京セラ:NIXKAを買収

2023年3月28日

京セラは、インクジェットプリントエンジンを開発するフランスのニクスカ社の株式を100%取得し、2023年4月1日より「Kyocera Nixka 」となります。

ニクスカは、2013年にゼロックスが買収する前のインピカ社の遺灰から2020年に設立された会社です。インピカは2003年に設立され、代表取締役のポール・モルガビ(Paul Morgavi)を含むコアチームのほとんどはジェムプラス出身で、クレジットカードやスマートパスなどのプラスチックへの印刷技術を開発していた。同社は、高解像度と高生産性を両立させたiPrint Extreme(写真上)のような、非常に革新的でカラフルなシングルパスインクジェットプリンターを数多く発表しました。

しかし、インピカはゼロックスに買収された後、初期の期待に応えることはできなかったようです。ただし、ゼロックス買収前にコンセプトとして発表していたロールtoシートプリンター「Rialto」は生産していました。Drupa 2016では、シートフィードの Brenvaとロールフィードの Trivorを発表し、翌年には Trivorをオフセット紙に印刷できるようにする High Fusionインクセットを発表しました。

そして2019年、ゼロックスはインクジェットの開発を米国に集中させるため、フランス・オーバーニュの拠点を閉鎖し、インピカチームを切り離しました。当時、京セラと EFIがフランスの資産買収に興味を示していましたが、交渉は決裂し、ゼロックスはオーバーニュの事業を閉鎖しました。しかし、その裏で Morgavi氏はニクスカを設立し、インピカを継承する会社として売り込んできました。実際、新会社はマルセイユ近郊のオーバーニュに拠点を置き、13人のスタッフの多くが以前インピカで働いていたようです。

ニクスカは、製造ラインに組み込むことができるオーダーメイドのインクジェットソリューションを主に開発しています。そのため、同社は市場分析や概念実証を主に行っており、差別化要因として説明されていますが、実際には産業用インクジェット統合プロジェクトに関わる他のすべての人と同じです。(大野註」例えばコニカミノルタヘッドを採用しているケンブリッジの Industrial Inkjet社(IIJ)などはその典型)

このほか、ニクスカが開発したプリントエンジン「Fenix」は、ピエゾヘッドとリサーキュレーションを採用し、400mpmでプリントできます。モノクロシステムで、異なる印刷幅、解像度、速度に対応することができます。フレキソ印刷機、オフセット印刷機、グラビア印刷機のほか、仕上げシステム、パッケージングライン、製造工程など、既存の設備に組み込むことができます。昨年、欧州と北米に拠点を持つ紙パッケージ専門企業の顧客サイトに設置されたのがその第1号機です。

また、ニクスカは、商業印刷、写真印刷、フレキシブルフィルム用途向けに、解像度1200dpiと2400dpiの高品質プリントシステムを開発中であると述べています。京セラは、ニクスカが自社のプリントヘッドを使用していると述べていますが、ニクスカ自身は富士フイルムディマティックスとメムジェットをパートナーとして挙げています。

また、ニクスカは、EUの研究プログラム「Horizon Europe」の一環として、有機廃棄物を持続可能なインクなどの持続可能なバイオベースの部品に変換し、パッケージや繊維の用途に使用することを目的とした「Waste2BioCompプロジェクト」の資金を獲得しています。

京セラは、この買収を機に、「プリントエンジン、システム、統合サービスなど、新たな市場への事業拡大を図る 」としています。京セラのプレスリリースには、「インクジェット印刷技術の普及を促進する 」といった毛色の違う文言が並んでいますが、この買収の背景にある論理は的を射ています。産業用インクジェットを発展させる、つまりプリントヘッドを販売するための最良の方法は、製造工程でインクジェットがどのように使用できるかを示すことができる特注の統合プロジェクトです。だから、この分野に特化した企業を買収することは、非常に理にかなっていると思われます。昨年、富士フイルムがユニグラフィカ(リヒテンシュタイン)を買収したのも、これと同じ理屈です。

また、京セラがインクジェットプリンターでプロダクションプリンター分野に進出していることも注目すべき点です。同社は TaskAlfa 15000Cで成功を収め、昨年の東京で開催された IGASでは、この製品群をさらに発展させ、来年にはコート紙への印刷が可能な新しいプリンターを開発する計画を明らかにしました。京セラは今後、他の市場分野でもインクジェットプリンターを開発していくと思いますが、これは京セラドキュメントソリューションズという別部門で行っていますが、ニクスカも協力することになると思います。

ニクスカは、モルガビ氏らがインピカで実績を積んできたこともあり、インクジェットに関するノウハウが豊富なのは間違いありません。しかし、外国企業を買収したからといって、それを成功させることができるかというと、ゼロックスがインピカ買収でうまくいかなかったように、必ずしもそうではありません。しかし、京セラの出資を受けたニクスカがどのような製品を生み出すのか、興味深いところです。

詳細は nixka.frkyocera.comでご覧いただけます。

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