中高の英語教師「河合先生」の思い出(1)

神戸の中学高校の六年一貫校で、その六年間を通じて英語の担任だった河合善造先生の訃報が届きました。この正月には、例年通り年賀状をやり取りして、いまだお元気な様子を確認していたのに・・・

まあ、先生に習った言葉「Man is mortal(人間はいつかは(死ぬ運命にあるのだ))」と言えばその通りで、90歳近くまで生きられて天寿を全うされたと思えば、それはそれで目出度いことと思う次第です。

なによりあの当時、先生を「呪っていた」(笑)私を含む劣等生どもが、自分が今在るのは先生のお陰・・・と、心から感じていることが「目出度い」所以です。

以下は「Man is mortal, Oil is Mobil」(笑)なんてアホなことを言っていた劣等生の回想です。

1.読んだ本

英数国の主要三科目の担任の中で、数学の長光先生と英語の河合先生は、いろんな意味で対照的でした。ずんぐりした長光さんに対し、スラっと長身だった河合さん、出来たら褒めてくれた長光さんに対し、滅多に褒められた記憶のない河合さん・・・まあ、当たり前ですが先生の個性ってありますね。それが、12歳で中学に入学し、17歳の高校三年までずっとお付き合いすることになるんです。これは「濃い付き合い」になりますよね!

滅多に褒められたことのない河合先生に、なんとか認められたいという、子供なりの「承認欲求」というやつでしょうか(笑)、結構英語の本は読みました。中間テストや期末テストの裏側に「最近読んだ本」として、その感想文を書いたりしたものです。「これを読め!」と言われた本は実は一冊も無いのですが、「こんなの読みましたぜ!」といえば「ほう!」と思ってもらえるかもしれない・・・そんな、十代半ばの子供の背伸びだったのでしょう。大阪梅田の旭屋書店の洋書コーナーでいろいろ買いあさったものです。思えば、あそこは、自分にとっての世界との接点でした!

でも・・・今にして思えば、そういう背伸びで、自分の「背丈」が実際に伸びたのも事実と感じているのです。その時には、先生も自分もそういう意図は無かった(かもしれない)・・・でも、五十年経った今「先生に認めてもらいたくてやったあの背伸びって、意味が有ったんだよなあ」と思えること・・・これが、恩師の恩師たる所以なんだろうと思う次第です。↓↓画像はクリックするとスライドショーになります。これは今、手許に残っているものの一部です。

「星の王子さま」は定番ですね~!今でも書き出しの数行は暗唱できます。いろんな国に出張すると、その国のバージョンがあって、つい買ってしまいそうになる自分が居ます(笑)。

「セールスマンの死」・・・これはシリアスな戯曲で、Wikipediaに解説もあります。かつては「ドブ板営業」で実績を上げてきた老セールスマンが、戦後普及してきた電話を使う「電話マーケティング」についていけない。長男はニートに・・・なにか、現代の「家庭内に問題を抱え、スマホやネットセールスの時代についていけない高齢ビジネスマン」を先取りしているかのようです。

ジョージ・オーウェルの「1984年」・・・私が読んだのは1972年頃で、書かれたのは1949年・・・今は2022年なわけですが、この「思想統制の監視ツール」というのは「液晶テレビにアレクサが搭載された・・・ようなもの」なんです!こんなものを、1949年に想像・構想できていたことに驚きです。

スティーブンソン・・・って、あの「宝島」の作者ですが、詩集も遺しています。今でもいくつか暗唱できますが(というか、若い頃に覚えないと暗唱は無理(笑))・・・英語の詩って「韻を踏む」ということを学びまして・・・で、自分も韻を踏んだ詩を書いて、答案用紙の裏に書いて提出した記憶があります。鉄ちゃんだったので、現役を引退しつつあった蒸気機関車の栄光と落日について編んだものですが、その詩は河合先生に「ここで、詩人が誕生いたしました・・・」と、教室で朗読して頂いた記憶があります。後にも先にも、中高を通じて河合先生から褒めて頂いたのは「この時限り」だったように思うのです。

(この項、続きます)

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