世界のインクジェット関連コンファレンス事情(1)

The IJC ( The Inkjet Conference ) 毎年10月にデュッセルドルフで開催される産業用IJのコンファレンス

The IJC ( The Inkjet Conference ) 毎年10月にデュッセルドルフで開催される産業用IJのコンファレンス

どの産業にも、業界に関与する企業を包括して参加を呼びかけ、技術成果の発表、情報の流通やトレンドセットなどを行う「業界コンファレンス」が存在します。またその上流に、産学がアカデミックな研究成果を発表する「学会」も存在します。その境界は比較的あいまいで、学会と業界コンファレンスの両方の性格を持つものもあります。

インクジェット業界以外はあまり詳しくは存じておりませんが、例えばディスプレイの世界にはSID (Society of Information Display ) があり、世界の錚々たるプレーヤーが参加して技術成果の発表やトレンドセッティングを行っています。この下部組織として「車載ディスプレイ」分野に特化した SID Vehicle というのもあり、自動車産業のメッカともいうべきデトロイトで毎年、車載ディスプレイに関するコンファレンスが開催され、自動車メーカーやディスプレイメーカー、材料や部品メーカーが一堂に会し、情報端末化や自動運転がトレンドなりゆくなかでの車載ディススプレイはどうあるべきか?あるいは、こうあるべきと考えるが皆さんはどう考えるか?といった議論がなされています。

またプリンティング(イメージング)分野では古くからNIP(Non Impact Printing)という学会があり、主として電子写真技術に関する技術発表が行われてきました。今日では電子写真の成熟に伴い主体はインクジェット技術に移りましたが、今も連綿と続いています。またインクジェット化に伴い、イメージングに加えて「モノづくりへの応用」として Digital Fabrication という分野にも範囲を広げつつあります。

また、このような学会(業界コンファレンス)では各メーカーが小間を出し、製品や技術の小規模なデモを行うのが通例です。展示会では、この小間が大きなブースとなりますが、コンファレンスも併催されるのが通例です。要は「発表とデモ」がセットとなっている点では同じ構造で、発表に重点があるのが学会(業界コンファレンス)、デモに重点があるのが展示会ということです。

日本企業が勘違いしがちなのは「展示会は、ブースを設営しマシンのデモをすればいい」と思いがちなことです。併催されている業界コンファレンスでプレゼンを行わないと、折角の投下費用が十分に活かされません。もったいない!もしブースを出さないなら、プレゼンだけでもやるといいです。参加費用はたいてい無料なので、費用対効果は非常に大きい(無限大)です。展示会に単に視察に行くより余程いいフィードバックが得られます。座って他社のプレゼンを聴くだけでも得るものは大きいですが、自らプレゼンをするということは業界にインボルブすることであり、そこから得られる情報は単に聴講するより遥かに多く、貴重です。それでも、NIPなど技術が主体の学会は、開発部門から技術屋さんがかなり発表していますが、マーケティングや企画部門からは殆ど無いのが実態でしょう。

ITMA2015(繊維機械展示会)で併催のWTiNデジタルテキスタイル・コンファレンスのパネルディスカッション

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日本人にとって一つハードルがあるとすれば・・・「言葉の壁」というヤツでしょうか?海外でのこのような場でのプレゼンは当然ながら英語です。聴くだけでも大変なのに、まして壇上で英語でプレゼンなんて!と腰が引けがちなのはよく分かりますし、そういう事例を数多く見てきてもいます。だから・・・業界で日本企業・日本人の存在感が薄いのです。聴く方は相手があることなので事前に練習はできませんが、プレゼンは事前に練習もできるし、別に原稿を棒読みしても構わないのです。腰が引けるのは、実は「言葉の壁ではなく、ココロの壁」なのでしょう。次回からは展示会でも是非プレゼンをすることを心がけて頂ければと思います。

展示会で併催されるコンファレンスは、既にレギュラースピーカーなら主催者からお声がかかりますが、そうでない場合は「プレゼンをさせて欲しい」と売り込むことが必要です。主催者側も、コンファレンスで誰が何を喋るかも重要な集客要素なので、比較的早くから準備を始め、WEBに早くからスピーカーと講演テーマを掲載します。少なくとも半年前あたりから「まずはプレゼンするんだ!」と腹を括って、主催者にコンタクトするのがいいと思われます。必要ならコンタクトのお手伝いはさせて頂きます。

(次回は、産業用インクジェットの業界コンファレンスを具体的にご紹介します)

(世界の展示会事情です。こちらも併せてお読みください)

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