- 2024-1-8
- 新年ご挨拶
自分に関することも少し振り返っておきます。
1953年生まれの私は昨年 70歳、古希という節目を迎えました。「え?噓でしょ」などと言って頂くこともありますが、不都合な真実であります(笑)お陰様で、まだまだ暴飲暴食をして痛風を発症するくらい元気で(笑)、昨年はコロナ禍が一段落してフル復活したヨーロッパの主要な展示会・業界イベント5件に出張し、「産業用インクジェットの今」を見てきました。
10月末には 2022年に続いて 2回目となる、業界各社・関係者が一堂に会するイベント「JITF 2023」を開催し大きな反響と好評を頂きました。皆様のご支援に感謝しております。
その際に、自分のライフワークともいうべき長年の憧れの地や街・建物を訪問してきました。また、かつて住んでいた町で、そろそろいい歳に熟してきていつ何時鬼籍に入ってもおかしくはない(笑)現地の旧友・戦友たちにも会ってきました。円安は痛かったですが、こういうことは Pricelessだろうと思っています。その総括はこちらに全 9回の記事があります。同じ世代の諸兄には参考になろうかと思いますので、よろしければご笑覧ください。
こう書くといかにも幸せな一年だったように思われるかもしれませんが・・・実は2月に次男が交通事故に遭い、生死の境を彷徨って・・・一時は親として葬式を出すことも覚悟しました。奇跡的に一命は取り留めたものの、4か月の長期入院を余儀なくされ、今も松葉杖が必要な状況です。子供が親より先に逝くことを逆縁というようですが、これだけは絶対に有ってはならないことというのを身に沁みて体験しました。
今でこそ 「1985年、阪神タイガースが日本一になった年に生まれ、2023年に 38年ぶりに日本一になった年に死にかけたな(笑)」と冗談を言えますが、人生最大のヒヤリハットではありました。
そろそろ潮時・引退を考える歳なのか?その逆です(笑)これからは毎年が節目だと思って、一年一年楽しんでやっていこうと思いますし、その中で、これまでにも増して業界の発展に最大限資するような貢献をしていきたいと思っています。かつては「歳は取りたくないもんだね」と思っていましたが、今や大方の企業の経営者よりも年上になってみると、私のような者の経験値の話も一定のリスペクトを以って聴いて頂けますし、それなりの説得力と貢献感を感じています。
もう若かりし頃のように★欲が先に立つことも無くなると(え、若い頃はそうだったのか?(笑))逆に女性にもモテている気さえします・・・あ、これは錯覚というやつか(笑)
JITF2023に来日した Nessanと呑んでじっくり話し込んだ際に「Nessanはいつ引退するつもりなんだい?」と訊いたところ、暫く考えた後で、そういうことは考えたことが無いなあとのこと。なんで?と突っ込んだところ・・・またしばらく考えて・・・“This is my life”との答えでした。この「life」という言葉、(収入を得るための)生活とか、生き様とか生き甲斐とか生きる愉しみとか、人生そのものとか・・・様々な訳や解釈が可能かと思います。恐らくそれらが合わさってすべてを含んでいるのでしょう。
言われてみみれば、そういうことやな!と妙に納得した次第です。That’s my life…人生、後半戦がオモシロい、なんでここから引退なんて発想が出てくるの?・・・そんな気分です(笑)
私の目から今の産業用インクジェット界がどう見えているか?
そろそろ本題について書きましょう(笑)「コロナ禍の間に加速した eコマースやネットビジネスとの相性の良さからインクジェットによるオンデマンド印刷の普及が多方面で加速した」「広告物のプリントから、DTGや DTFなどのグッズプリントに広がり、次に期待されるのはパッケージ印刷だ」・・・このあたりは目に見える動きとして皆さんも感じられておられることでしょう。
「所謂『印刷物』から、積層造型(AM)や電子部品製造(PE)への展開が始まりつつある」・・・これも情報としてはありますが、一方で自動車業界や電子部品業界の高度な情報統制によってなかなか全貌は見え辛いという面があります。ただ、自動車やスマホや情報家電が劇的な進化を遂げるなかで、確実にコトは進んでいます。そういった中で、ここだけは日本が独占していると信じられてきた・・・あるいは心の拠り所としてきたヘッドも、日本以外の国から新規参入が複数あります。
また前編で「世界の分断」に触れましたが、中国は分断の向こう側にいるので、かつてのように気軽に往来し辛い状況にあります。が、G7系西側先進国の世界が、SDGsなどを標榜し、ニッチな小ロットもの・総計としては大ロットでも、そのマイクロバージョニング的なものに効率のよいインクジェット(オンデマンド)を適用するという方向に走る中で、中国は「ストレートに」マスプロダクションシステムをインクジェットで実現しようとしているように見えます。
環境だ、SDGsだ、だからこれからは顔料だ?フン、そんなの関係ねぇ(笑)とばかりに、従来のスクリーンによるマスプロダクションをインクジェットで実現しようとしているように見えるのです。かつで世界のそういう量産用生産設備や工作機械の頂点にいたドイツや日本のポジションを、インクジェットでは中国が獲得してしまう勢いを感じます。このあたりの事情は、ITMA ASIA上海にトランジットビザで潜入を果した(?)元コニカミノルタプリンター開発部長・現縞猫商会社長の松井さんのレポートにありますし、またご本人も3月に出張報告講演を予定されているので是非参考にしてください。
