- 2021-9-1
- 日記的備忘録
有限責任って言葉がありますね。元は会社法などで使われる言葉ですが、ここではちょっと違う話を書こうと思います。最近のマネージャーって「有限責任マネージャー化」してませんか?
「有限責任」って言葉があります。有限会社という、かつて存在した会社の形態で「会社が倒産した際に、『出資したお金が戻ってこない』ということを限度として、それ以上債務などには責任を負わない」・・・株式会社も同様で、これにより責任限度が明確になるため、資金を集め易くなり、企業活動が発展したとかなんとか・・・。これに対して、無限責任会社は個人商店などで、倒産の際には債務に対して自分の財産を処分しても返済する責任を負う・・・というものです。
ま、それはそれとして、私はこの「有限責任」という言葉を聞くと「株式会社って、トップから下っ端まで『有限責任』ばっかりだよな」と思うことがあります。開発・生産・営業・・・その間に商品企画・生産技術・物流・品証・生産管理・アフターサービスなど様々な部門があり、そこに「担当」役員や部門長がおり、更にまたそこが課・グループに細分され、各々に課長やグループリーダーが居る。
それぞれのタスクや責任・権限はジョブディスクリプションや権限規定で定められており、一見「美しい責任権限体系」を形成している様には見えます。また通常のルーチンの仕事の範囲では一般的に破綻なく回ります。ところがイレギュラーな案件が突発的に起こった時、殆どのマネージャーは「有限責任範囲を内輪にとらえて」その範囲を超えようとしません。自分の責任の範囲「だけ」を全うすれば「少なくとも責められることはない・責められるいわれは無い」という発想です。
仕事って、常に安定したルーチン案件ばかりではなく、実際には細かなイレギュラー案件が常時降ってくるものですよね。組織間のコミュニケーションがうまく成り立っていれば、マネージャー同士の話し合いで「じゃ、今回はウチでやっとくワ」などと柔軟に処理できたりするものですが、そうでない場合はどちらも手を出さず「ポテンヒット」となりがちです。フラフラッと上がった浅いフライ・・・前進するレフトと、追いかけるサードとショート・・・最後は譲り合って間にポトリと落ちるヒット・・・
私が現役で事業責任者時代に一番嫌いだったのがこれです。守備範囲を譲り合って、身を挺してレフトがショートの守備範囲に飛び込めばアウトにできたものを・・・ボールが地面に落ちるまでお見合いしてしまう。担当部門長からしてみればお互いの守備範囲を尊重し、自分の責任範囲はちゃんとやった・・・ということでしょうが、監督にしてみればヒットを打たれたことには変わりはないのです。
こんな時、監督だった私は、自らベンチを飛び出して身を挺してボールをキャッチにいったりしていました(笑)とりあえずポテンヒットになるのは防げますが、あまりやってはいけない非常手段ですね・・・まあ、それでも結構やってましたが(笑)
こういう一見「美しい責任権限体系」が機能するためには、ポテンヒットになりそうなことは、その上位のマネージャーが状況を常に見ていて、ボールが地面に落ちる前に「サード!(が取れ!)」と明確に指示を出すことですね。その機能をキャッチャーが代行しています。
しかし、更にいいのは、日頃から上位のマネージャーや役員が「責任の狭間に落ちそうな案件は誰かが身を挺して取りに行け!多少相手の領分を侵したり、曖昧な領域に飛び込んでも構わない!上手くいったら褒める、失敗しても責任は問わん。ボールを地面に落とさないことが最優先だ!」ということを叩きこんでおく、そういう明確な発信をすることでしょう。失敗したら責任を問う減点法ではなく、領分を侵しても成功したら褒める、失敗しても責めない加点法・・・これが「一見美しく見える責任権限体系」を機能させる必須要件の様に思います。・・・なんか、当たり前のこと言ってますね(笑)
そういう目で、もう一度会社というものを眺めてみると・・・これを意識してやっている上位職・役員ってほとんど見当たりませんね~!言葉は巧みだけど、結局は「自分がやります」って言っていない。自分(自分の部門)にお鉢が回ってこないように立ち回る・・・それって、究極は社長の責任です。社長は最後の砦ではなく、最初にミッションを発信するべき人です。会社は結局社長次第です!
一見「美しい責任権限体系」の最たるものは「お役所」です。民間企業・大企業のお役所化がいわれて久しくなりますが、結局社長が仕事をしていない・・・これに尽きるのではないでしょうか?あいまいな社長が「有限責任マネージャー」を生み出している・・・違いますか?