズで旧東独のあまり知られてない町を歩いていますが、そこでの実感はこういう極右政党を支持するのもわからないでもないな・・・ということです。統一後 35年が経ってもなお廃墟化した家屋が散見され、失業率は高く、賃金水準は低い。旧西独の小都市とは違って、スーパーマーケットなども Netto、Kaufland、Didlなどの廉価品主体のものが多く、衣料品スーパーも Muellerや Woolworthなどの品質より低価格重視のが目立ちます。Buerger zweier Klasse(二級国民)として扱われているという根深い劣等感が底流にあるのです。

そして昨今では中東やウクライナから流れ込む難民・・・高度なスキルを身に着けている人材は高賃金を求めて旧西独に行きますが、大多数のドイツ語さえ満足に喋れない層は物価の安い旧東独に留まり、清掃や皿洗いなどの汚れ仕事を引き受け、またネオナチから身を守るために集団で棲み、周囲ともあまり交わりません。ドイツ人が経営していた飲食店は後継者がおらず廃業に追い込まれ絶滅していく一方で、中東系のケバプ屋やベトナム料理屋や多国籍のピザ屋が増加していき、アラブ人の為に髭を調髪する床屋が増えていき、町の景観も変化していきます。

そういった中で、失業した・するかもしれないドイツ人を中心に危機感が募り「移民政策の失敗」を主張し、外国人排斥を主たる政治目標にして活動する AfDに支持が集まるのです。東西ドイツの壁は撤去されて 35年が経ちますが、今も尚、見えない壁は存在し続けている、いやむしろ高くなったのかもしれません。AfDはその過激な主張や戦前のナチスを想起させる振る舞いもさることながら、プーチンのロシアとの人的・資金的な繋がりを指摘されたりしており、この政党と連立を組むことは自殺行為としてどの政党も拒否しています。

このページのグラフの上から数枚目に「KOALITIONSRECHNER(連立計算機)」というのがあります。薄くなっている政党の棒グラフをクリックで任意に選ぶと下の表示され、複数の棒グラフをクリックするとその合計が過半数に届くかどうかが分かります。いろいろな組み合わせをお試しいただければと思いますが、結局 CDU/CSUは SPDと大連立を組むしか選択肢は無いように思われます。以前はキャスティングヴォートを握っていた FDP(Freie Demokratische Pateri:自由民主党(笑))は今回得票数で 5%を割って議席を失ってしまいました。

私は個人的には AfDという政党を信用していません。プーチンのロシアと人的・資金的な繋がりがあるとされ連邦警察・検察の捜査も受けています。2014年にプーチンがクリミアに侵攻し違法に占拠した際には、ドイツの政党(?)として唯一、ロシアのアゴ・アシ付きでクリミアに視察に行き接待を受けて、その後ロシアを支持しています。移民・難民の排斥には一定の理もありますが、それを利用してプーチンがドイツに混乱をもたらそうとしても不思議ではないからです(同じことはフランスの極右ルペン女史にもいえます)

もう一つ注目したのは「2025年連邦議会選挙:投票率は83~84%に上昇 連邦議会選挙の投票率は、ここ数十年で最高となる見込みである。ドイツでは、有権者の5人に4人以上が投票所に足を運んだようだ。2021年よりも大幅に多い」という記事です。日本では「自分が一票入れたくらいでは何も変わらない」という政治不信や諦めから、もう信じられないくらいの低投票率が更に毎年下がっている印象ですが、ドイツでは少なくとも「それでも投票して意思表示をすることの大切さ」が浸透しているように見えます。

それは近隣にロシアやベラルーシのように「強制的に投票させられ、プーチン或いはルカシェンコに投票しなければ、それが分かる仕組みになっており後刻憂き目に遭う」というフェイク選挙をやってる国を横目で見ているからと思われます。少なくともドイツには選挙制度と民主主義への信頼はまだかろうじて存在しているようです。

最後に「次の内閣はどの政党が担うのがいいと考えますか?」という問いに対するアンケートです。これだけ伸びて第2党にまでなった AfDですが、この問いに対してはいまだ3位で2位の SPDに水をあけられています。今の目の前の課題については AfDを支持しても、政権担当能力はまだまだ・・・と見られているということでしょう。ちょっと安心する次第です。

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