こちらに日本の包装資材印刷会社に導入された中国製の段ボール印刷機(ざっくり言えば EFIの NOZOMIの中華版)の動画がありますし、下の YouTube動画は深圳の潤天智(FLORA)のプリンター量産工場の様子です。
日本のメーカーや日本全体が、今一つ現状維持的なスローな動きしか出来ていない中で、海外ではごく当たり前に物事が進んでいるように私からは見えているのです。
あと、インクジェットのコア部品としてのヘッド・・・私が産業用インクジェットの世界に身を置いた 2000年初頭には、ヘッドの専業メーカーが複数存在し、またグループ内にプリンター部門がある企業も「ヘッド事業とプリンター事業は情報コンタミや原価でヘッドを渡すことはしていないよ」というポーズをとっていました。
ヘッドの顧客(=プリンターのインテグレーター)も「プリンター部門を抱えているヘッド屋からは買いづらい」というようなことを平気で口走っている時代でした。ちょっと考えれば、ヘッドを開発製造できるメーカーは世界に 10社程度しか無いのでインテグレーターが皆そういうことをいうと、インテグレーターの数も増えないことになってしまうわけですが・・・
それが、昨今ではそういうタガが外れた感じです。エプソンは自社で優秀なプリンタを開発しながら、ヘッドもオープンに販売する道に舵を切りました。長年、孤高を保ってきた京セラもグループ会社のドキュメントソリューションと協力してテキスタイル機に参入しました。昨年末には東芝テックのヘッド専業部門も理想科学の傘下にはいるという発表がありました。
コトの是非・善悪の問題ではありません。それが現実なのです。大事なことは、その両方を傘下に収めた経営責任者はその企業の「Mr.Inkjet」となってこれからのシナリオを書き、顧客や従業員を含むステークホルダーに明示・提示し、その実現に向けて自らがプリンターとヘッドの全部隊を引っ張って行く責任があるということです。
プリンターには想定ユーザーがあり、そこにはニーズがあります。同様にヘッドにも想定ユーザーがありそこにはニーズがありますが、それは必ずしも同じグループのプリンターのニーズと一致するとは限りません。なにを優先してヘッドの商品開発や技術開発を行うのか?どんな世界を想定してロードマップを作っていくのか?
経営は煎じ詰めれば「リソースマネジメント」です。無限のリソースなどありません。有限のリソースを、何を目指してどう配分していくのか?それを決めて実行するのは両部門を纏めたその上の Mr.Inkjet of the companyの最重要な仕事です。楽しい仕事です(笑)健闘を祈ります。
OIJCとして今年(も)やりたいこと
1.JITF 2024を主催します
原則として秋を想定しています。日時に関しては今月中に決めて発表予定です。ここ2回はそれぞれ約 40社の出展を得ましたが、お試し出展などのコーナーも設けて 60社位の出展を目指したいと構想しています。また、コロナ禍も一段落したということで海外からの出展社数も増やし、OIJCのミッションである「海外と国内のブリッジ役」を更に強化したいと考えています。
今年は drupa出張もあるので、それが終わってからでは着手が遅いと考えられ、始動を早めにと考えています。
2.drupaに行き、あらゆる手段で盛り上げます
かつての四大印刷機材展が、無くなったり、力を失ったり、他の展示会と統合したりする中で、drupaはまあ世界遺産的な存在と思っています。勿論 drupaも変わる努力が必要でしょうし、実際やっていますが・・・無くなってしまった世界を想像するだけで、そこはかとない喪失感を感じます!
3.諸テーマのセミナー、講演会を主催します
私以外の情報ソースをお持ちの方・コミュニティメンバー企業の発信を積極的にサポートしていこうと思います。
また、私自身の発信としては、かなり前からの構想であった「理系の為のバランスシート入門」という講座を開講したいと考えています。このメルマガや OIJCサイトの読者の多くは理系・開発・技術畑の方で、ここまで簿記などを習う機会は無かった方も多いと想像しています。私自身もナンチャッテ理系(笑)で学校で習ったことは有りませんが、偶々縁あってドイツに赴任した冬に、大雪で外出もままならなかったペンション暮らしの日々に、持参した簿記の教科書を読んで、練習帳に記帳して目からウロコが落ちた記憶があります。今年は、出来るだけ多くの理系の皆さんの目からウロコを落としてみたいと思います!世界が変わりますよ、マジで(笑)
こう書くと毎年と大きくは変わりませんが、年々自分自身の経験値も増え、より上手く情報を伝えられるように日々進化しているつもりです。ご期待下さい。また持ち込み企画・ご提案なども熱烈歓迎いたします。お気軽にご提案ください。
なお、他に書くところが無かったので、最後にここで書きますが・・・Linkedinに関してかつてこんな「アジ演説」(笑)をしました。こんなこと「日本の企業は「持ち帰って相談」ばかり…ドバイの経営者が「韓国や中国のほうがやりやすい」と話すワケ:ドバイに来るのは、日本は課長、韓国はトップ!」という記事も書きました。最初の記事からは 6年経った今、毎朝の一般紙サイトのニュースを読む前にチェックしている Linkedin投稿で見かけるインクジェット業界の日本人は着実に増えています。Linkedin経由でメッセージを頂くことも増えました。
脱ガラパゴスジャパンの推進を目指す私としては嬉しい限りです。ガラパゴスジャパンでしか生きられないトカゲは置き去りにして、世界と自然体で繋がりましょう!
本年もよろしくお付き合い下さい。皆様のご健勝とご多幸を祈念致す次第です。